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ネズミパニック

「やだ、またネズミだわ」


 ニーナが辟易したように呟いた。2階層への階段付近まで来たリュシアン達が、先ほどから連続してエンカウントするのは、小鼠プチラットのグループであった。だいたい五匹以上で襲ってくる。


「エドガーがキュア覚えてくれて助かったわね。毒消しがいくらあっても足りないところだったわ」

「そうだね。でも、できるだけ重複で受けないで」


 毒、猛毒までならエドガーの魔法で回復できるが、さらに症状が重なって呪い状態になると「体力回復不可」に変化してしまう。毒で衰弱していく状態に加え、ヒールなどで回復が出来なくなるのだ。毒のみでHPはゼロにはならないが、回復できない状態で攻撃を受ければ致命傷になりうるのである。

 そして呪毒は、毒消しの特級以上か、万能薬でもないと完全回復できない。ちなみに魔法ならキュアの上位、ハイキュアの熟練度を上げることで完治が可能だが、残念ながらエドガーはまだハイキュアを覚えたばかりでまだ呪毒の治療は出来なかった。

 唯一、治せるのはリュシアンが持っている薬だけである。とはいえ、傷薬ならポンポン特級を作るリュシアンも、毒消しの特級はそこまで多くを作ることはできなかった。

 もちろん巻物ならハイキュアを使うことは可能だが、あれは光と水の複合属性の上に、複数枚の魔法陣が必要なので非常に燃費が悪い。

 ということで、毒を受けたら素早く回復!がモットーであった。強制的なネズミとの連戦が続き、今やエドガーはキュアをかけるマシーンと化している。


「ちょっと…、多すぎない?」

「だね、なんだか様子が変」


 大剣の薙ぎ払いと、下段の蹴り攻撃でネズミを蹴散らす前衛が、さすがに疲れてきていることが、後衛にも伝わってくる。リュシアンが、空白地帯への後退も考えたほうがいいかなと思った頃、にわかに地面に微弱な振動が伝わってきた。


「…揺れてない?」

「そうか?俺はなにも…」


 リュシアンの問いかけに、ダリルが振り向いた。ノータイムでキュアとヒールを掛け続けているエドガーは、それどころではなかったらしく黙々と詠唱を繰り返していた。


「ニーナ、アリスその先が階段だよ、でも気を付けて…何か来る」


 リュシアンの忠告に、二人は一瞬だけこちらを見たが、すぐに何かに気が付いたように前方に視線を戻した。


「…っ!?」

「な、なにこれっ!」


 ニーナとアリスはあまりの光景に悲鳴を上げそうになった。

 通路を抜けて、拓けた場所へと入った途端、そこは一面すべてが灰色の海だったのだ。

お読みくださりありがとうございました。

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