エルフ族
危険察知のスキルで、大きなレベル差の相手は気配でわかるのだそうだ。
リュシアンは、爆発的なレベル上昇の原因を、詳しく説明はしなかったが、ダンジョンの戦闘で上がったのだということは話した。ジーンによると、従魔が倒した経験値の何パーセントも主人にもはいってくるらしい。それもあって驚くほどのレベルアップをしたのだろう。
それともう一つ。
「おそらく、貴方がまだレベル補正のつく幼年期だからです」
「幼年期?」
「ええ、これはエルフも人間も共通ですが、レベルが低ければ低いほど経験値は少なくて済みます」
ゲームでもそうだったように、こちらでも同じことが言えるようである。リュシアンが納得したように頷くのを確認して、ジーンが続ける。
「それに加えて、いわゆる成長期と言われる期間が有ります。個人差はありますが、一番補正が大きいのが六才くらいまでで、次の二期が少年期で十三才くらいまでです。これを知っている人は、魔力の底上げを幼いうちから始めます」
エルフ族などは、昔からそういう教育がされている。実際、魔法大国であるモンフォールでも幼いうちに魔力検査を行い、早くから訓練を始めている。
「もっとも、今ではエルフ族も人と交わりすぎて、青年期まではほぼ人間と同じくらいの成長速度です。例外は、今でも昔のように森の奥深くに棲でいるダークエルフくらいなものでしょう」
ダークエルフも、もとはといえばエルフから派生した同族である。ただ、はるか昔に別れたまま、それぞれ生活スタイルを変えていくうちに姿形まで異なる種族になったのだ。
「ダークエルフは成長が遅いってこと?」
「そうですね、…というか、寿命が長いんです。もっとも、今ではほとんど見ないので実際のところはわかりませんが、以前はそうでした」
そこでリュシアンが、ふと気が付いた。
「ん?あれ、ちょっと待って、それって僕が…」
「違いますよ、言ったでしょう?ダークエルフは容姿がまったく異なります。耳が長く、髪も銀か黒。瞳は青か灰色。肌も浅黒く、特徴的です」
自分の背が伸びないのは或いは、と勢い込んだのを頭打ちされてストンと椅子に沈んだ。
「でも、もう一つの可能性はありますよ」
「…え?」
「以前から考えてたんですよ。そして、久しぶりに会った貴方を見て確信しました」
ジーンはまっすぐにリュシアンの瞳を覗き込んで、どこか懐かしそうに、その双眸の奥の銀色に思いを馳せていた。
「貴方のその姿はどう見てもまだ幼年期です。エルフにしても成長が遅すぎます」
「あ、うん…」
あまりにズバッと切り込まれて、頷くことしかできなかった。そんな悲しいことを改めて再認識しないで欲しいと思ったが、ジーンは珍しく饒舌になっている。
「数百年前、人間の土地に降りて国を築いたエルフの一族は、湖や森を捨てた種族です。もちろん人間や他の種族と共存することが、必ずしも悪いことだったとは言えないけれど、そのせいで神や精霊の加護が著しく弱まってしまったのです。けれど、どういう加減か、それこそ神の思し召しかという先祖返りのような現象も起こった」
いきなりエルフ族の歴史のような事を語り出したジーンに、リュシアンはぽかんと面食らってしまう。話がずれてしまったのかと思ったが、それは唐突に本題に戻ってきた。
「それが貴方です」
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