頑固おやじ
「儂がなにも知らんとでも思ってんのか、てめぇも一枚噛んでやがんだろ!」
「はあ!?俺がなんだよ、なんもしてねぇよっ」
会話はともかく、一つわかったことがある。ダリルの口の悪さは、この老人譲りなのだろう。リュシアンを始め、あっけにとられる観客を他所に、二人はますますエキサイティングしてきた。
「なに吹き込まれたか知らねぇが、儂は施しを受けるつもりはねぇ!てめぇも、ふざけた金を送って来やがって、何のつもりだ」
「施しって…、お抱えの職人に出資するのはべつにおかしな話じゃねえだろっ!それに俺のは、留年した分を自分で稼いでるだけで…」
「それが舐めくさってやがるって言うんだ。テメェ一人ぐれえ養えねぇ儂だとでも思ったのか!」
「そうじゃねぇ…だけど借りっぱなしで、俺はっ」
故郷の村で知り合いの商人に預けられたダリルは、その後、学園都市で大きく商いをしていたパトリックに譲られ、当時、彼が迎えたばかりの鍛冶職人の老人へ丁稚奉公に出されたのだ。
偏屈で、いくら言っても手伝いを雇わなかった老人に困り果てていたので、パトリックには渡りに船だった。当時、ダリルは五才になったばかりだったが、田舎では子供でも立派な働き手として、飯炊きから掃除洗濯なんでも出来るので、役に立つだろうと思ったのだ。
パトリックとしては、その交換条件として学費を出すつもりでいたのだが、老人はそれを断ってすべての費用を自ら捻出し、ダリルを学校へやっていたのだ。身内に入れた以上は、家族として当然だという考えだった。
そしてダリルは、パトリックにその辺の事情を聞いたのかもしれない。もしかしたら、学費やもろもろ生活費のせいで、この工房が苦しいと考えたのだろう。
加えて学校でのゴタゴタに、教養科と魔法科召喚魔の度重なる留年。ダリルなりに何とかしなくては、と思ったのかもしれない。家を飛び出し、パトリックの伝手で学園の寮に入り、日夜冒険者として日銭を稼ぐようになったのである。
「息子を育てるのに、貸し借りがあるか!この、ばかもんが!!」
当初から手伝いの為に預けられていたと自覚していたダリルと、最初からすべてを引き受けるつもりで迎え入れた老人の、双方の食い違いが生んだ意地の張り合いみたいなものだった。
この二人、属性かぶってない?似た者同士っていうか……
素直じゃないこの二人では、話がいつもでも終わらない気がする。
「…あの、ちょっといいですか?」
「ん?…なんだ、誰だ?勝手に人の工房に入りおって」
横合いから声をかけると、ドワーフの老人はようやく振り向いた。作業中からずっと声かけていたのだが、やはり認識されてなかったようである。
初めて気が付いたという顔で、リュシアンとその後ろでポカンとしている集団を怪訝そうに見渡した。
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