推測
ジェリーと同様、スライムにも直接攻撃はあまり効かない。ただし、斬撃系と突き攻撃は少し効くので戦い方次第である。大剣と蹴り攻撃は打撃系なので、残念ながらニーナとアリスは今回もあまり有効打はない。
ニーナは少しなら攻撃魔法も使えるが、魔力の消費を控えたかったので今回はナイフに持ち替えての攻撃だ。アリスは、魔法使いたちの壁役である。
天井から水滴のようにポタポタ落ちてくるスライム。
今や床は水たまりのような状態になっていた。スライムの攻撃は、打撃とマヒや毒といった状態異常。張り付かれると厄介なモンスターである。
カミラの弓、あとは前衛の盾越しに魔法使いが攻撃するという形で薙ぎ払っていった。
炎系なら、ほぼ一発で蒸発する。
弱点を突けは、そこは低レベルモンスターなので簡単に倒せた。
初めて見るモンスターにちょっと戸惑いもしたけれど、こちらも人数が多い分、タレントが豊富で大体の状況には対応が出来そうである。カミラやカイチームも少し自信を取り戻した様子だった。
「あ、ほら、あそこに階段があるよ」
スライムの海を越えた頃、通路の先にぽっかりと穴のような下り口が見えた。部屋の中ではなく、通路の行き止まりという、ちょっとわかり辛い場所に下り階段があった。
「今度こそ3階層ならいいね」
「だな」
それほど期待した様子もなくアリスが言うのに、エドガーもお決まりの返事をして穴の中を覗き込んだ。他の面々も、半ば諦めムードである。階段が見つかった今、次の目標はワープ陣などではなく、休憩ができる空白地帯の探索だと自然に了解していた。
「じゃ、いつも通り…」
「待って、ニーナ」
新たな階に降りるときは、だいたい前衛であるニーナが先陣を切るのだが、それを今回に限りリュシアンが止めた。
「大丈夫とは思うんだけど、ここまで来てどうもスライム系が多い気がするんだよね。もしかしたら、新しいボスは不定形型の可能性があると思う」
今の段階では何とも言えないが、新しいダンジョンボスの存在はもはや否定できないだろう。もっとも、昆虫型も多いのでそっちの可能性も考えられるけど…、その新ボスのレベル次第ではこの先、強力なモンスターが現れないとは言い切れない。
要は、階段を降りた途端、強制エンカウントでスライムより強いモンスターに囲まれる危険性を危惧したのだ。
もちろんニーナは強いけれど、相性が悪ければ無用な手傷を負うかもしれない。まだまだ長丁場になるかもしれないのだ、ここは安全策を取ろうというわけである。
「…オレか?」
「うん、お願い」
ダリルなら盾もできるし、いざとなれば掴まる前に魔法で吹っ飛ばせる。そして何より、従魔を使って索敵もできる。ということで、ダリルから順に下へと降りることになった。
案の定、降りたところに数匹のスライムがいたが、おそらく先ほど天井に張り付いていた集団の内の数匹がここへ落ちてきたものだったようだ。あっという間にダリルによって一掃された。
続いてリュシアンとエドガー、カミラなどが降りてきてあたりの警戒をしつつ、全員が降りるのを待った。
「降りたところがモンスタールームとかじゃなくてよかった」
孤立していた時に、不眠不休でモンスターに囲まれていたのがよほど怖かったのか、カイが心底ほっとしたように周りを見渡した。
「そうだね、少なくともこの部屋にモンスターの気配はなさそうだよ」
ペシュの様子を確認して、リュシアンは安心させるように笑った。
空白地帯ではないので油断はできないけれど、とりあえずは全員が揃うとリュシアンたちは隊列を整えて改めて探索を続けることにした。リュシアンの取り越し苦労だったらしく、行く手を阻むのはジェリーやスライムと、せいぜいが単体のキラーアントだった。
そして数分後、中央にいたカミラがニーナとリュシアンの元へと走って来た。
「どうしたの?」
「ここの地形に覚えがあるの、もしかしてここって…」
リュシアンは、はっとしてカバンから一枚の紙を取り出した。
そう、もう役には立たないからとくしゃくしゃに突っ込んだ、それはこのダンジョンの地図であった。
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