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少女の正体

 鑑定のスキルは、チョビを鑑定した時に使ったことがある。

 このスキル、そしてその巻物は、基本的に公共の施設で使われることが多い。警備隊、主に門番、さらに国境など入国審査を行う部署になると、鑑定のスキル持ちの人材が配属されることもある。あとは教会、学校、商業ギルド、冒険者ギルドなど、主に素性を調べたり、能力値の判断だったりその活用は様々だ。

 当然、性能が高くなればなるほど、入手も困難になり、価格も跳ね上がる。


「鑑定」


 少女を前に、リュシアンが魔法陣を使う。二枚の魔法陣、チョビを鑑定した時よりも、少し上の魔法陣だ。

 

 種別 魔族

 吸血コウモリ Lv1(幼生)

 性別 不明 


「やっぱり魔族か……てか、コウモリ? いや、幼女だよね? 性別不明?!」


 リュシアンにだけ見えるステータスボード。他のみんなには、まるで宙を睨みつけて独り言を言っているように見えるだろう。エドガーなどは興味津々でリュシアンの見ているあたりを、しげしげと覗き込んでいる。そんなことしても、見えないのはわかっているはずだが、ついついやってしまうのだろう。

 リュシアンは、外野には構わずに読み進める。


 幼生の頃はコウモリの姿で過ごし、成長して魔力が充実すると、進化の過程によっては人型などに擬態できるようになるが、人種ではない。


「……どういうこと? この子、人じゃなくてコウモリってことなの? でも、幼生って書いてあるのに、人型だよね……」

  

 気がついているのかいないのか、混乱のあまり思わずブツブツ呟いているリュシアンに、ニーナ達は訝し気に眺めながらも、邪魔をしないように黙って待っていた。

 特徴として吸血により魔力の供給が出来る種族。それほど珍しい種ではなく個体数は多いが、一生涯、同じ主人にしか従属できない。また、主人を持たずコウモリの姿で一生を終える者も少なくなく、魔族とはいえ基本的には短命。

 主人を得ることが、唯一の進化の方法だと書かれているのを見ると、この種は契約により魔族としての能力を得るということなのだろう。

 リュシアンはちらっと少女を見て、なんだか悪い予感……、というか面倒臭い予感がしてきた。


「なになに、どうしたの? この子の正体わかったの」

「うん、コウモリだって」


 アリスのワクワクした問いかけに、よそ事を考えているリュシアンの返事はそっけない。

 どう見ても人にしか見えない少女に対して、コウモリだと断言するリュシアンに、アリスは揶揄われたと思ったのか、ぷうっと頬を膨らませた。ニーナとエドガーも流石に冗談だと思っているようだ。

(本当の事しか言ってなんだけどね……鑑定結果は基本的にスキルの使用者にしか見えないから、仕方がない。でも、うん。もうわかってるよ、この先は読まなくてもたぶん、あれだよ。デジャヴ的な……)

 ――主人マスターを持ち、進化する個体は著しく稀である。また主人の魔力によってのみ進化することができるので、人型になれる個体数は少ない。人型になることにより特殊な能力を発揮する。

 リュシアンの従魔。


「やっぱりか! またなの?! 契約した覚えないんだけど!」


 いきなり叫んだリュシアンに、興味津々でこちらを伺っていた面々はびっくりして、首を引っ込める。

 そこで、リュシアンは思い出した。ここに落ちてくる前――。


「……あ、噛まれたか、確かにきくらげっぽいあの黒いビラビラに噛まれたよ。……あれか、あれだね!」


 補足として、魔力提供者すなわち#主人__マスター__#持ちに限り、幼生でも人型になれる個体もいる。ただし魔力が減ると、コウモリに戻る。との記載があった。

 結果的に、人の姿はしていてもコウモリだということだ。

 それとステータスみたいなものが少しだけわかった。平常時、すなわちコウモリの時は、おそらく普通のコウモリくらいの力しかないが、人型になると数値が跳ね上がる。吸血によりパワーアップする、みたいなスタイルがこの魔物の特徴だということだ。

 喋らないのはコウモリだからなのか、それとも人型になれるくらいだから教えれば喋るようになったりするのか、今の段階ではわからない。少なくとも今は、知性がどの程度かのんびり調べている余裕はない。

 正体がわかっただけで良しとすることにした。少なくとも、刺客や不審者ではないことは確認できたのだから。

 そして、新たに従魔になった。またしても押しかけで。


「なんなの、こっちの契約ってこんな強引な感じなのばっかなの??」

お読みくださりありがとうございました。

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