45 街道を歩いていると足が痒いどう
俺たちは街道を進みながら移動する。
そして途中に街を発見する。
今更ながらに気がつくと、エスフェリアがかなり辛そうにしていた。
時々小休止は入れていたが、ぶっ通し4時間ほど歩いている。
ちなみに山登りが趣味の俺は、体力にはそこそこの自信がある。
まあ調子に乗って雪山で死にかけたことがあるんだけどな。
「エスフェリア、大丈夫か?」
俺はエスフェリアの状態を確認した。
「はい、問題ありません。
以前の周回から記憶は持ち越せても、体力が持ってこられないのは残念です。
その分は、精神力で補います。」
彼女はそう言って笑う。
一方アグレスは、かなりの大荷物を抱えているにも関わらず、足取りはしっかりしており、疲れた表情一つしていない。
「アグレスは?」
一応、聞いてみる。
「私はこのままでも大丈夫です。
しかしそろそろ殿下をお休みさせたいと思います。
街道沿いにもうじき街が見えてくるはずです。
そこで長めの休息を取りましょう。」
「分かった。」
俺はそう答えた。
「あの街は・・・。」
エスフェリアの表情が曇る。
「何かあるのか?」
「魔族の部隊に襲われて壊滅状態になっています。
しかし休むところは残っています。
行きましょう。」
そして俺たちは街に着いた。
「え?」
エスフェリアが不思議そうな顔をした。
「荒らされた様子が無いな。」
俺は辺りを確認する。
さらに魔術回路を構成し索敵を試みるものの、人間も魔族も引っかからなかった。
「おそらくサイアグ様の指示で避難が行われたのだと思います。
そして魔族も誰もいないことに気がつき、この町を攻撃対象から外したのでしょう。」
アグレスがそう推測した。
まあ、誰もいない街を攻撃しても時間の無駄だよな。
物資ぐらい奪っていっても良いような気がするけれど、魔族が今回の戦いの勝利を確信しているのだろう。
後回しにする程度の余裕があるのかもしれない。
「以前のパターンには無かったのか?」
俺はエスフェリアに確認する。
「はい。
私がこの街にたどり着くと、毎回魔族の襲撃の後でした。」
エスフェリアはそう答えた。
犠牲者が出なかったのはいいことだ。
しかしその割には彼女は浮かない顔をしていた。
「良い方に変わっていると考えるべきか。
だが、その顔は何かあるんだろう?」
俺はエスフェリアの態度の理由を問う。
「一つ不安な点が。」
犠牲が出なくて万々歳なこの状況でいったい何が不安なのか、俺にはさっぱり分からなかった。




