表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第3章 初等部のみぎり・後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/88

第62話 麗子様は再びバレンタインに挑む。

「できましたわ!」


 くっくっく、我がクマさんチョコはァァァ世界一ィィィィィィ!じゃね?


「これは今までで一番のデキですわ」

「さすが麗子お嬢様です」


 飯田さんのサスオジョ頂きました。


「クマさんの再現度は過去一じゃありませんこと?」

「これほど美味しいチョコクッキーは私も初めて食べました」


 そうでしょそうでしょ。


「ふふ、こんな可愛いクマさんを売り出したら行列ができてしまいますわ」

「はい、この最高級の味を知ったら私なら並んででも間違いなく買います」


 …………


「こんな可愛いクマさんは私以外に真似できませんものね」

「ええ、まったく他では再現できない味です」


 …………


「いやぁ、我ながら恐ろしいほどの可愛いクマさんですわ」

「争いが起きないか心配になるほど美味なチョコクッキーです」


 …………


「自分の芸術センスに戦慄を覚えますわ」

「お嬢様の絶対味覚は料理人にとって脅威です」


 …………


「きっと、お兄様も可愛いクマさんと褒めてくださいますわね」

「間違いなく()()()()と絶賛されるでしょう」


 …………


 どうやら今年のバレンタインも私のクマさんは豚の厩舎を出られないらしい。


 さて、またまたバレンタインの季節がやってきた。モテモテのお兄様は今年もチョコをいっぱい貰ってくることだろう。


 ちっ、盛りのついた女生徒(メスガキ)どもめ、懲りもせず私のお兄様に色目を使いおって。ホワイトデーのお返しに今年もギモーヴを大量に作らねば。これも毎年の恒例行事よ。


 お兄様が大量のホワイトデーのお返しに苦慮されておられたので、私が率先してお返しのギモーヴを作っているのだ。


 意中の相手から妹の最高級手作りスイーツをお返しされればくるものがあるだろう。特に手作りチョコを送ってきた者のダメージは計り知れない。私もお兄様のご相伴に預かっているのでレベルの差は歴然とわかっている。


 身の程知らずのざぁこざぁこ。我が手作りスイーツの洗礼を受けるがよい。うけけけ。


 しかし、それでも懲りずにチョコを贈ってくる女子が後を絶たないのはなぜだ?


 ヤツらは我との女子力の彼我(ひが)の差が理解できんのか?


 むぅ、我のギモーヴの美味しさが理解できぬ味音痴なのか、その程度ではヘコタレないほど面の皮が厚いのか。


 はっ! もしや、スイーツ作りの力量の違いが、女子力の決定的差ではないのか!?


 思い返してみれば手料理がこんなに上手で女子力激高の私になぜか男子が寄ってこない。まさか私は自分で思っているほど女子力が高くない?


 いや、そんなはずは……しかし、思い当たる節も……


 やはり、激高の螺旋力が原因なのか。我が究極で完璧なドリルヘアが我が女子力を上回っているのやもしれん。


「そろそろこの縦巻きロールも卒業しないといけませんわね」

「えっ、清涼院さん髪型を変えるの?」


 もみあげロールの一つを持ち上げアンニュイに浸っていたら、腹黒眼鏡が近寄ってきやがった。


「せっかく綺麗で可愛いのにもったいないなぁ」


 相変わらず未来のドン・ファンは女子生徒を(とろ)かす爽やかスマイルでサラッと褒め言葉を投げかける。だが私は騙されんぞ。麗子、しってる。この黒い笑顔の下で私を陥れる策略を巡らせてるって。


「今すぐという話ではありませんわ」

「そう、良かった。やっぱり清涼院さんには縦ロールが良く似合うと思うんだ」


 何が良かっただ。何が似合うだ。こいつは悪役お嬢様の象徴だ。私のはめフラなんだ。ホントはすぐにでも切り落としたい。


 けれどお母様と美容師さん達がなかなか許してくれんのじゃ。だが、中学、少なくとも高校までには絶対ドリルをやめてやる。


「それで何かご用ですの?」

「ん? 別に」


 用が無いならどっか行け。なんでジーッと私を見つめるん。すっげぇ居心地悪んですけどぉ。誰か助けてぇって思ってたらゆかりんがカートを押してやってきた。


 グッドタイミングよ。

 さすが私のゆかりん。


「麗子ちゃ……様」


 早見の存在に気がつき、ゆかりんが慌てて呼び方を訂正。二人の時は麗子ちゃん呼びだもんね。だけど、まっずいなぁ。早見の腹黒眼鏡がキラッと光りやがった。


「ふ〜ん、二人はずいぶん気安い関係なんだね」


 私とゆかりんの額からダラダラ冷や汗が流れ落ちた。これは私達のスイーツ横流しのズブズブな関係がバレたか?


「清涼院さんは前にいた各務(かがみ)さんとも親しげだったよね?」

「さゆりさんですか?」

「へぇ、名前を呼び合う仲なんだ」

「彼女とは個人的な交友がありましたから」

「サロン以外で接点の無さそうな彼女と?」


 なんかトゲのある言い方だな、おい。珍しく早見の機嫌が悪い。さっきまでのニコニコ腹黒笑いはどうした。


「西田さんとも?」

「そうですわね」


 腹黒眼鏡が白く光りやがった。もともと考えの読めないヤツなのに、目が見えんとますます分からんな。


「清涼院さんとは一年生の時に初めてサロン(ここ)で出会ったんだよね」

「そうですわね」

「もう四年近くになるよね」

「そうですわね」


 なんだなんだ?

 急に思い出話?


「僕らもずいぶん付き合いが長いよね」

「そうですわね」

「これはもう幼馴染みと言ってもいいんじゃないかな?」

「そうですわね?」


 まあ、腐れ縁だけどな。

 断てる縁なら断ちたい。


「もう名前で呼び合っても良いんじゃないかな?」

「…………」

「……ねぇ」

「……はい?」

「どうしてそこは『そうですわね』って即答してくれないの?」


 アホか。


 そんな恐ろしいマネできっこない。こいつと関わってたら私は破滅なんや。


「私まだ死にたくありませんの」

「僕の名前を呼んだら死ぬなんて酷い言われようだね」

「早見様の名前を気安く呼んだら早見様のファンに殺されてしまいますわ」


 なんせ『女の子の方がほっておいてくれない』未来のドン・ファンですものね。


「……ねぇ、昔の僕の発言まだ忘れてないの?」

「さあ、何のことでございましょう?」

「良い加減あのことを忘れて欲しいな」


 お前も人の心かってに読んでんじゃねぇよ。


「そう言えばバザーでの貸しをまだ返してもらってなかったよね」

「人の記憶は強制しても消えるものではありませんわよ」

「やっぱり憶えているんじゃない」


 ちっ、誘導尋問しやがって。


「それじゃあ代わりに……」

「まさか女の子に名前呼びを強要なんてされませんわよねぇ」


 未来のドン・ファンがそんな不粋なマネ。まさかまさか、ねぇ。


「ふふふ」

「おほほ」


 早見が黒い笑いを浮かべ、私が扇子で口元を隠して笑って互いに牽制する。その横でゆかりんがすっかり怯えちゃったじゃない。お前のせいだ。早よどっか行け。


 ――ドンッ!


 と、いきなりサロンの扉が勢いよく開け放たれた。


「どこだ清涼院!」


 またですかぁ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ