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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第3章 初等部のみぎり・後編

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第45話 麗子様は恥ずか死ぬ。

 ちっ、イヤなヤローどもに会ったぜ。


 半袖のノーカラーシャツにチノパンを着こなした爽やか二人組の美少年。歳は私と同じだが、大人びた風貌で同年代だけではなく年上のお姉様方も頬を赤らめキャッキャっと騒いでおられる。


 まあ、こいつらは一見すれば理想の王子様と優しげな天使だからな。


 だが、皆の衆よ、騙されるな!


 確かに滝川は王子様の如き王者の風格のあるイケボーイだが、実は猛犬注意のコミュ症ピットブルだ。触れる者みな噛みつくぞ。


 早見も柔和な微笑を絶やさぬ爽やかエンジェルに見えて、完全に堕天した腹黒の陰険眼鏡だ。気に触ると倍返しだ!されちゃうぞ。


「それで、清涼院はここで何をしているんだ?」

「見て分かりませんの? バザーに出店しているのですわ」


 どこからどう見ても、それ以外の何ものでもないでしょうが。


「お前が、バザーに、店を?」


 ところが滝川のヤツ、コイツなに言ってんだって顔をしやがった。


 そして、私を上から下までじろじろ舐め回すように見やがる。私が美少女だからってイヤらしい目で見ないでよね。


「俺はてっきりコスプレでもしているのかと思ったぞ」


 ムカッ! 失礼なヤツね!


 今の私の服装はイギリス風お嬢様コーデよ。


 いかな超絶美少女の私でも、小学生でお色気作戦にはちょっと無理があるでしょ。いや、一部に需要はあるかもしれん。だが、そんな犯罪者はノーサンキュー!


 そこで可愛いさを全面に押し出す事にしたのだ。しかも、モノホンのお嬢様が古風なお嬢様スタイルよ。真性のお嬢様の爆誕じゃない?


 こんなに可愛いんだもの、老若男女すべての人にウケること間違いなし。


 見よ! 清楚可憐なハイカラさんを演出した我が姿を!


 モスグリーン色のクラシカルなハイウェストジャンパースカートが楚々とした雰囲気を醸し出し、あ〜んど貞淑な感じを出しながらリボンが可愛い白のハイネックブラウス……とキャペリンハットに純白の絹製手袋、更にふりふりフリルの釣り鐘日傘。極めつけは清涼院家標準装備の縦巻きロール。


 むぅ、これはやり過ぎたか?


 そう言われると私の完璧なドリルヘア―にイングリッシュお嬢様風コーデはコスプレっぽいように思えてきた。


「バザーにそんな大仰な格好もないだろう。みんな呆れて見てるじゃないか」


 だからみんな足を止めてジロジロ見てたんか!?

 この服装がコスプレだと思われてたんか!!??


「だいたい、こんな暑い中でよくそんな重装備できるよな」

「……お母様に日焼け対策を万全にするよう厳命されているのですわ」


 しょうがないじゃん。日焼けは許しまへんでぇって、お母様が口うるさいんだもん。


 本音を言えば私だって可愛い真っ白なノースリーブのワンピとか着たいんだい!


 だけど、幼少期にしでかしたお兄様との雪焼け事件。あれ以来、お母様は私の日焼けに過敏になってしまったのだ。


 外出時は日傘と帽子は必須。どんなに暑くとも手袋をしないといけないのだ。しかも、日焼け止めまで塗られる徹底ぶり。


 やっぱ浮いてるか?

 私、浮いてるんか?


 くっ、だんだん恥ずかしくなってきたぞ。


「和也、そんな言い方は良くないよ」

「そんな事を言っても、瑞樹だって清涼院の格好はおかしいって思うだろ?」


 今度は早見が私を上から下までじっくり観察しやがる。


 さすがに私もおかしいかなーとは思い始めてきた。ここで早見から毒のある言葉を食らったら、さすがの私でも恥ずか死ねるぞ。


「清涼院さん……」

「な、なんですの?」


 にっこり笑う早見に、私の背筋が凍る。こいつの笑顔は要注意だ。笑って人を殺せる殺し屋だからな、こいつは。


 くッ、殺せ!


「その服装だけど……」


 いちいちもったいぶるな!

 殺すならひと思いに()れ!


「とってもよく似合っているよ。うん、可愛いし気品にあふれていると僕は思うな」

「なっなっなっ……」


 ぐはっ!


「な、慰めなんていりませんわ!」

「お世辞ではないよ。本当に英国の貴族令嬢みたいで素敵だから」


 うわぁぁぁ! 別の意味で殺られた!


 そうだったわ。こいつは現代に蘇ったドン・ファン。女の子は親の仇でも褒め殺し、相手を恥ずか死させるヤツだった。


 プッハー!


 やだやだ、首から上がすっごく熱くなってきちゃったよ。

 ヤバい、ヤバい、これ絶対私の顔まっ赤になってるから。


 うわぁ、熱い、恥ずい、扇がなくっちゃ。パタパタパタパタ。


「おいおい清涼院、顔が真っ赤だぞ。厚着のせいで熱中症になったんじゃないのか?」


 こんのぉ! デリカシー皆無男がッ!


「和也、それはさすがにちょっとデリカシーに欠けるよ」

「俺は瑞樹みたいに女におべっかを言うつもりがないからな」

「そんなだと将来困ると思うよ?」

「はん、女なんて別にどうでもいいし」


 俺、女に興味ありませんからってか?


 ストイックな男がカッコいいなんて思ってんじゃないでしょうね。そんなだから美咲お姉様にフラれるのよ。ヒロインちゃんとの仲も進展できずに苦しむしな!


 親友の早見もフォローできず苦笑いだ。

 滝川はヒーローのくせに処置なしだな。


「はは、ごめんね清涼院さん」


 口元に片手を上げウィンクして早見が謝る。


 そんな仕草も様になっているし、女の子へのフォローもバッチリだ。処世術に長けてやがる。


 早見瑞樹……小学生のくせに末恐ろしいヤツ。


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