34 積み上げていく罪
「昨日の件で騎士団を動かすのに、私がイリンに協力を頼んだのです。
私の直接の命令として。
つまり聖騎士団長ゼギスの了解を取らずに、イリンが動いたことになるのです。」
イリン謹慎の件についてのエスフェリアの説明は、全く納得が行くものではなかった。
「いや待て、お前の命令だろ?
なんでイリンが謹慎なんだよ?」
「本来であれば私に騎士団への指揮権はありません。
もちろん聖騎士長の娘でしかないイリンにも。」
「それにしても、責を負うのはお前だろ?
なんでイリンが、ふざけんなよ。」
つまりイリンに罪をすべて被せたということだ。
「うふふ。」
俺が怒りをぶつけたにもかかわらず、それを意に返さず笑うエスフェリア。
「何を笑ってるんだ?」
「以前の周回だと、イリンに罪を着せたのはギスケなんですよ。」
「なんで俺がそんなことを!
って・・・ああ、そういうことか。」
どうやら俺は頭に血が上りすぎていたようだ。
少し考えれば分かることだった。
ちょっと恥ずかしい。
「そういうことです。
今回は手間を省いておきました。
前回のあなたの落ち込みようと言ったら、見てられないほどです。
本当に優しいんですね。」
エスフェリアが微笑む。
「これでイリンの・・・避難は問題ないわけだな。」
「はい。
それからエルシアも近いうちに帝都を出ることになります。」
「罪状は?」
今度はどんな罪を着せるつもりだろう?
「いえ、オルドウルを呼び戻しに行ってもらうだけですよ。
もちろん魔王の襲来には間に合いません。
以前の周回でギスケがやろうとしていたことは、一通り手を回してあります。」
こいつは本当に9歳か?
元々こういう奴だったのか、死に戻りで成長したのか。
「エスフェリア・・・ありがとう」
俺はエスフェリアに礼を言った。
「ギスケに感謝される数少ない機会ですので張り切ってますよ。
そのかわり、後でご褒美をいただきますからね。」
「なんだか恐怖を感じるのは気のせいか?
まあ、常識の範囲内で頼むぞ。」
「それと叙勲と近衛隊の件ですが。」
「その辺りは好きにしてくれ。
必要事項なんだろ。
エスフェリアのやろうとしている流れは分かってきた。
ところで魔王はいつ来るんだ?」
「三日後です。」
「そうか、三日後か・・・。
っておい、早すぎだろう。」
「スケジュールが詰まっています。
この後、ギスケの叙勲式と私直属の近衛隊への任命。
さあ、準備をお願いします。
魔王は待ってくれませんよ。」
「いやいや、ちょっとは待ってくれよ。」
「タイミングがずれると、面倒なことになります。
さあ、キビキビ行きましょう。」
こうして俺は叙勲式とやらをやらされることになった。
俺はアグレスに案内され、式典用の正装をさせられる。
勘弁して欲しいな。




