4 店頭で転倒する
俺は肉にかぶりつきながら、安そうな宿を探す。
荷物から推測して旅人らしき奴らが出入りしている、大きいながらも良い感じにぼろい建物が目に入った。
ここにしよう。
俺は中に入る。
カウンターに立っている強面の親父が俺を睨む。
おい、接客がなってないぞ。
俺は寝るジェスチャーと1という単語を繰り返した。
2000通貨という単語が返ってくる。
俺は1500通貨と主張する。
最終的に1800通貨で決着を付けた。
宿代は一日1800通貨に決定した。
料金は三日分前払いした。
部屋の番号が書かれた鍵を渡される。
俺は自分の部屋を見つけるため、奥へと進んだ。
途中で大剣を背中に背負った男と擦れ違う。
なかなかの迫力だ。
俺は自分の部屋を見つける。
部屋に入るとペッドに寝転がった。
堅い。
木の上にシーツが引いてあるだけだ。
さすが安宿、いい味を出している。
日も傾き始めている。
俺はとりあえず寝ることに決めた。
そして朝がやってくる。
快眠だ。
今日は街の探索をしよう。
異世界の構造物が俺を呼んでいる。
俺は買い食いをしながら街を進む。
ワクワクが止まらない。
道や橋、そして建築物、全てが珍しい。
俺は露天で旨そうな魚串を買った。
俺がキョロキョロしながら歩いていると、男が必死に走っているのが目に入った。
その経路を継続すると3秒後に俺と衝突する。
俺は回避コースをとる。
男は俺の横を抜け、そのまま走り去った。
あいつはイノシシか?
気がつくと杖を持った女も走ってきていた。
その経路を継続すると1秒後に俺と衝突する。
俺は回避コースをとる。
完全回避に失敗した。
俺は女と接触し転倒。
女は俺に構わず突き進んでいく。
馬鹿野郎、魚串を落とすところだっただろう。
だがしかし、転倒しても魚串の死守には成功したのだよ。
何か言ってやろうかと女の方に目線を向けると、女は杖を男に向けていた。
一瞬何かの模様が浮かび上がった気がする。
そして強い光が俺の目を焼いた。
チカチカする。
さすが異世界、あれは魔法なんだろう。
先の方を走っていた男が倒れている。
女がその男に近づいていく。
男の前で膝をつくとごそごそと懐を探っている。
何かを発見したようだ。
それを自分の懐にしまった。
怖いな、追い剥ぎか?
俺が唖然とみていると、女が俺に近づいてくる。
おい、俺はろくな物は持ってないぞ。
何か話しかけてくるが、残念ながら言葉が分からないのだ。
ニュアンスからは、謝っているような感じだ。
俺は問題ないと手で表現する。
ちなみに俺は地面に転がったままだ。
女が俺に手を差し出した。
俺が大丈夫だとジェスチャーすると、意図をくみ取ったのか一言つぶやいて去って行った。
さっきの男は衛兵らしい奴らに連れて行かれた。
一人になった俺はそのままの体勢で魚串を平らげる。
危なかった。
相変わらず通行人がジロジロ見てくる。
立とうと思い手をつくと、妙な感触に気がついた。
小袋が落ちている。
中を確認すると、素晴らしい幾何学模様が入った石が入っていた。
もしかしたらさっきの女の持ち物なのかもしれない。
俺が辺りを見渡すと、すでに女も衛兵もいなくなっていた。
どうしようか、この石?