5 金貨に使われているのはやっぱり金か
買い食い観光をしていたら、すっかり日が落ちてきた。
街のマップはすっかり頭に入ったので道に迷うことは無い。
次は小道を探索してみようか。
俺が宿に戻ると呼び止められたような気がした。
後ろを振り向くと、混のような物をもった男だった。
混は184センチ、持っている男の身長より10センチ長い。
俺の特技、見ただけで長さを測ることが出来る能力だ。
すると俺の横を大剣を背負った男が横切っていった。
どうやら呼び止めたのは大剣の男に対してだった。
発音的にはカイデス・・・いやカイデウスと言っていた気がする。
大剣の男の名前だろうか?
俺は部屋に戻りベッドに寝転がる。
相変わらずの堅さだ。
そのまま寝ようかとも思ったが、さっき拾った石を袋から取り出してみた。
面白い模様だ。
単純な装飾のための模様には見えない。
なにかロジックが含まれているように感じる。
何度も模様を確認して頭の中に完全に記憶した。
石を袋に戻す。
そして目を閉じて模様をトレースする。
この模様を再現するプログラムを頭の中で構築してみた。
やはりこの模様には意味がある。
定数とアルゴリズムを調整する。
だんだんと近い模様が出来上がってきた。
気がつくと朝だった。
いつの間にか寝てしまったようだ。
昨日買い食いをしすぎて、軍資金が心許ない。
今日は金を稼ぐことにする。
俺は人通りがあって、迷惑にならなそうな所に座り込む。
そこで前回同様、テレキネシスで幾何学模様の芸術を披露する。
だんだんと出来る人だかり。
よし、今回も稼げそうだ。
投げ込まれるコイン。
コインは10通貨と100通貨が多い。
俺が芸を披露していると、声をあげて喜ぶロングヘアの女の子の姿があった。
俺と同い年か、少し下か。
ちなみに俺の年齢は十二歳だ。
その横には少し年上のミディアムヘアの女の子だ。
ロングヘアの方が俺に何か話しかけているようだが、当然意味は分からない。
気分が乗ってきた俺は昨日トレースした石の模様を地面に描く。
それを見たミディアムヘアの方が驚いた顔をした。
ミディアムがロングの手を引っ張った。
ロングの方が名残惜しそうな顔をしてコインを投げた。
そして何かを俺に言い残し去って行った。
二人は無表情で立っていた青年と合流する。
あの男、明らかに腕が立ちそうな気配がする。
まあ雰囲気で言ってみただけで、実際の所は本当に腕が立つか分からない。
そして残されたコイン、それは金貨だった。
十万通貨だ。
貴族か豪商の娘だったのか。
とにかく今日は儲かった。
ちょっとリッチになった俺は、よさげなレストランへ入ることにした。
メニューの名前は分からなかったので、他の客の食べているものを指さして多めの金を渡した。
運ばれてくる料理。
良い素材を使っているようだ、何を食べても旨い。
今日も立派に生きたぞ。
俺は宿に戻る。
未だ召喚主からは梨の礫だ。
まあ、生きるのには困っていない。
「死ぬまで生きる」があの人達との約束だ。
今のままでも約束を違えることは無いだろう。
そして俺は眠りについた。