表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

3兄妹、引き留められる

「…で」


「…なんでこうなる」


両脇から弟妹達の呆然とした声がした。アレンは首をひねる。


「…さあ」


「さあ、じゃないわよ!」


ユリアに背中をばしんと叩かれた。


「この城まで来て欲しいって頼まれたときもそうだったけど、流されすぎよ兄さん!」


「う、ごめん」


「そりゃ悪い人達には見えなかったけど。でも、ちょっとは考えて行動しなさいよ!」


「悪かった。本当にごめん」


言い訳のしようもなく頭を下げている兄と、その前で仁王立ちしている妹を尻目に、クリスは部屋の入り口にいる侍女達に歩み寄った。


「すみませんねえ、やかましくて」


本来ならば魔族の天敵であり、恐怖の対象であるはずの"勇者"が、妹に遣り込められているという光景に驚いていた侍女達は、慌てて首を振る。


「いえ」


「仲がよろしいですね」


「まあ、ずっと一緒ですからね」


クリスはのほほんと笑った。






広間での顔合わせの後、アレン達は一先ずこの城にとどまることになった。というのも、とどまってくれと頼まれたアレンが、とくに考えずにまあいいかと頷いてしまった。


その結果、派手ではないがやたらと豪華な部屋に案内され、冒頭の会話になったのである。


「どっかの宿屋でよかったのになあ」


「この家具、どれも高そうだわ。傷でもつけたら、その弁償だけで賞金の大半が吹っ飛ぶかも」


「迂闊に触れねえ!」


根っからの庶民である3人は、与えられた部屋に戦々恐々としていた。何しろ、魔王の客人を迎えるための部屋である。内装にかけられている金額がいくらなのか、考えるだけでもぞっとする。


「とにかく、なるべく早く部屋を替えて貰おう」


アレンが結論を出した。






「部屋を替えて欲しい?」


次の日、わざわざ訪ねてきた魔王は、3人の訴えに目を丸くした。


余談だが、この魔王は供も付けずにのこのことやって来たので、アレン達のほうが心配になった。これでは、臣下達は苦労するだろうな、と同情する。


「この部屋は気に入らなかったか?」


「豪華すぎて落ち着かないんですよ」


「と、言われてもな…」


「使用人の部屋でいいんですけど」


ふと思い付いたクリスがそう言ったが、


「いや、それは流石に示しがつかない」


「だめですか」


やんわりと拒否されてしまった。


「じゃあ宿屋とか」


「分かった、王都の最高級の宿に」


「いやいや普通の所でいいでしょう!?」


「それは…」


だめらしい。


この辺りで、あまり気が長いほうではないユリアが焦れ始めた。


「じゃあ、もうこの国を出ましょうよ」


「な!」


ユリアは慌てた顔になった魔王をじろりと睨んで、先を続ける。


「元々頼まれてここにいるわけですし。こっちはさっさと旅立ったところで、なんの問題もないんですけど」


「う」


「と言うか、そもそもなんで引き留められてんですか?さっさと理由を言ってくれないと、あたし達も困ります!」


「ユリア、言いすぎ」


そろそろまずいと思ったアレンが口を挟んだその時。


「そちらのお嬢さんのおっしゃることももっともですわ」


柔らかい声と共に、これぞ貴婦人!という雰囲気を纏った女性が現れた。


「リリアナ」


魔王が驚いたように目を見開く。


「まったく、殿方は誰1人きちんとした説明もなさらなかったなんて。ごめんなさいね、勇者様」


「いいですけど、理由は俺も聞きたいですね」


ここ最近で耐性ができたのか、如何にも身分が高そうな女性を見てもアレンは冷静だった。が、


「わたくしはリリアナ・シェルファ・アルヴィーノ。この国の王妃です」


「…え?」


結局、その冷静さはすぐに失うことになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ