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 その後、結界を少し過ぎたあたりを歩いたが、結局なんの成果もなかった。

 手始めに、手ごろな小型の魔獣とでも契約させて、ダリルに自信をもってもらおう思ったのに、スライムにすら出会うことはなかった。

 こうなってくると、やはり忌避フェロモン説を捨てきれなかった。


 ほら、大きな犬の匂いに、小さな犬は怯えるって、あれ。

 ああいう感じなんだよね。

 周りに小物の気配はあるのだが、息を潜めているような気がするのだ。

 かと言って、初っ端に自分と力の均衡する相手の契約って危ないし。

 うーん、一つ提案事項はあるんだけど…、これは一存では決めれないんだよね。さて、どうしようかな。 

 リュシアンは、足を止めた。


「今日は、ここまでにしよう」

「なんでだよ、ここからだろうが。てめぇが怖気づいたってんなら…」


 当然ながら、ダリルは不満そうである。


「そうじゃないよ。ほら、もう学校も始まっちゃうし、僕が貰った許可も、入口付近までって約束なんだよ」


 そうなのだ。なにしろ、学園二年目の生徒が貰った許可である。ダリルと会えるかどうかもわからなかったので、それこそちょっと外出、といった程度の申請だったのだ。

 ダリルは、それを聞いて口を噤んだ。

 今でこそ、ちょっとやさぐれてしまったものの、根っこのところは入学当時から変わっていない。変なところで真面目なのだ。現に、授業は残らず全部ちゃんと出てるし、必要な勉強も怠らない。

 不機嫌そうに舌打ちすると、ダリルは無言で来た道を戻り始める。

 ほっと胸を撫で下ろして、リュシアンはダリルに続いて歩き出した。黙々と歩くダリルの後ろ姿を追いながら、先ほど思いついたことを話そうかどうか迷っていた。


「ねえ、ダリル…」


 呼びかけてはいたものの、その声は独り言のようだった。

 実際、小さなその声に気が付いたのかどうか、ダリルは敷き詰められた落葉を蹴散らしながら、後ろを気にする様子もなくひたすら歩いている。


「…ジョ…ン、潜る気はある?」


 枯葉を踏む音に紛れて、リュシアンがぽつりと呟いた。それこそ聞こえたかどうか怪しいほどだったが、ダリルはものすごい勢いで振り向いた。

 先頭がいきなり止まったので、リュシアンは当然のごとく、ダリルの腹の辺りに思いっきり激突してしまった。


「痛っ!ちょっ、急に止まんないでよ」

「今、なんつった!?」

お読みくださりありがとうございました。

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