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深い心の底で

「何が早すぎるんですか?」


その場で呆然としていたアヤトは、後ろからの声に慌てて振り返った。


「き、君は!?」


そこに立っていたのは、高坂と緑であった。


自然と警戒し、少し構えた緑を手で制すると、高坂は一歩アヤトに近付いた。


「ここ最近、学園で不審者が何度も目撃されていますが…」

「その件は、心配ない。我々学園側で対処する。君達…情報倶楽部の手を煩わすことはないよ」


アヤトはすぐに冷静を取り戻すと、フッと笑い…高坂と緑の横をすり抜け、学園内に戻って行った。


「!」


後を追おうとする緑の肩を、高坂は掴んだ。


「追う必要はない。と言うよりも、追っても無駄だ」


「しかし!部長」


緑は高坂の手を振りほどくと、学園内に走り出した。


「?」


だが、走り出した瞬間、緑は足を止めた。


なぜならば、もうどこにも…アヤトの姿がなかったからであった。


「あの先生」


高坂もまたフッと笑い、


「新任の癖に、非公認倶楽部である我々を知っていた」


少し考え込んだ。


「いや…待てよ。知っていてもおかしくないのか?知らぬところで、有名に」


フフフと含み笑いを漏らす高坂を無視して、緑は1人…部室に戻ることにした。





「あ〜あ」


香坂家の二階にある自分の部屋に戻ると、倒れ込むように司はベットに横になった。


綾女と姫百合はまだ、帰ってはいなかった。


「疲れた」


呟くように言うと、しばらく眠りについた。


「…」


その頃、一階では…久しぶりに実家に戻った香坂真琴の姿があった。


下から階段をちらっと覗くと、そのまま…ゆっくりとした足取りで、玄関に向けて歩き出した。


すると、玄関のドアが開き、姫百合が中に入ってきた。


「ただいま…!お、お姉ちゃん!」


目を丸くする姫百合を見て、真琴は口許を緩めた。


「久しぶりだな。姫百合。元気だったか?」


「あっ、うん。元気だよ。お姉ちゃんこそ、ちゃんと学校来てる?学年が違うから、あまり会うことないし…。それと、ちゃんとご飯食べてる?」


姫百合の心配そう声に、真琴は微笑んでから、表情を引き締めた。


「ところで…。学園に何か変なことが、起こってはいないか?もと元祖学園情報倶楽部の部長としては、気になってな。今の偽物ではなく、元祖学園情報倶楽部の…」


とそこまで言った真琴に、姫百合はため息をつくと、真琴の両肩に手を乗せ、じっと目を見つめながら、こたえた。


「何もないわよ。学園は平和そのもの」


そして、にこっと微笑むと、靴を脱ぎ、家に上がった。


「お姉ちゃん。お茶していく?」


キッチンに向かう姫百合を見ずに、真琴は一度目を瞑ると、ゆっくりと開いた。


「いや…遠慮しておくよ。今日は、荷物を取りに戻っただけだから…」


そう言うと、真琴は玄関のドアに手を伸ばした。


「お姉ちゃん?」


姫百合が振り返った時には、真琴は外に出ていた。


そして、歩き出すと、携帯を開いた。


「マスター…。やはり、何か起こっているようです。明日から、学園にて…捜査致します」


それだけ告げると、真琴は携帯を切り、足早に実家から離れた。






「とうとう…。我々3人が揃いましたね」


口許だけで表情をつくるカミューラと、無表情なアフロディーテ。


そして…怒りを露にしているアカツキ。


3人は、大月学園の裏にある広場で、円陣を組んでいた。


「これで、ジェットストリ○ムアタックができます」


アフロディーテの言葉に、カミューラがキレた。


「やるか!前に、やつに仕掛けた時に、やられただろうが!」


「その時、あたしは〜踏み台にされました」


嬉しそうに言うアフロディーテを、カミューラは無表情な目で睨み付けた。


「お前達は…邪魔するミータントを相手にして抑えればいい。ターゲットは、あたしが始末する」


アカツキは二人に背を向けると、夜の学園を見上げた。


「他に、何か変わったことはなかったか?あたしが、ここに来るまでに…。些細なことでも構わない」


アカツキは少し振り向くと、2人の姉妹に目をやった。


「そういえば…御姉様。」


カミューラは、アフロディーテから視線を外すと、顎に人差し指をつけ、考え出した。


「一度…センサーの誤作動だと思いますけど…エトランゼの反応をおっていましたら〜見知らぬ男子にたどり着いたことがございましたわ。だけど〜その男子のそばにいくと、反応は消えましたの」


「その男子の名は?」


アカツキは軽く、カミューラを睨みながら、きいた。


「わかりませんわ。だけど、そばまで行って何の反応もなかったのですから…」


肩をすくめて見せたカミューラに、アカツキは軽く舌打ちをし、


「そいつでなくても、近くに誰かがいたかもしれない」


両手を握り締めた。


そんなアカツキを見て、アフロディーテは首を傾げた。


「どうされましたか?御姉様」


カミューラは、アカツキの背中を見つめた。


「マスターが言っておられた。歴史にないミュータントが現れた時からだ。もしかしたら、我々がこの時代に干渉したことで、流れが少し変わったとしたら…エトランゼを守るナイトの目覚めも早いかもしれないと」


アカツキの言葉に、カミューラとアフロディーテも目を見合わせた。


「やつが出現したのは、この一年後のことだ。来訪者による殺戮が始まり…マスター達がエトランゼの存在に気付いた時突然、目の前に現れたと…。神の如き力をもって…」


アカツキは唇を噛み締め、


「やつの為に、マスター達は…目覚めたばかりのエトランゼを始末できなかった」


いつのまにか、手にした乙女ケースを握り締めていた。


「やつは常に、黒いサングラスをかけており…名前も捨てたと死ぬまで名乗らなかった為に、正体はわからなかったが…仮説の一つとして、この学園の生徒ではないかとも言われていた。しかし…マスターも誰も記憶にはなかった」


アカツキはそのまま…空を見上げた。


「もし、やつが目覚めたならば!エトランゼ共々、殺害する!今のやつならば、何度もやつと戦ったあたしに勝てるはずがない」


にやりと笑うアカツキに、カミューラは拍手をした。


「そうですわ。やつがいなければ、エトランゼを殺すことも容易いですわ」


「…そう…容易い…?」


アフロディーテは再び、首を傾げた。


「エトランゼの始末。そして、あの男の排除。我々の任務に失敗は許されない」


「はい!」


頷いた2人の姉妹に、アカツキが目を向けると…そのまま、3人はその場から消えた。





「今夜は…月が赤いわ」


3人とは反対側。学園のグラウンドの真ん中で、生徒会長九鬼真弓が月を見上げていた。




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