33 近親に言い渡す謹慎
「まずゴキディンの件だ。
何故、事前に俺に話さなかった?」
俺は内通者の件を全く聞いていなかった。
この期に及んで蚊帳の外に置かれるとは思わなかったぞ。
「魔術師ゴルディンが魔族の内通者だった件ですね。
その情報、必要でしたか?」
エスフェリアは済ました表情で言った。
「は?」
「あの時点において、ギスケが必要とする情報だったかということです。
魔族の襲撃を撃退することが最優先事項。
私が知る情報はまだ色々ありますが、すべてを知らせていたら時間を取られすぎます。
ちなみに昨日の時点でゴルディンを拘束したパターンは初めてです。」
確かに知っていてもいなくても、状況は変わらなかった。
いや、今までの恨み・・いや正義の鉄槌を下すべく、俺が直接ゴキディン退治に乗り出していたかもしれない。
そうなると時間の浪費にしかならない。
「・・・。
分かった、いいだろう。
次は、俺をサイアグのところへ行かせたのは?」
「以前の周回と違い何故か今回、宮廷魔術師サイアグの行動がこちらの協力的なのです。
何か変化が起きているようなので、それを調べたかったのです。
サイアグはの様子を見て、何か気になったことはありませんか?」
エスフェリアは今までのパターンから、色々と学習している。
その上で、実験や検証を繰り返しているのだろう。
「サイアグは魔王がここに来ることを知っていたぞ。
誰かは分からないが、お前以外の誰かに話を聞いたらしい。」
「な・・・。」
エスフェリアが驚愕の表情を浮かべる。
これはつまり。
「今までのパターンにはなかったのか?」
「はい。
サイアグにその話をした人物の情報は、今までの周回ではありません。」
初パターンらしい。
「で、厄介なことに、知っていて戦うつもりらしいぞ。」
「でしょうね。
宮廷魔術師サイアグと、聖騎士長ゼギスはいつも最後まで・・・。
彼らの行動を阻止するのは不可能です。
それとサイアグにその話をした人物を、早急に突き止める必要がありますね。」
エスフェリアは控えていたアグレスに目配せする。
なんだかんだでこいつら二人、凄まじく有能なんじゃないのか?
「別件ですが、ギスケに伝える話があります。」
「叙勲とか近衛隊の話か?」
「それもありますが、イリンの件です。」
「イリン?」
何故エスフェリアがイリンの話をするのか分からなかった。
「彼女はクミシュ砦で謹慎となりました。」
突然、言い放つエスフェリア。
いったい何の話だ?
意味が分からない。
「謹慎って、なんだよそれは?!」
俺はつい大声を出して聞き返した。




