11 栗が無いからクリームシチュー
竹馬の友となり、そして恋人のようにイチャイチャした石ノ床よ、お前はどこへ行ってしまったんだ?
俺は目覚めるとベッドの上だった。
一つ星宿屋よりも上質のベッドだ。
俺は周囲を確認する。
ミルクティーの魔女がいた。
エメラルドの瞳と目が合った。
しまった、気が付かれないように寝たふりをするべきだったか。
ミルクティーはテーブルに腰掛け、何かしらの本を読んでいたようだ。
そして本を閉じ、テーブルに置く。
すると俺に近づいてきた。
俺に何か話しかけているようだが、言葉の内容が閃くわけも無く相変わらず何を言っているかは分からない。
ミルクティーは首の辺りをさするジェスチャーをする。
そういえば・・・俺の熱き血潮が俺連合を離脱しようとしてたな。
国民投票の結果、離脱派が勝利したようだ。
俺は自分の首筋をさする。
特に何も無い。
鏡が無いので良く分からないが、傷のような感触は無い。
あれは夢だったのだろうか?
ミルクティーが横を向いて話し出した。
俺はその先を確認すると兵士がいた。
その兵士に何か言っているようだ。
二人っきりでは無かったようだ。
まだ頭がぼうっとする。
感覚的には貧血・・・なのだろうか?
しばらくすると何かが運び込まれてくる。
何かしらの匂いがある。
俺は何が運ばれてきたのかを明晰な頭脳で推理する。
飯だ。
ミルクティーが俺の前にトレイに載った飯を差し出した。
俺は腹と相談する。
『おい、お前に空きはあるか?』
『収容能力に問題はない、何故なら空っぽだからな。』
どうやら俺は空腹だったようだ。
俺は空っぽだった収納エリアへ飯を流し込む。
けしからん。
何がけしからんかというと、つい最近までいた五つ星とは比べものにならない質なのだ。
まずはこのクリームシチュー。
色々な味が混ざって、素材本来の味を出し切っていない。
そしてこのパン。
単体で食べられる。
二つで一つのハーモニーを醸し出していた五つ星とは比べようが無い。
俺はこのけしからん飯を、早々に胃に収容する。
まったく、けしからん。
そして飲み物が付いていた。
ミルクティーだ。
これじゃ名前が被って人間と飲み物の区別が付かないだろう。
けしからん。
俺が全てを食べ終えると、人間の方のミルクティーが水の入った皿を差し出してきた。
水はコップに入れて出すものだろう?
俺は仕方なく、皿に入った水を飲もうとする。
それを止める人間の方のミルクティー。
なんだ水を飲んではいけないのか?
人間ミルクティーは水の入った皿を指さして、何やら言っているようだ。
自慢じゃ無いが、俺に言葉は通じないぜ。
ミルクティーがあまりに必死で少々可哀想になってきたので、俺は水に紋様を投影する。
これをやれって事だろう。
分かってるよ。
ミルクティーは目を見開いて、ただの水を凝視する。
もう、気絶するのも切られるのもゴメンなんだけどな。




