第9話 麗子様は名門校に入学する。
桜が舞い散る季節になりまして、入学式の日が来ましたよ、と。
入学試験は大丈夫だったのかって?
モチのロンよ。余裕で合格したわ。
だけど、私の成績は三位だったのよ。
なぜだぁぁぁぁぁ!
私の何がいけなかったって言うの?
上位の成績は貼り出されたので見に行ったんだけど……筆記1位、マナー1位、面接の成績もトップ。どれもすぐ真下に例の滝川和也と早見瑞樹の名前があったけど。
それだったら何で私が三位?
まったくもって解せないわ!
「どうしてですの!?」
きっと不正に違いないわ!
滝川家か早見家の暗躍ね。
それとも私が女の子だから?
これだから日本は女性蔑視、男女不平等って言われるのよ。
やーねー。性差別反対!
「あー、これは仕方ないねぇ」
「そうねぇ」
お父様とお母様は何か納得しているようだけど、私的には不本意。
「試験に絵画があったことを忘れていたな」
「ええ、麗子ちゃんですものねぇ、こればっかりは」
「どうして二人とも素直に納得しているんですの!?」
この私の前衛的な芸術が理解できないなんて!
子供の個性を殺す画一的な日本教育の弊害ね。
「まあ、クマを描こうとしてブタだからなぁ」
「……来年からお父様にはチョコは作りませんわ」
「待ってくれ、麗子ぉ〜」
泣いて縋ってくるけど……もう、お父様なんて知りません。飯田さんの手作りチョコでも食べてください。
「まあまあ麗子ちゃん、一つくらい欠点があった方が女の子は可愛げがあってモテるのよ」
「本当ですか、お母様!?」
「ええ、男の子なんて単純だから、自分より成績が良い女の子を敬遠しちゃうものよ。ここは、大人な麗子ちゃんが一歩譲ってリードしてあげるの」
「なるほど、つまり相手を持ち上げて、手の平の上で転がすんですのね」
名を捨てて実を取れと。お母様の教えはとてもタメになります。
「ちょ、ちょっと、麗子に何て事を教えているんだ」
私が納得すると、お母様がそうそうと頷き、お父様は青くなっています。なるほど、お父様とお母様の関係性も段々と理解できてきましたよ。
とは言え、人生三十年のアドバンテージがありながら小学生に敗れたかぁ。ちょっと悔しいけど、まあ無事入学できたので良しとしましょう。
なんせ私立大鳳学園は超ハイソ校。ここに入学できたってだけで、ちょーっと自慢できちゃうのよねぇ。
まず何と言ってもこの制服!
すっごいオシャレなブレザーなの。白を基調としたとこがまたお嬢様って感じでポイント高いわよね。ローファーも最高級レザーで履き心地抜群!
この可愛い制服に袖を通したらテンション上がるっしょ。
ふふふ、私が一番似合っているわ。なんせ私、縦ロールのザ・お嬢様ですもの。螺旋力の磨き方が他のお子様とは違うのよ。
おーっほっほっほ、清涼院麗子様のお通りよ、頭が高い、皆のものそこを退きなさぁい。
あー、いけないいけない、ちょっとハイテンション過ぎたわ。ホントに人が避けていくし、またモーゼの十戒になってるじゃない。反省、反省。
きっと、お父様が悪人ヅラなせいね。みんなお父様を怖がって避けているんだわ。けっして私が威圧感を出してるからじゃないわよね。
さあ、気を取り直していざ出陣!
おお、校門からしてゴージャス!
作りは中世ヨーロッパ風なのね。だけど、目立たないように監視カメラとかも設置されてるから、見た目の古さに反して中身は新しいみたい。
古風な趣のあるセンス抜群のデザインながら中身は最新でセキュリティもばっちりっと。これはポイント高いんじゃない?
さてさて、お次はいよいよ校舎。
右にお父様、左にお母様、両手を繋いで校内へゴー!
ホントはお父様よりお兄様が良かったんだけどなぁ。
ふっふ〜ん、どんなところかな?…………
格調高い校門を抜けると夢の国であった。頭の中が白くなった。
ここはどこだ!?
思わずポケ〜っと口をあんぐり開けて固まるところだったよ。
だってだってスッゴイのよ。ヴェルサイユ宮殿みたいな、バロック様式の格調高い建物がデーンって聳え立っているんだもん。
まさにヨーロッパ!
都心部なのに、ここどこだって感じなの。まあ、周囲はみんな黒髪黒目の日本人なんだけどね。違和感ハンパねぇ。
ただ、校舎の中に入れば別世界。
最新設備のオンパレードなのよ。
えっ、ここ学校よね?
各運動部のために施設が揃っていて、野球場、サッカー場、陸上トラック、テニスコートなどなど、プロリーグでもいるのかしら?
さらに、オケができるコンサートホールや温室植物園まであるのよ。まだまだ他にも色んな施設があるみたい。動物園はさすがになかったけど。ちぇっ。
学食も幾つかあって、一つはオシャレなカフェテリアになってるし。もうここでデートができちゃうんじゃない?
これだけ広いと迷子になりそう。しばらくは校内を探検しないと。
さ~て、入学式も終わったし、この後はどうしようかなぁ?
「麗子、今からサロンへ行くかい?」
「はい、お兄様」
ちょうど良いタイミングでお兄様からのお誘いがありました。サロンと言うのは生徒会室のことで、つまりは菊花会の本拠地です。
例の滝川和也と早見瑞樹もいるのよね?
私の成績を抜いたヤツら。
ちょっと気になるのよね。
人生三十年のアドバンテージを超えるなんて、もしかしたら私と同じ転生者かもしれないじゃない。そうよ。私の芸術が六歳児に負けるなんてありえないもの。
お父様とお母様も行ってきなさいって許してくれたし。
生徒会長のお兄様に連れられて、いざ出陣ですわ!
初等部編スタート!
次回、第10話「麗子様はお・も・い・だ・し・た。」は明日の夜に投稿予定です。
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