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日常へ

 数日後、船旅を経てリュシアン達は無事に学校に着いた。

 姿を消してちょうど二時間後、血眼になって付近を捜索していた護衛やゾラによって、四人は発見された。まさに姿を消したその場所で。

 あちらでのことは、あまり覚えてないと説明した。

 説明をしても信じてはもらえないし、下手をすると王様やこの地を領地とする貴族を巻き込む大騒動になるからだ。実際、この場所をいくら調べたところで、十中八九なにも出てこないだろう。いまだ状況を完全に把握していないリュシアンも、それだけは確信していた。


 それに、ゾラの報告。

 リュシアン達が岩陰の歪みに吸い込まれた後、ゾラはあわてて後を追おうとしたのだが、背後から受けた衝撃によって地面に投げ出されたらしい。その時、振り向きざまに不審な人物を見たと言った。はっきりと確認できなかったらしいけれど、髪の長い女性と、見たこともない獣の姿を。

 ふいに、エルマンが漏らした名前と結びつく。

 ――ディリィ…って人かな。


 ともかく、あの大冒険は四人の秘密である。

 実のところ、内緒にしなくてはならない理由はないが、さっきも言ったように信じがたい話だし、無理に信じて欲しいわけでもない。第一、一番混乱して戸惑っているのは本人たちなのだ、これ以上の余計な騒動は勘弁して欲しかった。

 そんな曖昧な返答にゾラは納得してなかったが、何分リュシアン達が疲れ果てていたので、その場ではそれ以上詮索しなかった。


 学園で数日過ごした頃、ようやく日常へ戻ったのだと実感できた。

 もちろん、隠密を通して王都や実家には連絡が行くだろう。だが結局のところ、要約するとたったの二時間、姿が見えなかっただけなのだ。

 事実、消えるところを見ていなかった者は、岩の隙間に落ちて姿が見えなくなったという証言には疑心暗鬼であった。

 そしてリュシアンたちは、消えたその場所に何事もなかったように戻ってきた。

 ひとつ付け加えるなら、新しい従魔を連れていたことぐらいである。本人たちにさえ謎多きこの失踪事件、国王にどう報告したものかと、ゾラが頭を悩ませたことは言うまでもなかった。

 こうして、リュシアンたちの迷子騒動は謎を残したまま落着した。




 リュシアンは、寮の部屋で唸っていた。

 そう、先日押しかけ従魔となった吸血コウモリの命名。

 チョビにしたところで、小さいからチョビにした。そんなネーミングセンスしか持ち合わせていないというのに、またもやこんな難題が飛び込んできたのだ。


「うーん…、うーん」


 机に置いたカゴに収まっている真っ黒なコウモリを前にして、リュシアンはかれこれ三十分は頭を悩ませていた。

お読みくださりありがとうございました。

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