従魔の事情2
異界の生物とされている幻獣は、魔力消費が尋常ではなく自給の魔力では追いつかず、そのほとんどを大気から吸収している。この世界での異界は、お伽噺としてくらいの認識しかないが、古来より巨大な竜など幻獣についての記述があるように、現実に存在する世界だと認識されていた。
そんな異界では、大気に魔力が充実していると考えられており、もとより幻獣と言えど、あちらではなんの問題もないのだろうと想像されていた。
ちなみに幻獣とまではいかないまでも、魔獣の中には魔力燃費が悪いのはいて、そういう魔獣はわりと従魔になりやすい傾向がある。要は安定した魔力を手に入れるという、魔獣の方にもメリットがあるからである。
ペシュは種族的な関係で吸血により魔力を補給するが、普通はチョビのように契約によりリンクされ、近くにさえいれば吸収されるようである。
「だから大丈夫だよ、ダリル」
「べ、別にビビッてねぇし、そんなん平気だし!」
「ダリルは血の気多いから、丁度いいんじゃないの?」
「なんだとっ!」
リュシアンの話に、少し前のめりになっていたダリルに、アリスがからかうように茶々を入れた。案の定、瞬間湯沸かし器のダリルは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がったが、そこへ軽微な金属音が聞こえてきた。
激しく打ち合うような音ではなく、小走りしているようなリズムで、携帯している剣と鎧が触れあうような、そんな規則的な音である。
「誰かこちらに走って来てる?」
「そうだね、戦闘音じゃなさそうだけど…」
ニーナの声に、リュシアンが答える。
エドガーとダリルは静かに立ち上がり、それぞれ武器を取った。ここは空白地帯でモンスターは入っては来ない。おまけに今このダンジョンを攻略しているのは、学園の生徒である。
それでも、万が一にも何かがあるかもしれない。不名誉な事例だが、生徒同士で強奪や盗みがまったくなかったわけではない。ただ、わざわざ一階層まで戻って来て、遅れているパーティの獲物を盗みに来る奴もいないとは思うけれど。
金属音はだんだん近づき、そしてそれが複数になっていった。結構な人数である。
「あれ、まだ一階層に人が居たんだね」
はじめに一人の少年が入って来た。ダリルよりも年長くらいで、おそらくリーダー格だと思われた。
テーブルに食事を広げた呑気そうな光景に、少し気が抜けたのかホッとした表情を見せて、すぐに後ろを振り返り「大丈夫だよ、どんどん入って」と指示を出した。
すると、あれよという間に狭い空間はいっぱいになっていった。仕方がないのでリュシアン達は、ランチを打ち切り早急に片づけにかかった。人数からすると、二組のパーティの合同チームのようだった。
「すまないね、焦らせてしまって」
先ほどのリーダー格の少年が、慌ただしく片付け始めたリュシアン達に謝った。
「いいですよ、丁度食事も終わったところです。ところで、どうかされたんですか?」
わざわざ合同チームまで組んで、一日で引き返してきたということはないだろう。そう思って聞いたのだが、なんと本当に今回の攻略を諦めて引き返してきたというのである。
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