ダンジョンモンスター
ダンジョンに生息するモンスターには二種類いる。フィールドにも存在するものと、ダンジョンにしかいない種類だ。そして、ダンジョンモンスター最大の特徴は、基本的に逃げることがないということだ。たとえレベル差があっても、見つかったら襲ってくるのだ。
けれど、どうやらダリルのおかげで余計な雑魚モンスターは寄ってこないようだった。先ほどから行く手を阻むのは、ダンジョン特有のモンスターのみなのだ。
一階層に多いのは、灰色の毛を持つ耳の長い動物型モンスターのキックラビと、怒ると丸まって転がってくる昆虫型モンスター、キラーダンゴだ。
大きさはそれぞれウサギが30~50㎝、虫が1メートルほどあるが、レベル的には弱いのでそれほど苦戦せず、ほとんど前衛の直接攻撃のみで討伐可能だった。
後衛である男三人組はというと、エドガーとダリルは補助系魔法と、回復系魔法を担当し、巻物を使わないと魔法が使えないリュシアンは大人しくマップを確認しつつ道案内をしていた。
「前回は、私達の出番がなかったからね。今回はリュシアンは寝ててもいいわよ」
「そうそう、リュシアンの出番ないかもね」
モンスターを倒しながら、ちょっとハイテンションになっているニーナ達は軽口を言い合いながら、後方のリュシアンを弄り始めた。
「はいはい、頼りにしてますよ。あ、そこは右ね」
前に手も足も出なかったことがちょっと悔しかったらしい。
「なんだよ?前回って」
「ああ、前にちょっと戦闘した時の話だよ。それよりもダリル、せっかくのチャンスなんだから周りをよく見てないとダメだよ」
「チャンス?何のことだ」
「何言ってんの、何のためにダンジョンに誘ったと思ってるのさ?」
好き勝手に暴れている前衛二人に、意外と器用に補助魔法を掛けながら、ダリルはリュシアンの言葉に首を捻った。
「従魔探しだよ。ここのモンスターは基本逃げないから、ダリルがたとえ忌避フェロモン出してても平気だし、もしかしたら従魔契約もうまくいくかもしれないよ」
「お…、おお、なるほど」
考えもしなかったのか、目からウロコという顔をしている。でも、すぐに考え直したように首を振った。
「いや、だけどこの辺の雑魚じゃ、戦力にはならないだろうし」
「何事もお試しだよ。いきなり自分と同レベルモンスターだと、失敗した時に大変だしね」
ううむ、と唸ってダリルは前方に目を向けた。リュシアンに諭され、ちょっとだけやる気になっているようだ。
「なんだ?従魔になるモンスター捕獲するのか…って、ニーナ、アリス、あんまり前に出るなって!」
結界系防御魔法を展開していたエドガーが、後ろのリュシアン達の話を気にしつつも、はしゃぎ過ぎの前衛に注意を促した。どうやら少しハイになっているニーナ達が、前に突出しすぎているようである。
「うん、だけどまずは前衛に追いつこうか。ダリル、アイテムの回収手伝って。エドガーは引き続き防御魔法と、前衛の応援を」
「了解」
「お、おう…、でも俺のカバンじゃ」
大きく膨らんだバッグには、戦利品を入れる余裕がなさそうである。前から思っていたけど、いったい何がそんなに入っているのだろうか。
「前がどんどん行っちゃうよ…、じゃ、とりあえずこれ使って」
前に使っていたカバンを、リュシアンはヒップバッグから取り出した。
「そのカバン、今はマスター指定してないから誰でも使えるよ。ちょっと急ぐから、その重そうな自分のバッグもそこに放り込んで。手の届く範囲でいいから、落ちてる戦利品を拾っていってね」
「おう…、すげぇ便利だなコレ」
ダリルは、いつも肩から掛けていた重いカバンが、跡形もなくするりと収納されたことにびっくりして、思わず感嘆の声を上げた。
実はこれ、例の母のお古のバッグをリメイクしたものである。
一度すべて解体して、裏地の女王蟻の羽根に補修と加工を施し、外皮も新品に貼りなおした。ダンジョンの戦利品のシルバータイガーの革を鞣して使い、渋い灰色の肩掛けカバンになっていた。
内容量も二割増しくらいにはなった。
このパーティでフリーバッグを持っていないのはダリルだけだし、リュシアンには新しいものがあるのでこれはダリルに譲ってもいいと思っていた。
まあ、素直に受け取るかどうかはわからないけどね。
お読みくださりありがとうございました。




