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システムナビゲーション関連作品

シスナビちゃんと一緒?!

作者: ハヤニイサン
掲載日:2016/02/16



 定時に鳴る音楽を聴きながら、俺は手早く帰り支度を始める。



「おーい、剣兎(けんと)

 今日は、ノー残業デーだぞー」



 ふとその声を耳にして作業を中断し顔を上げる。

 案の定お節介焼きの中井だった。



「んなもんわかってるっつーの。

 俺を誰だと思ってんの?もう帰る準備万端だ。」


「おう!流石だな。

 つーかさ、この後街コン行くんだけどお前もどうだ?

 お前の彼女いない歴イコール年齢ってのを返上するチャンスだぞ!?」


「街コン?合コンと何が違うんだよ?

 俺が相手されるわけねーし、

 街コンって、どーせリア充乙!な集まりだろ?

 行くわけねーよ。」


「まぁ、んなこと言わずにさ。

 てかお前、この後予定なんかあんのか?

 ねぇなら行こーぜ?なぁ?」



 やっぱしつこい。人が行かねーって言ってるのに引き下がらないのはウザい。



「はぁ…俺ね。明日、大事な用事があるの。

 明日は大事な大事な有休を取って大事なライブ行くから、

 そのための準備っつーか、仲間内で決起集会開くから。」


「お、おう。

 そんならしょうがないな。

 だけどな、お前もそろそろ、変な集まりに顔出さずに

 今度はこっちにも顔貸してくれよ。

 じゃ、お疲れ!」

 

「ああ、お疲れ…」


 

 ホントあいつと話すと疲れるわ……

 と、気持ちを切り替えて、ライブライブっと。


 ……

 ……

 …




 俺は、地下アイドル時代からのファンであるFWR38のライブを明日に控え、準備とは名ばかりの決起集会に参加するため、

 大寒を過ぎたばかりのこのクソ寒い中、オアシスといえる地下鉄に乗り、地下アイドル時代からの拠点であるライブハウスへ向かった。

 

 俺の推しメンは、望月 鞘歌(さやか)ちゃん。

 俺と名字が同じという、運命としか表現できない子だ。一目見た瞬間から虜になったのが大学生の頃。


 勿論、高嶺の花であることは承知しているが、諦めきれないので、脳内で彼女そっくりの女の子を創造して、会話して楽しんでいた過去もあるぐらいだ。

 まぁ、現在では、給料のほとんどを鞘歌ちゃんの応援に使い、手紙のやり取り…とまではいかないけど、

 ちょっとしたファンとの触れ合いという名目で貰ったりしている。だからというわけでは無いが、脳内の彼女も過去の存在となって久しい。


 おし!同じグループのファン仲間…といっても、推しメンが違う者同士。地下アイドル時代からの盟友ではあるが、今日こそ鞘歌ちゃんの魅力に気付かせてやるぜ!


 と外の寒さも何のその。意気揚々とライブハウスへと乗り込んだ。


 ……

 ……

 …


 いやぁ、やっぱ鞘歌ちゃんサイコー!FWR38サイコー!!明日のライブ絶対成功間違いなしや!!


 ふぅ。

 明日への活力として、先日出た新作の栄養剤(・・・)を購入し、イソイソと懐にしまう。

 これが無いと、明日を乗り切れんからなー 今回もお世話になります。


 この後は、先程の集会に参加しなった臣吾ちゃんに、盟友全員で揃えた法被を渡しに行くため、奴の職場である中古ショップへと足を向ける。


 つーか、何であいつは集会に参加しないんだよ!?まー この件を貸にして鞘歌ちゃん派閥に改宗させてやろう!


 


「おーい!臣吾ちゃん!

 態々持ってきてやったぞー!

 因みに、これ貸だから。」


「おー、剣兎殿。

 この度は態々足をお運び頂き誠にかたじけない。

 …貸の件だが、このブツではいかがか?」



 といいながら、マイナーっぽいゲームを差し出してきた。



「なんだこれ?

 【ジゴヘクール】?

 俺は、こんなゴミみてぇなゲームじゃ騙されんぞ!

 大人しくテメェは、改信して鞘歌ちゃんを崇め奉ればいいんだよ!」


「まぁ、まぁ、落ち着くでござる。

 このゲームは、所謂純正品ではござらん。

 拙僧の知り合いの知り合い辺りが、どうも作ったらしくてな。

 このゲームのテスターを仲間内限定で募っておる。

 それでだ。儂からお主にお鉢を回そうと、そういう事である。

 まぁ、これでも儂は、お主の堪え性の無い質も弁えてござるから、

 最初からパラメータが最強になるセーブデータも付ける。

 これならヤランとは言わないであろう?」


「うーん、最初から最強か……

 しかも、出回ってないゲームでか……

 おし、やってやろうじゃないか!

 一応これで貸はチャラにするが、

 すぐにでも鞘歌ちゃんの虜にしてやるから、震えて待ってろ!」


「はん!それは土台無理な注文であろうよ。

 儂はリンリン一筋故、この命尽き果てるまでお仕え申し上げる所存。

 この心は、例えリンリンでさえ揺るがすことの出来ぬ事。

 潔く諦めるでござるよ。」


「まー 共にFWR愛を確かめ合った所で

 明日に備えて、俺はもう行くわ。

 じゃ、また明日!」


「嗚呼、また明日、共に熱く滾ろうではないか!」



 と俺は意気軒昂にその場を立ち去った…



「と、剣兎殿!そのゲームの内容は

 まだネットに流出させたらイカンでござるからな!」


 

 後ろから何か聞こえたような気がしたが、まぁ、奴も高ぶっているのだろうな。


 ……

 ……

 …



 もう、やるべきことを終えたので、家に帰って明日に備えようと家路を急ぐが、帰る前に寄り道として、

 何時もの様にコンビニで夕飯を買うべく、家の近くにあるコンビニへと足を伸ばした。




 ……

 …


 コンビニで弁当を買い、店から出る時、美男美女のカップルが入れ違いに入るのを横目で見てしまう。


 おいおい、マジ、リア充爆発しやがれ!何でこんなトコに西洋風のイケメンとアジア系の美人がいんだよ!しかもいちゃついてやがるし。

 くっそ!目が腐る。あー、さっきまで気分よく明日のライブに向けて気持ちを高ぶらせてたのによー

 ほんっとに、この世から、イケメンと女は消えてなくなっちまえばいいんだよ!

 あっ、でも鞘歌ちゃんとかFWRとか、アイドルは別だ。そもそも彼女たちは女性では無いし、俺たちの天使だしな。


 …うわー 嫌なこと思い出しちまった。

 あの、被害妄想全開のキモブス女!今思い出しただけでも、吐き気がする。

 なにが、私のお尻弄ったでしょ!だ。テメェの様なブスなんか此方から願い下げナンだよ!

 大体、テメェと俺は同族(・・)ですから。俺はお前と違って自分の身の程を弁えてんだよ!

 しかも周りの奴らも奴らで、俺が警察にしょっ引かれそうになるまで、黙ってる始末だ。危うく豚箱に入れられて、社会的に抹殺されるところだった!

 ホント、この世の中バカばっかりで狂ってやがるぜ!!


 こんな時は、早く家に帰って、一服(・・)するに限る。


 と俺は家へと急ぎ帰った。


 ……

 ……

 …




 帰宅後、明日のライブの為、風呂で沐浴し身を清めた後、コンビニ弁当を食べながら、そういえば、とふと思う。


 つーか、そもそもコンビニなんか行かずに近くにある定食屋に行ってればこんな気持ちになりはしなかった筈だ。

 でも、あの定食屋は、やってる(じじい)(ばばあ)からして性格が悪い。

 俺が、注文をしてやってるのに、何回も聞き返しやがるし。しかもバイトの店員なんかまともに俺を接客しないと来た。

 それであの店で働いていけるっつーんだから、あの店自体がまともじゃない。

 そういやぁ、あのクソ店員も結構長く働いてたな。あの店に長らく行ってないけど、まだ働いてんのか?

 顔とスタイルだけは上玉だったから、それだけは惜しかったな。



 ムラムラしてきたが、明日の神聖なライブを穢したくないと思い至り、その衝動をゲームで発散すべくPCを起動した。


 ……

 ……

 …




 なっげーな!タイトル画面まで出るのに何分かかってんだ!?

 何だよこれ?この時点でクソゲー確定じゃねーか!

 つーか、コンだけ長いなら、臣吾のヤロウも一言ぐらい言っとけよ!


 あー イライラする。

 まぁ、この怒りも 俺Tueeeeee!!出来れば発散できるだろうと思い、セーブデータをロードする。




 ボーナスポイント 99


 筋力値  99


 魔力値  99


 器用値  99


 耐久値  99


 敏捷値  99


 無限アイテムボックス On


 システムナビゲーション On


 〈セーブ〉〈確定して名前の登録へ〉




 おー、流石に最強なだけはあるな!

 全パラメータが最高値だ。

 これなら、俺の欲望を満たせそうだ。

 そう思いながらもゲームを楽しむためには進行の邪魔になるであろう【システムナビゲーション】をOffにする。


 ……が、出来ない。というか全項目、押しても反応しない。

 おいおい、何も操作出来ねーじゃねーか!バグってんのか?マジでクソゲーだな!クソゲー乙!!


 もしかして、次へも進めないんじゃねーだろーな!?

 と思い〈確定して名前の登録へ〉を選択すれば、名前の入力画面になる。



 ふぅー こうも私をおちょくるとは……ゲーム本編では見ていなさい!!後悔させてあげますから!!


 と、名前を〈モチヅキ ケント〉と入力しながら

 一息つくため一服(・・)する。 


 おおー 今回の新作はかなり落ち着くなー

 おーし、気を取り直して、ゲームで俺Tueeeeeでもしますか。


 そうやって〈ゲーム開始〉を選択したら、いきなり画面と部屋が真っ赤に点滅しだした。



「ど、どうなってるんだ!?

 まさか!これが巷で流行りの異世界転移ってやつか!?

 俺にもとうとうお鉢が回って来たってわけだ!

 おーし、異世界でもなんでも何処へでも連れてけー!」



 と叫ぶや否や、俺の意識は途切れた……


 ……

 ……

 …



 あー、ダリィー

 そういや、辺りが真っ赤に点滅して……


 て、そうだ!異世界転移したんだった!と思い、目を開ければ、そこは洞窟なのか辺りが真っ暗な場所だった。


 ここはどこだ?洞窟みたいだけど明かりが無いから、どっちに進んでいいかわかんねーな。

 まぁ、俺のパラメータは最高値だから、ダイジョーブっしょ。


 と余裕をかましながら、辺りを探っていれば、撫でてやると火が出現する岩を見つけた。

 その出現した火を火種に、辺りにあった燃えそうなものに移し当面の明かりを確保する。


 おおー 明るくなったな。これで出口を見つけられそうだ。


 明かりを点けてもなお洞窟の道は暗かったので、歩いた先々で燃えそうな物に明かりを点けながら進んでいく。

 すると、何と、バカデカイ扉があるではないか。

 その扉をどうにか開けようとするが、どうしても開かない。

 が、ここは俺の冴えた閃きの出番。


 

「開けゴマ!」



 と叫べば、あら不思議。先程までとは打って変わって、簡単に扉が開き、外の世界の光を俺に見せてくれた。


 まぁ、こんなん余裕余裕。つーか、外も結構暗いのな。


 さて、これからどうするか……と思った刹那、そうだよ、こういう時こそ【システムナビゲーション】の出番じゃね?

 と、またもや冴え渡る俺の閃き。そうと決まれば…



「【システムナビゲーション】さん、いらっしゃーい!」


『はいはーい、呼ばれて飛び出てピンピロピーン!!

 システムAIのサヤちゃんでーす!』


「おおー 君は俺が創造したサヤちゃんじゃないか!?

 もしかしなくても、あってるよね?

 俺、今最高に冴えてるから!」


『ピンポンピンポン大セイカーイ!!

 流石あたしのケントですー』


「はい!私が貴方の剣兎です!

 いやー!それにしても久しぶりだね。

 元気だった?」


『ぶー!!

 そんなの呼んでくれないから元気じゃないですよー!!

 あたし以外の女の子に浮気して!

 あたしは今、モーレツに怒ってるんですからね!!』


「い、いやー

 そ、それよりもさ、これからどうすればいいのか教えてくんない?」


『あたしは、ケントのやりたいようにやればいいと思いまーす!

 あっ!?あたしは、あんたの事なんか全然許してないんですからね!』


「おー、やっぱり俺のサヤちゃんだ!

 ホントごめんよ!許してちょ!

 そんでさ、異世界なんだから、モンスターとかいるっしょ?

 軽く俺の最高パラメータで捻って、

 冒険者ギルドでSランク、イっちゃう?

 それと、奴隷ハーレムもいいなぁー

 あ、でも盗賊に襲われてるお姫様も捨てがたいな」


『あー、謝ってる傍からもう他の女の子の事考えてますー

 けど、そんなケントも素敵ですー!

 あっ!?あたしは、そんな事全然思ってないんですからね!』



 といったやり取りを行っている最中でも俺の愛らしいサヤちゃんをマジマジと視かん…もとい、観察する。


 髪は茶色でセミロング、頭にアホ毛と呼ばれる撥ねた毛があって、胸は小さくもないが大きくもなく。性格に関しては、ツンデレっぽい感じだな。勿論体型は炉利。


 やっぱり俺の、俺だけのサヤちゃんだー


 

 さて、それでは、モンスターか、盗賊に襲われているお姫様でも探しに行きましょー


 ……

 ……

 …



 少しその辺を探索していたら、この暗がりを一人で歩いている人が見えたため、俺は近づいた。

 顔が見える位置までくると、何と何とそれは、定食屋のバイト店員の女の子ではないか!


 あれぇ?あの子も異世界に飛ばされちゃったのかな?とすると俺の転移に巻き込まれたんだよな。

 だとしたら、俺に責任があるともいえる。

 よし、この最強チートである俺様が保護してやろう!見知らぬ土地。怯えるあの子の窮地を救った後、御褒美と称したシッポリとした熱い夜が待ってるぜ!



「おーい!大丈夫か―!

 安心しろ!俺が来たからにはもう大丈夫だ!」



 と俺が声を掛ければ、突然声を掛けられて吃驚したのか、俺の方を見て固まってしまった。


 そうだろそうだろう、こんな見知らぬ土地に俺みたいな奴がまさかいるとは思わないよな。



「怯える必要はもうないよ。

 こう見えても俺、最強チートだからね。

 君を護ってあげられる強さは持ってるから。

 よかったら一緒に行かないか?」


「キモッ!

 頭おかしいっていうか、自分の顔見て言ってくれる?

 そもそも、そんなキモい誘い文句とかありえないし。」


「なっ!!」



 やっぱり、このクソアマ性格が悪すぎるな!ちょっと顔とスタイルが良いからって、

 今の状況を把握できもせずに、唯一の救いである俺様に向かって、こんな巫山戯た態度を取ろうとは……

 おし、こいつに立場の違いってやつを解らせてやる……



「そんな口利いていいのか?

 こんな変な場所で怯えてた癖によー

 俺が護ってやるっつてんだ、大人しく俺のモノになれよ!!」


『うわーケントがゲスイ発言してますー』


「いいんだよ!こいつの自業自得なんだから!

 それに、俺のモンになりゃ、安全だけは(・・・)保障してやるんだからよ!」


「ちょっと!

 何わけわかんない事言ってるのよ!?

 警察…そう!警察呼ぶわよ!!」


「お前…やっぱり今の状況を理解できてないな…

 というか、現実逃避してるな?

 やっぱ、お前俺と一緒に来い!

 一緒なら安全だから!な!」


「い、痛い…離して…離してよ!

 だ、誰か!助けてぇ!!

 いやっ!!誰か!!」


「テメェ…!!

 終いには本気で俺も怒るぞ!!

 そんな叫んだら、モンスターに見つかっちまうぞ!!」


「おい!サヤ!

 この状況、どうしたらいい!?」


『ふーんだ。

 私以外の女の子とイチャイチャしようとしたケントなんて知らないですよーだ』


「お前ら……

 そんな態度を取り続けるんなら俺にも考えがある……

 もうブチギレた…

 俺の最強パラメータで…俺様の最強チートで…ここら一帯荒野にしてやんよぉお!!」



 丁度都合よく、モンスター共(・・・・・・)も集まってきたことだし、まとめて消し炭にしてやる!!!!



「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおぁあああああああぁああぁああぁあぁぁぁぁぁぁっぁぉおおおおぉぉぉ


 プツン……


 ……

 ……

 …




***




 夜の空気は徐々に冷たさを増し、気温を雪を降らせるまでに落とせしめていた。


 

(嗚呼ぁぁ…寒いなぁ…そぅ…ぃやぁ…三十ね…一どの…寒波が…くる…とヵ…言って…

 あれぇ?ここ…ぃせかぃ…じゃ―――――――――)




 ピーポーピーポーピー…

 ウーゥーウーゥーウー…ポーピーポー…ゥーウー…―――――




 ……

 ……

 ……

 …




 雪が降って来た。


 朝になったら世界は一変している事だろう。


 人が業を重ねていくように… 雪もまた降り重なる

 雪が降り 重なる程に世界もまた 同様に姿を変えていく…



 剣兎は 世界の変化を知ることさえ能わず 永遠にこの世界から旅立つ。







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