22 混同してそうな今度の話
俺は仕方なく金貨殿下に付いていく。
「ところでさ。」
俺は金貨殿下に話しかけた。
「何でしょう?」
「名前を聞いてもいいか?」
「え、名前?
うふ、うふふふ。」
金貨殿下が突然笑い出したぞ。
気でも狂れたか?
「こいつは変なものでも食べたのか?」
俺は侍女と思われる女に聞いた。
「今のは大変面白かったです。
ギスケさんのペットとしての才能を垣間見ました。」
駄目だ、こいつも頭がおかしい。
「うふふ、私の名前はエスフェリア。
今まで生きてきた中で、ギスケ以外に私の名前を聞いた人はいないのです。
毎回、これを聞く度に・・・。
うふふ。
ほんと、おかしい。」
どこに笑うポイントがあるのかさっぱり理解できない。
なんだこの読めない空気は。
それと毎回ってなんだ?
「もうギスケでも何でもいいが、俺をどうしたいんだ?」
「籠の中の鳥を外に連れ出すお仕事です。」
エスフェリアは自分が籠の中の鳥だと言っているのだろうか?
「いや待て、街をうろついてなかったか?」
「こっそり抜け出したのです。
あとでパランザックに散々お小言をもらいました。」
「パランザックというのは、殿下の教育係です。」
侍女が注釈を入れる。
「そういえばアンタの方の名前は?」
「私はエスフェリア皇女殿下のお付きをしておりますアグレス。
よろしくお願いします。」
二人はどんどんと、俺が行ったことの無い区画へ進んでいく。
至る所に剣を携えたボーイが配備されている。
さすが皇女殿下、咎められることも無くスルーだ。
俺が一緒でも特に問題ないらしい。
大丈夫なのか、ここの警備体制?
そしてある部屋へ入るように促される。
「ここが私の部屋です。
さあどうぞ。」
俺はこの世に生を受けて12年。
その間、女の子の部屋に入ったことなど一度も無い。
いや、別に緊張しているわけでは無いぞ。
ただ今までそう言う経験が無かっただけに過ぎない。
俺はゴクリと喉を鳴らし、中へ入った。
「ようこそ。
そしてお久しぶり。
今度こそ、私を守ってください。」
部屋の中に入ると、エスフェリアが俺を見つめてそう言った。
久しぶり?
今度こそ?
俺はエスフェリアの言っていることが全く理解できなかった。