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蛇です

作者: 矢枝真稀

またまた思いつきで書きました。

蛇。スネーク。あの手足が無くて地面を這い、卵とか丸呑みにするアレ。


「うおっ、すげぇ!」


高校卒業を間近に控え、本日も帰宅すべく学校からの帰り道。俺、神藤優しんどう・ゆうの目の前には道路の真ん中で往生するように横たわった蛇。

まあ蛇なんて、辺りを田んぼに囲まれた所詮は《田舎》という言葉がしっくりと当て嵌まるこの辺りじゃ、当たり前に見かけるのだが、問題は蛇の大きさ(長さ)と色である。

真っ白だ。そりゃもう微塵の汚れも無い程の真っ白である。アルビノ(白子)の蛇っていうのは、どちらかといえば白というよりも黄色に近い。だが、俺の目の前で横たわった蛇は、真っ白なのだ。もう一度言うが《真っ白》である。

加えてそのでかさである。3メートルくらいの道幅だが、確実に俺よりも長い(体長)。2メートルくらいはある。

多分、未だかつて“3軒先の和田さんが再婚した!!”という村一番の大事件以上の珍事である。


「死んでるのか?」


ツンツン。指で突いてみれば、


にゅるり……


なんとも生々しく蛇の体が動く。まだ生きてる。

触ってみて気付いたのは、蛇の体っていうのは、意外とスベスベして気持ちが良いという事だ。


「お〜い、大丈夫か?」


蛇に話しかける時点で、大分俺は変わっているんだろうが、考えてみれば、犬や猫好きの人間が、自分の飼っている愛犬や愛猫に「ん〜どうちたんでちゅか〜?」と、聞く者をゾッとさせる赤ちゃん言葉よりは、幾分かマシだ……と思う。

そんな屁理屈をこねながら、蛇を持ち上げてみる。

うん、重い!


「あ、こら。動くな!だいたい道路の真ん中で寝そべるな!軽トラに轢かれんぞ!!」


と、あれ?何となくだが、蛇が抵抗しなくなったような……。

ともあれ、なんとか持ち上げる事には成功。とりあえず首にかけてみた。

ん?気持ち悪くないか?問題無い!動物は基本的に好きだ。考えてもみてほしい。動物のかわいらしい仕種を見て癒されるが、同じ仕種をいい歳したオッサンがやってみろ、そっちの方がよっぽど気持ち悪い!!

首にかけてしばらく歩いていた俺。依然、蛇は大人しい。

意外と重い蛇だが、スベスベでひんやりとした気持ちよさも手伝って、足どりはあんまり重くない。そこそこの時間が経った頃に、ようやく家が見えてきた。俺ん家は背後に小川が流れる一軒家で、近くには森もある。自然豊かな田舎町ではあるが、都会のゴミゴミとした所よりもずっと良いと思っている。


「さって、ここなら餌もあるだろうし、暮らしやすいだろ。もうあんな道の真ん中で寝るなよ!」


家から少し離れた場所に、小さな林がある。ここは野鳥も多いし、手前にある田んぼにはカエルだって沢山いるから、餌の心配は無いだろう。

林の入口的な場所で蛇を離し、俺は軽くなった体を家へと向けた。










「んじゃ行って来るから!戸締まりをよろしくね」

「へいへい」


あの蛇との出会いから一ヶ月が過ぎた頃である。親父とお袋は、町内の農家さん達と、毎年恒例の慰安旅行へ。言ってなかったが、うちは代々小作農家である。もっとも、この辺りじゃ農家じゃない家の方が少ない。


「さーて、何すっかなぁ……」


生憎の休日だが、隣近所に同級生はいない。まして田舎である。娯楽と呼べる代物なんて無い。唯一のゲーム機も、最近は飽きたし、読者をするような気分でもない。

娯楽のない所が、俺にとってこの町唯一のデメリットだ。


「しゃあねーな。寝るかぁ……」

「ごめんください」


ん、客か?

畳の敷かれた居間で、ごろ寝でもしようとした矢先の事である。客人らしき声に起きはしたが、疑問点が一つ。

誰それと見知ったこの田舎町では、「いるか?」と声をかける事くらいで、下手をすれば勝手に上がり込んで来る人だっている。もっとも、それはこの周辺の人全てが見知った顔なじみであるから出来る事ではあるんだが。

なんにせよ「ごめんください」なんて丁寧な(?)言葉を使うという事は、少なくともこの辺の人間でない事は確かである。


「すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」

「あ、はーい!」


再びかかる声で我に返った俺が目にしたのは、全くといっていいほど、見知らぬ女性の姿。びっくりしたのはその衣服と、肌の色である。

真っ白だ。着物自体が珍しいのだが、完全に真っ白に統一されている。帯も着物も一切の柄もない白。ましてや肌なんて、ホントに人間か?なんて思えるくらいに白い。日焼けしてねぇ。もっと驚いたのは、その髪すらも白いし、1番驚かされたのが、顔を全て隠すような、前髪の長さ。

某ジャパニーズホラーで有名となった貞〇の白バージョンっぽい。


「あ、あの、神藤優様ですよね!」


うん。声は女の子だ。というか、声的には俺とさほど歳も変わんないっぽい。

とはいえ、俺には相手に対して《様》呼ばわりする知り合いなんていない。


「えーっと……どちら様でしょうか?」


そりゃもう警戒心丸出しの応対になってしまった。

だって怖ぇよ!見ず知らずの人に様呼ばわりの上に、〇子ばりの見た目だもん!そりゃ警戒したくもなるさ!!


「あ、も、申し後れました!私、以前に道端で優様に拾って頂いた者です!!」


拾った覚えがねーよ!!つか怖くて拾えねーよ!!


「え、えと、お忘れになられたのですか?」

「忘れたも何も、俺は拾った覚えもないし、第一なんだ、拾ったって……」

「ひ、ひどいですぅ!私を首に巻き付け、一緒に帰ったじゃないですかぁ!!」


なおさら怖ぇよ!!なんだよ首に巻き付けたって!?俺は人間を首に巻き付ける趣味なんてねぇよ!!


「それから、私を林の中まで連れて行ってくれたじゃないですかぁ!」

「ちょい待て!林ってなんだ!?林って……あ、あれ??」


なーんだろ、なんとなーくそんな記憶はある。あるのはあるが、あれは第一、こんな真っ白な女の子じゃなくて、真っ白な……


「まさかとは思うが、一つ聞く。実はあの時の白い蛇なんて言うんじゃ……」

「や、やっぱり覚えていて下さったのですね!!」


やっぱりなオチがキターーーー!!!!


「あの時私はお腹が空いて倒れていたのです。その時に優様に助けて頂き、優様に連れて行ってもらった林の中で、偶然にも鳩の卵を見つけ、こうして生きながらえる事ができたのです!!」

「待て待て!仮に百歩譲ってお前が蛇だとしよう」

「いきなり《お前》呼ばわりとは!もう、優様ってばせっかちなのですね!!」

「…………は?」

「私、優様に助けられた事を一生の恩とすべく、人として末永く優様のお側に付かせて頂きたいと思い、こうしてやって来ました!ふつつかな嫁ですが、よろしくお願いしますねっ!」


ダァーッ!?!?嫁だと?一生だと!?


「待てって!!一生ってなんだ!?嫁ってなんだ!?だいたい自称蛇のあんたと結婚やら出来るわけないだろが!!」

「自称じゃないですぅ!ほら!!」


可愛く言うな!ってかマジで蛇かよ!!

ぐにゃっと歪曲していく女の姿。たちまちにそれは、一ヶ月前に出会った蛇へと姿を変えている。


「わかった!よーくわかった!!だが、これでわかっただろう?お前は蛇だ!人間である俺と結婚なんて出来るわけがないだろ!!」


するとまた、蛇は女の姿へあっという間に変わる。


「大丈夫です!遺伝子的に問題ありません!ってか、異類婚なんて昔からあった事です。気になりませんって!!」

「俺が気にするわ!!!!」

「もう決めた事です!優様を私の旦那様にすると!!この想いが報われないのなら、私は優様を丸呑みにして、優様を内側から愛します!!」


丸呑みってなんだよ!?内側から愛しますってなんだよ!?!?あれか?私の養分になって一生を過ごすって事か!?貞子以上の怖さだよ!!


「待て!早まるな!!」

「優様、私は初めて人間の殿方に惚れたのです!!優様が私を抱えあげてくれた時の、あの力強い腕に!優しさに!!人間の言葉で言うならば、フォーリンラヴ!なのです!!」


順応性が早い!そして妙に発音が上手い!!


「待て待て!いいか?そもそも前髪で顔を隠しておいて、結婚してくれと言う方がおかしい!!その顔を見せてくれれば、結婚を考えてもいい!ただし、俺の好みとは違うようであれば、結婚は諦めろ!!」


これは賭けである。俺は好きなタイプはどんな人?と聞かれれば、迷わず「黒木メ〇サ!」と言ってしまう程の面食いだ。しかもカッコイイ系の。


「くっ……た、確かに優様のおっしゃる通りです!結婚とは一生を共にする事であり、その上で顔を晒さぬとは、優様に失礼……」

「俺は顔も見せないような人とは結婚なんて、それどころか友達にもなれないなぁ……」

「う、ううぅ……」


よしよし、このまま顔を見せないのなら、この話(ってか勝手に結婚の話になってるけど)は無かった事になる。それに顔を晒したとして、俺がOKしなければいいだけの事だ。

ん?最低?こっちは一生もんだ!文句があるならお前がその立場になってみろよ!!


「わ、わかりました!私も覚悟を決めた身、恥ずかしいですが……」


意を決したように、蛇女(呼び方酷い?)は前髪を掻き分けた。


……………






…………





………





うぞ………


「き、綺麗だ……」


まさに理想のドストライク!目鼻立ちは整っているし、目付きは鋭くてカッコイイ。なによりその顔立ちと口調のギャップが……


「え、ホントですか!?優様の理想のドストライクですか!?もしや私にフォーリンラヴ!ですかっ!?」

「……うっ!」


見抜かれてる見抜かれてる見抜かれてる!!そして発音がネイティブ!


「私は蛇なんですよ〜?そ〜んな私にフォーリンラヴ!ですか〜?」

「う、うう……」


くそぅ、完全に俺の思考を読まれている気分だ。しかもこんな理想のドストライク!一生の内に出会えるかどうかもわからない。

しかも相手は人化した、蛇。






どうする?どうすんの俺ぇ!?














「一生をかけて愛しますよ!だって私は蛇なんですから♪」

睡眠不足から、精神的に病んでる今日このごろ。間髪入れずして、再び思いつきで書きました。

ラブコメと呼べるのか?コメディ的な面白さがあるのか?でもまぁ投稿すっかぁ!的なノリで投稿しました。前作もそんなノリでしたが。

初めての擬人化です。しかも蛇。私は蛇は嫌いじゃないです。むしろ好きかも。とはいえ毒蛇は苦手です。だって怖いから。

蛇を嫌いな人って多いですけど、こちらがよほどの事をしない限りは襲ってこないし、意外と大人しいものですよ。

ってか、蛇の名前また付けてないし!

まぁそれは、読者の皆様によって色々と考えて下さいませ(笑)

さあ、次は何を書こうかなぁ?

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