12.つながる未来
ゼネシスは母親と新しい父親の元で穏やかに暮らしていた。
都で何があるかなど知らずに。
むろん、元の世界に残してきている父親のことは心配だった。
「僕がいることで自由にできないのはわかっていたから」
しかし、置手紙をして出てきたわけではない。そのため、心配をかけることは承知していた。だからこそ、月日が流れ父親が忘れてくれることを願うしかなかった。
父親と過ごした月日は宝石のように輝く、大切な宝物だ。
今は、生き別れた母親との生活。
都であったことが伝わってきた。
商人たちが伝えてくる。
なぜか邪悪な神が蘇ってしまったという話だった。政治で不正を働き、とがめられて追放された一族の者が逆恨みでやったというのだ。
「神様がいるって信じられない」
だから、ゼネシスは願った。
父親が自分を忘れてくれるようにと。そして、幸せになってほしいと。
よみがえった神は魔王となった。
田舎でもその影響が出始めた。
「君はゼネシスだね」
青年が現れた。なぜ名前を知っているのか不思議だった。
「異世界から来た子どもが魔王を討つという言い伝えがあり、王子がそれに賭けるといったのです」
青年は恭しく膝をついた。
「私の名はナーブルム・マックスと申します」
ナーブルムは優し気な笑みを浮かべ、ゼネシスを見た。
困惑する彼を剣士に仕立てるのはこれからだった。
すべては神が作った筋書きのために。




