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備えあれば

「カエデってフリーバッグ……マジックバッグを持ってない?」


 カエデの案内で、馬車の乗合所に向かって歩いていた。

 先ほど買い物しているときの様子から、おそらくそうだろうとは予測していたが案の定彼女は頷いた。


「え、うん。まあ、必要なかったしね」

「そっか、じゃあ……」


 普通に暮らしていれば確かに必要はないかもしれないね。冒険者といっても、なって間もないと言っていたし、まだ活動すらしてない様子だった。

 僕はフリーバッグから、小ぶりのポシェットを取り出した。ベルトに装着することも出来るし、肩紐をつければ肩から下げることもできるものだ。もとはと言えば熟練度上げのついでに、仲間たち用にと作ったフリーバッグの数々である。ニーナやエドガーはともかく、ダリルは持ってなかったし、アリスは容量に余裕がなかったからね。

 素材をいろいろ試したから、あまり容量がなかったり、時間経過が外と変わらなかったりと、それこそ多種多様な物ができた。まあ、いわゆる失敗品とかもね……。


「え……? 私に、って、これ」

「そんなに容量はないけど、小さくて邪魔にならないだろうから。それと……コレ、入れといてね」


 カエデが戸惑っている間に、その手に薬の瓶をいくつか渡した。


「カバンの刻印に魔力流したら入るから、ほらやってみて」

「あ、うん。……こう? あ、ホントだ入った」

「そうそう、これで所有者設定できたから、カエデ以外はそのカバンに出し入れ出来ないからね」

「ん? ええ……じゃ、やっぱりこれ」


 戸惑うカエデに、更に追加で革でできた巾着袋を渡した。手渡したとにジャラッと音がしたことから、それがお金だとわかってカエデは僕の方を見た。


「もしもの為だよ、いつ何があるかわからない。僕とはぐれたり、どちらかが怪我したりね……絶対ないとはいえないでしょう?」


 着の身着のままだったカエデはほとんど何も持っていなかった。これでは何かあった時に対処できない。それに前に怪我をして意識を失った時に、僕のカバンから薬が取り出せなくて大変だったと、アリスに泣かれたことを思い出していた。


「そ、そうね……じゃあ預かっておくわ」


 カエデはそう言って腰のベルトにポシェットを装着した。

 あとは、あれか。初心者とはいえ冒険者なんだから身を守る術はあると思うけど、武器は何を使うんだろう? 手持ちの武器で何かあれば渡しておいてもいいんだけど……。

 僕がそう持ち掛けると、ポシェットの位置を気にしていたカエデは顔を上げた。


「私の武器? ……そうね、まあいいか」


 そう言ったが早いか、彼女が手を一振りするとまるで滑り落ちてきたように、あっという間にクナイのようなものが握られていた。

 

「えっ? 今どこから出し……っわ!?」


 カエデの手品のような武器にも驚いたが、即座にゾラの腕が僕の腹辺りを掬いあげ、素早く真後ろに飛び退っていた。

 落ちそうになったチョビが踏ん張って爪が痛かったし、ちょっと胃がぐえっ! てなったんだけど。


「ゾラ……大丈夫だってば。目立つから降ろして」

「び、……びっくりした。いえ、私が驚かせたのね、ごめんなさい」


 まだ少し警戒している様子だったが、ゾラは僕を降ろした。こっちへ来て以来、少し過敏になりすぎている様子だが、なにしろ見知らぬ土地に来たのだから仕方がないのかもしれない。

 逆に僕の方に緊張感が足りないかもね。ゾラにも一言謝って、カエデに向き直った。


「こっちが聞いたんだし、気にしないで。カエデは暗器使いだったんだね」

「んー、そうね。あとはこれかな」


 そう言ってシュシュッとパンチと手刀を繰り出した。

 ……あ、察した。

 うん、役に立てそうにないや。持ってないもん……ガントレットとかナックルとか。それにしても僕の知ってる女の子って、全員が前衛職なんだけど、……偶然?

 型としては空手に似ている、どちらかといえば動きが静かで忍者っぽい。暗器の形もそうだけど。

 そんなこんなで僕達は、街の外れにある乗合所の近くまで来た。

 すると朝早く偵察に飛ばしていたペシュが、戻って来た。


「お帰りペシュ。変わったことはなかった?」


 手のひらにとまったコウモリは、パタパタと羽を動かし少し落ち着きのない様子だった。少なくとも何かあったことは確かなようだ。こんなことなら回線を開いておけばよかったな。

 僕たちはまっすぐに乗合所へ行くのを止めて、物陰に隠れて少し様子を窺うことにした。

お読みくださりありがとうございました。

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