6 牢にはやっぱりロウソクだよね
今日も街をぶらつく。
金貨のおかげで、しばらくはプー太郎をしていても餓死することは無い。
街の地理は大体把握した。
そして違和感のある建物があることにも気が付いた。
建物の内と外の構造に矛盾があるのだ。
人が自由に出入りしているので、何らかの公共施設だと思われる。
俺は建物の内側を覗き込んで間取りを確認した。
すると外側の構造と一致しない。
外壁のサイズとは異なる、妙な膨らみがあるのだ。
しかも、漠然と見ただけでは絶対に気が付かないようになっている。
隠し通路か何かだろうか?
あまりジロジロ見ていると怪しまれそうだ。
俺はその建物を後にする。
今度は城の方へ行ってみよう。
昨日の儲けでこの国の民族服を購入した。
これで目立つことは無いだろう。
城というより宮殿か。
近づくにつれて、綺麗に整備された道に立派な街路樹や色とりどりの地被類が並ぶ。
各所に衛兵が警備しており、さすがにこれ以上は物見遊山で近づくわけにも行かなそうだ。
俺は引き返そうと踵を返す。
俺は驚いた。
振り返った途端にそこに12人の衛兵が出現していた。
いや、俺が気が付かなかっただけで、もっと前からいたのだろう。
あっという間に俺は取り囲まれた。
衛兵が何かを叫ぶ。
もちろん何を言っているかなど分からない。
俺が首をかしげていると、突然足に衝撃走る。
自分の状態を認識した時、俺は地面とキスしていた。
俯せの状態で両腕をがっちり固められていた。
どうやら俺は捕縛されてしまったらしい。
不審人物として捕まってしまったという所か。
まあ、確かに迂闊な行動だった。
言葉が通じないのはネックだが、やましいところがあるわけでは無い。
何とかなるだろう。
俺は両腕を後ろに縛られ、衛兵達に取り囲まれて連行されていく。
不審者一人にずいぶんなVIP待遇だ。
だがおかしい。
何故、向かう先が宮殿なのだろう?
もしかしてそういうアトラクション?
どうやら入場無料の宮殿見学ツアーに参加したようだ。
俺はワクワクしながら宮殿に・・・と、思ったら裏口の方へ連れて行かれる。
まあ、そう言うものだよね。
宮殿のある敷地のはずなのに、煌びやかな建物から離れ、どんどん薄暗いところへ連れて行かれる。
どうやらバックヤードが見学できるらしい。
そして案内されたのは、薄暗い鉄格子の牢だった。
雰囲気満点だ。
途中の通路に照明効果がほとんど無いような蝋燭が使われているところがいい。
ここには住民が何人かいるようで、うめき声のようなものが聞こえてきた。
俺は部屋に案内された。
暗すぎて中がどうなっているのかさっぱり分からない所へ放り込まれる。
手を後ろに縛られているため、バランスがとれず顎と床がコンニチハのご挨拶をする。
ガシャンと音を立てて閉まる鉄格子の扉。
清掃が行き届いていない、そんな微妙な匂いが立ちこめている。
ネットでレビューを書くとすると、高評価を書くのは難しいか。
とにかく俺に無料の宿舎が提供されたようだ。
さて、このスイートルームに俺は何泊させてもらえるんだろう?
まずは飯に期待したいところだ。