6 連続の使命はお控え下さい
人物紹介回。説明回ですみません。
「おい、嬢ちゃん。またギルド長が呼んでおるぞ」
一休みしていると、事務所のドアの扉に体を寄りかからせて、先日(無理矢理)鑑定科に呼び戻されたロウ爺が手招きしている。
「はい、今行きます」
ベルジュがぴょいと肩に乗ってくるので、そのまま二人と一匹でドアを出る。
とんとんと階段を上って、お馴染みのギルド長室の前に立つ。
ノック三回。
「入っていいわよォ」
相変わらず野太いギルド長の声が部屋の中からする。
ソファに座ると同時に、いつも通り紅茶が出てきて、今日は更にマカロンも同時に出て来た。
「今回は、ダンジョンから帰ってこない人探しの依頼よ」
「手がかりの無い場所の解析はできないですよ?手がかりが有っても、まさかダンジョン奥までの遠隔で指示は出来ないですし」
人探しの場合、知っている街並みとは違って、私が行って無い場所だと伝えるのが難しい。長時間のスキルの連続使用は限度が有るし、私に入ってこないタイプ依頼だ。冒険者は自己責任なので、依頼が入る事自体が少ないし、人探しなんて入ったとしても受注するのは冒険者だ。
「人探しと言っても、国の考古学チームなのよ。流石に冒険者と違って放っておけなくて。古代の遺物目当てで、遺物や古文書が有るかもしれないし、あなたに国からの御使命なの。ここに、行ったチームの残された手袋もあるわよ」
「はあ」
「最近発見したばかりの遺跡型ダンジョンなんだけど、調査チームが戻ってこなくって、国から依頼がきたのよね」
何か、デジャヴを感じるな?
「依頼自体は冒険者に受注させたんだけど、どの道を通ったのか分からないと探すのも難しいでしょ?」
これ、聞いたことの有るやつでは?
「”氷雪の鷹”に同行して欲しいの」
うあー、やっぱり。ダンジョン同行なんて一番やりたくない!!
「ギルド長、私は一般人です。体力も無いですし、冒険者の探索スピードについていけません。スキル使った後は結構インターバル挟まないとですし」
行きたくなさのあまり、反対要素を並べてみるが、「人探しなんてキツイモノよォ」とスルーされた。
「国から特別に回復ポーションが届くらしいわよ。マジックバッグとかも貸し出されるから、想定よりも楽だと思うわ。
手回しが良すぎる。
まったくもぉぉぉぉ。
こうして私は無理矢理探索チームに入れられる事になった。
「明日には、馬車が来て道具が運ばれて来るから見ておいてね」
そう言って、ギルド長は「頑張ってねん」と颯爽と部屋を出て行ってしまった。
テーブルに伏して気が済むまで泣きぬれてから次の日に出勤してみると、本当に城から馬車で荷物が届いていた。
汚れ知らずの素早さを上げる「みかわしのローブ」
時間経過の無い、空間に物が保管できる「時知らずのマジックバッグ」
素早さ向上、疲れ知らずの「空のブーツ」
極めつけにお高い回復ポーションが何本も。
どれも国の管理下に置かれるか、上級冒険者しか持てない物で、どれだけドーピングさせてでも行かせようとする心が丸見えである。身に着けてみると何故か体にぴったりなサイズで逆に怖い。今の私の全身のお値段、いかほどか。
かくして更に3日後の出発で、出張扱いで探索チームに同行する事になってしまった。
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上はやや厚手のTシャツの上に皮の胸当てを当ててみかわしのローブを着る。足元は動きやすいようにショートパンツの下にトレンカを履いて空のブーツを履いた。
最後に時間経過の無い”時知らずのマジックバック”に念のために4週間分の水と食料を詰め、斜め掛けにかけた。嫌がるベルジュを腰ベルトにつけると(『ワシを腰に付けるとは何事か!!』と怒っていた)一応完成である。
待ち合わせ場所に行くと、見間違いようのない”氷雪の鷹”メンバーと、国の考古学再編チーム三人がいた。普通のギルド員の私は、あきらかに場違いである。
「あれ、ミストレス嬢?」
イクリスさんは驚いて唖然とするが、すぐに笑顔を作る。
「冒険者ギルドから派遣の人が来るって聞いてたけど、ミストレスさんだったんだ。俺らも、これでもAランクパーティーだから、そこそこ役に立つと思うよ」
そこで腰のベルジュから『そこの小僧より、ワシの方が役に立つわい』とぶつくさ聞こえるが、聞こえないふりをする。
「パーティーメンバーを紹介しておこうか。改めて。俺は戦士のイクリス・ハービス。イクリスって呼んでくれ」
名乗ってから後ろへ譲って、筋肉質の大男が前へ進んでくる。短い金茶の髪に明るい青の瞳だ。年のころは20代中頃か。
「ガイアス・スタンフォードだ。ガイアスでいい。戦士職だ」
次に厚いカーキ色のローブ姿の色っぽい女性が前に出てくる。年齢がよく分からない。20代前半にも後半にも見える。金の瞳で、黒髪を器用に編んでいる。
サーリャ・ハプスよ。見ての通り、魔法使い。イクリスがこの間ギルドで話してたのって、あなただったのね。女は私一人だから女の子は大歓迎よ」
最後に、やや背の低い男性…というか男の子?が前に出てくる。私と同じくらいの年齢に見えるが、Aランクパーティーにいるのだから、見た目以上の実力が有るんだろう。藍色の少し長めの前髪から、薔薇水晶のような瞳が覗いている。
「こんにちは、初めまして。セイカ・アシュエルです。クレリックです。精一杯務めさせていただきます……」
それを見てサーリャさんがセイカさんの背中をバシバシと叩く。
「固い!固いって!!そんなんじゃ若い女の子も馴染みづらいでしょ!セルフィちゃん、こう見えてもこの子24だから」
「えっ」
外見詐欺である。可愛い男の子かと思ったのに、まさか私より6つも年上とは。思わずぎょっとしてまった。
「サーリャさんは、毎回僕の年齢ネタでいじるのやめて下さいよ!サーリャさんなんか……」
そこでサーリャさんの手が、セイカさんの鼻と口を同時に塞ぐ。あれでは息がが出来ないと思うが、大丈夫だろうか。
「ほほほほ。淑女の年齢を言うのはマナー違反よ」
手から逃れながら「誰が淑女ですか!」と文句を言っているが、基本的には仲のいいパーティーなんだろうな。多分。
「ほら。大げさにじゃれてると、ミストレスさんが驚いてるだろ」
イクリスさんがとりなしているのを見て、ようやく自分が自己紹介をしていないのに気が付いた。
「セルフィ・ミストレスです。セルフィでいいです。今回は行方不明者の痕跡の追跡の為に冒険者ギルドの鑑定科からきました。お願いします」
冒険者チームの後で考古学チーム3人とも自己紹介して、ようやくダンジョン内に踏み込むことになった。
またお昼にきます




