表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた  作者: 空雲
本編 魔神の誕生と滅びの帝都
18/52

18 むしり取りそうな虫

 俺とイリンは今日も資料と格闘する。

 そしてしばらくすると、ついにエルシアがやってきた。


「どう?」


 ざっくりとエルシアが聞いてきた。

 「どう?」ってざっくり過ぎだろ。


「宿代を払う程度には成果は出てるよ。

 はい、これ。」


 俺は魔術回路を属性ごとに数式化した紙を渡した。


「何これ?」


 チラッと見たようだが、全くなんだか分からないという顔だった。


「魔術回路の基本式だ。

 この数式をなぞるように魔術回路を構成すれば、魔法を最適化できる。」


 エルシアは数式を見つめる。


「どう唱えるの?」


 俺はずっこけた。

 まあ、そうだろうなとは思ったけどさ。

 俺は内容の解説を入れようと、エルシアに声をかけようとした。

 その時、大きな音を立てて資料室の扉が開いた。


 俺は扉の方向を向いた。

 そこには懐かしい顔があった。

 ゴキディンだ。


「よおゴキディン、あの時は世話になったな。」


 俺はゴキディンに声をかけた。

 俺はゴキブリにもきちんと挨拶する男だからな。


「何だこのガキは?

 ああ、この前の。

 エルシア、いったいどういうことだ?」


 ゴキディンは俺を無視してエルシアに話しかける。


「ゴルディン、この子は魔法の才能がありそうだから、私の方で身柄を預かったのよ。

 サイアグ様からのお許しもいただいているわ。」


 エルシアがゴキディンに言った。


「ふん、物好きなことを。

 魔法の才能があるって?

 そのガキからは、才能どころか一片の魔力すら感じないぞ。」


 吐き捨てるように言うゴキディン。

 しかし突然表情が平静に戻る。


「まあいい。

 お前は好きなように遊んでいろ。

 私が仕切ればいいだけだからな、がははは。」


 がはははって笑うゴキブリを初めて見たぜ。

 人間にもいないだろ、そんな奴。


 ゴキディンは資料室からいくつかの資料を引き出す。

 そしてイリンと目が合う。


「イリン、聖騎士長のためにも付き合う人間は選んだ方がいいぞ。」


 ゴキディンはそう言うと、イリンの返事を待たずに部屋を出て行った。

 今までは言葉が分からなかった。

 そして理解できるようになってからのゴキディンはアレだった。

 あまりの品格の高さに、俺は度肝を抜かれたのだ。


「凄えな、ゴキディン。」


 俺は感想を呟く。


「あの男は小物よ。

 次期宮廷魔術師を狙ってはいるけど、私に比べれば才能なんて無いに等しいわ。

 得意なのは小細工だけ。

 この前の聖石の盗難だって、奴の差し金よ。

 それを私の責任にして。」


 悔しそうに言うエルシア。


「ますます凄えな、ゴキディン。

 証拠とかは見つからなかったのか?」


「そういうのを隠すのが得意なのよ。

 今までどれだけライバルを蹴落としてきたのか、数えたくないわ。」


 駆除剤を噴射したいな、それ。


「まあ、ゴキディンはどうでもいいや。

 それよりも、魔術回路に関して、いくつか検証したいことがあるんだが。」


 実際ゴキディンなどどうでもいい。

 俺はエルシアに実験の協力を頼んだ。

 なんだか立場が逆転しているような気がするが、細かいことを気にしてもはじまらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ