表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた  作者: 空雲
本編 魔神の誕生と滅びの帝都
17/52

17 サバンナに行ってみたくなるサヴァン症候群

 イリンは身長は128センチ、やせ形だ。

 瞳はサファイア。

 黒髪で長さは肩にギリギリかかる程度。

 そして体を鍛えていると言っているだけあって、小柄なのに合計20キロを超える本をよろけること無く平気で運ぶ。


 この国では10歳は学校に通っている年齢のようだ。

 しかし彼女は父親の近くで暮らしたいと、宮殿の一角に住む場所をもらっている。

 そしてイリンは学校に通っても意味が無いだろう。

 凄まじく頭が良い。


 この世界の学力水準がどの程度のものかは知らないが、魔法だけで無く文学や歴史、政治にも詳しい。

 俺が疑問に思ったことを聞くと、すぐに答えが返ってくる。

 数学に関しては少々弱いが、俺がちょっと教えると、あっという間に吸収した。

 彼女自身が弱いと言うより、図書館の本から察する限り、この国の数学の内容が俺の世界より圧倒的に劣っているようだ。

 科学などに関しても絶望的に遅れている。

 その代わりに魔法が使われているのだろう。


 俺がイリンに魔法と数学の関連性を確認すると、キョトンとした顔をしていた。

 聞いたことも無いという顔だ。

 魔法に関してはエルシアの方が専門家だろうから、後で確認してみよう。

 もし魔術回路を数学的に捉えていないとすると、この世界の魔術師は揃って能無しということになる。


 俺は一通りの実験資料から、いくつかの仮設を立てていた。

 そして紙に数式を書き上げていく。

 俺が式に積分を書いていると、イリンがそれは何か聞いてきた。

 おれはイリンに積分の計算方法を教えた。

 ついでに周期表を書き出して渡す。

 この世界にはそんな物は無いらしい。

 もちろん俺は周期表なんて無くても、それをリアルタイムに計算出来るから必要ない。

 円周率?

 時間さえもらえれば、永遠に言い続けられるぜ。


 ついでに俺は一つ式を書いてイリンに見せる。

 そこに数を入れて、出た座標を線で結ぶように指示する。

 イリンは賢明に計算し、それを結んでいく。

 それが花の形になった。

 イリンが驚いた顔をする。

 そして満面の笑顔になる。

 今まであまり表情を変えない子だったのが、ようやく笑った顔が見られた。


「凄い!」


 魔法でも見たかのような驚きようだ。

 この世界の住人は魔法じゃ驚かないだろうけどな。


「モノの形を数式化する特技だ。

 いくつか書いておくから、後でやって見ろ。」


 俺は式を書いてイリンに渡す。

 嬉しそうにそれを受け取るイリン。

 向こうの世界での話だが、クラスの女にそれをやったらキモチワルイって言われたぜ。

 まったく素直じゃ無いよな。


 通っていた中学の担任が、俺がサヴァン症候群じゃないかと言いだしたことがあった。

 親が心配して検査を受けたが、結果は白。

 数学の出来が良くて、ただ単に性格が悪いだけと結論づけられた。

 余計なお世話だ。

 俺は空気が読めないんじゃ無い、読まないんだ。


 今日の作業はここまでだ。

 俺はあてがわれた部屋で一人食事をとる。

 飯を運んできた使用人に話しかけようとしたが、俺とは話さないように命令されているらしく駄目だった。

 生活に不足がある場合はボーイを通して欲しいらしい。

 現在、俺に付いている剣を装備したボーイは、部屋の外に待機する形になっている。

 トイレにも付いてくる。

 御用聞きとして、立派に働いているようだ。

 しかし俺が王宮を探検しようとすると邪魔するのが難点だ。

 結局この日、エルシアは姿を見せなかった。


 寝る前、俺はあの豆スープの味をふと思い出した。

 スイートルームにいた先輩達はまだあそこにいるのかな?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ