再会:後編
期待していたもののまさか本当にいるとは思わなかった。
その人物はあのフェンス越しにどこか遠くを見ていた。
「あの……っ」
朔は思わず声を掛ける。
あの艶のある黒い髪が揺れ、あの鋭い眼差しが朔に向けられた。
朔の脳裏にデジャヴ現象という言葉が一瞬過ぎった。
「……何」
抑揚のない声でそれだけ言う。
「昨日ぶりだよね」
「あぁ」
朔の来訪に大して興味を示さなかった少女の目線は再び外の景色に集中した。
朔もおずおずと少女の一メートル程離れた場所まで歩き、フェンスを掴みながら一緒になって街を見下ろした。大分高いみたいで太陽の光を充分に浴びた街並みが窺える。
「こうしてみるとこの街も都会らしいよね」
「そうだね」
朔のぽつりと呟くような声にも少女は相変わらず淡々としていたが、答えてくれた。
朔は少女に近づいたけれどそれを否定しなかったためにその横顔をまじまじと見る。
こうして改めて見ると、息を吸うことを忘れてしまうくらい整っていて綺麗な顔だった。
こんな顔をしている人が何故自殺をしようとしたのか、朔には不思議でならなかった。
ふとネクタイの色を確認する。学年毎に分かれているそれはえんじ色でこの少女は自分と同じ一年生だという事が分かる。因みに二年生は緑色で三年生が紺色だ。
「同じ一年生なんだね。なんて名前?」
「春日」
「へ?」
「春日レイ」
春日レイ――朔は口の中で少女の言葉を繰り返す。
「レイ、って呼ぶね。あ、あたしのことは――」
「望月朔」
「っそう! 呼び捨てで朔でいいからねっ」
朔は自分の名前を覚えてくれていることに嬉しくなって思わず笑顔になる。
屈託のない素直な笑顔を今度はレイがまじまじと見た。
「綺麗」
「え?」
「何でも無い」
それから朔は昨日のことには触れずに当たり障りのない話に花を咲かせた。
レイも短い相槌ではあったが一応ちゃんと聞いてくれているみたいで、それにつれて朔のマシンガントークもヒートアップしていた。
再会*end
台詞が多いですね。修行不足です;近々一から見直しでもするかな。