28 頑固な眼光
本日二話目です。
ここは騎士達が訓練に使う闘技場だ。
観客席も設置されている。
屋根は無く、日か傾き初め夕日が差し込んでいる。
俺の目の前には宮廷魔術師サイアグが立っている。
「おぬしがギスケか。
エルシアからある程度の話は聞いておる。
せっかく時間をとったのだ、楽しみにしておるぞ。」
老獪そうな人物だ。
顔はシワクチャだが眼光は鋭い。
こんな目力の強い人物に会ったのは初めてだ。
その他に、ゴキディンを初めとする魔術師達も見学に訪れている。
ゴキディンは俺に侮蔑の表情を浮かべ、何か言いたそうにしている。
俺に敵意を向けているのは分かるのだが、不思議なことに愉快そうな顔をしているのだ。
この後に俺が必ず失敗するのを確信するかのごとく。
そもそも俺がここにいるのは、エルシアが研究成果を発表すると言って人を集めたからだ。
エルシアは俺の名前を大々的に宣伝した。
ギスケとしてだけどな。
事前に予告していたこともあって、俺がここにいることは魔術師達と、ここ場の管理者たる騎士団の面々には知れ渡っている。
とはいえ魔族にその情報が渡るかどうかは疑問が残るところではある。
訓練場は広く、襲撃があったとしても戦いやすい。
さらにエスフェリアが根回しもあって、魔術師と騎士という戦闘力の高い人材が集まっているのだ。
しかし一つ大きな問題があった。
「なんでエスフェリアがここにいる!」
俺は近づいてきたエスフェリアに小声で話しかけた。
「凄い実験が見られると聞いてやってまいりました。
楽しみにしていますよ。」
エスフェリアは周りに聞こえる声でそう言った後、小声で続ける。
「あなたの行動範囲内に私がいたパターンで、私が怪我をしたことは一度もありません。
逆に離れた場所にいた方が、攪乱のための襲撃対象になったりするので危険が増すのです。
つまりここにいるのが一番安全なのです。」
そういってエスフェリアは、用意された席へと進んでいく。
どれだけ俺は信用されてるんだ?
自分なのに自分では無い人間の信用を引き継いでいるというのは、色々と複雑な気分だ。
今までエスフェリアから聞いたパターンを総合すると、恐らくこの後に俺に対する襲撃が行われる。
この場所ならば、俺に狙いを付けるのは簡単だ。
魔法による強力な範囲魔法による一斉砲撃、そして混乱が起こったところで離脱するという辺りか。
エルシアによると、魔族がここに侵入するためには内通者が必要だという。
そんなガバガバ勝手に入れるような場所では無いのだ。
そして宮殿内に入って感知されないというのは、相当強力な隠蔽技術を使っていることになる。
さて、始めよう。
ショータイムだ。
「お集まりいただいた皆さんに、今日は楽しいショーをご覧に入れましょう。
まずは魔力ゼロの探知魔法をご覧あれ。」
俺はそう言うと魔晶石の粉を振りまいた。
テレキネシスで魔術回路を構築する。
ちなみにこっちの世界では、編むという言い方をするらしい。
「探知魔法?
な、魔晶石が・・・。」
魔術師の一人が驚きの声をあげる。
騎士達はポカーンとしている感じだが、魔術師達はざわつき始めた。
「馬鹿な、魔晶石の粉が勝手に魔術回路を形成するだと。
あり得ない!」
「どうなってるんだ?
全く聞いていないぞ。
エルシアは何の研究をしていたんだ?」
魔術師達の声がどんどん大きくなっていく。
「以上で第一幕は終了です。」
俺はそう言った。
「え?」
一同が呆気にとられた顔をする。
「では幕間の余興をお楽しみください。
敵数10、A3,A8、B1、B12、D8、E4、E13、E14、F4、H4!」
それを聞いたエルシアは、観覧席の影になっている場所に鋭利な円錐状の氷魔法を撃ち込む。
誰もいないはずの場所が血に染まった。
そして人影が逃げるように移動を始める。
さらに一部の騎士達が動き出す。
エスフェリアが根回しをしていた者達だ。
俺が指示した場所に殺到していく。
事情を知らない魔術師と、その他の騎士達が困惑の表情を浮かべている。
宮廷魔術師サイアグは、強面の顔で黙って俺の方を凝視していた。
アンタ、絶対子供に泣かれるだろう?
「さて、第二幕開始だ!」
俺は攻撃魔法の構築を始めた。




