23 双六で四が出たら死に戻り
「『死に戻り』と言えば分かりますよね?」
エスフェリアが言った。
そして驚くべき事に『死に戻り』という言葉だけは日本語だった。
「死んだら特定の時間に戻されるってやつだよな。
そういう作り話をいくつか知っている。
こっちの世界にもあるのか?」
そう俺は言ってみた物の、致命的におかしな部分が一つある。
エスフェリアが、短いとはいえ日本語を話したのだ。
「今回で13回目です。
前回は惜しいところまで行きました。」
「ちょっと待て。
何を言っている?」
「もうすぐ宮殿に魔族の刺客があなたを暗殺しに来ます。
その後、魔王アストレイアが帝国首都である、このトレンテを滅ぼすの。」
とんでもないことを言い始めたぞ。
「おい・・・。」
俺は絶句した。
「ギスケ、この名前はあなたの作った『演算ライブラリ』の名前ですね。
それが何なのか、私には分からないけれど。
そしてあなたは異界からやってきた。
ちなみに名前は一周目では偶然名前が一致しただけでしたが、今回は意図的です。」
「くぅ。」
俺は二の句が継げなかった。
「信じてもらえましたか?
一応、一つ前の周回のあなたから、これを言えば絶対確実だというのも教わっています。
私が死ぬ直前に。
けれどこれを話すと立ち直るのに時間がかかるから、本当のホントに最後の手段にしてくれと、『あなた』に言われています。
私もちょっと躊躇してしまう内容ですが、それを言いましょうか?」
エスフェリアが何故か顔を赤くしながら言う。
「まてい!」
キケン、キケンだ。
俺はいったい何を教えたんだ?
「分かった、信じる。
だからその最後の手段というのはやめてくれ。」
俺は完全なる敗北を悟った。
「良かった。
でも、いつか・・・もう一度聞かせてください。」
顔を赤らめつつ、ほっとした表情をするエスフェリア。
「殿下、あとで私にはこっそり教えてください。」
アグレスがエスフェリアにこっそり耳打ちする。
聞こえてるぞ。
「誰にも話すな、話したら一切の協力は無しだ。」
俺は警告を発する。
内容は不明だが、絶対に流出させてはいけない秘密に違いない。
「分かりました。
そのかわり、私を守ってください。
私を救えるのはあたなだけなのです。」
エスフェリアは金色に輝く髪とトパーズの色の瞳で俺を見つめる。
黙っていれば超美少女だ。
そんな奴にあなただけなどと言われれば、さすがに俺の脈拍がおかしな周期を刻むのも致し方ないだろう。
「仕方ない。
いいだろう、俺が出来る範囲なら協力する。」
ついに俺は約束させられてしまった。
最初から敗北が決まっていた勝負なのだろう。
「よろしくお願いします。」
俺に笑顔を向けるエスフェリア。
脅迫に近い形で、俺はエスフェリアを助けることになった。
その脅迫のネタを俺が提供したのなら、それは俺がそこまでして助けたいと思ったとに他ならない。
約束は守るのが信条だ。
相手が魔王?上等だ。




