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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第2章 初等部のみぎり・前編

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第30話 麗子様はモノホンの織姫を目撃する。

「なんだと!?」


 何をそんなに驚いているんですか。


 あのやり手の滝川ママとうちの腹黒可愛いお母様が、タッグを組んで悪だくみしているのよ。ごっこ遊びのためだけに、こんな手の込んだマネをするはずないじゃない。


「おそらく、この七夕祭りで私と滝川様の夫婦役を周囲に見せつけて、清涼院家と滝川家が蜜月関係だとアピールするおつもりなのでしょう。そのまま婚約パーティーにするつもりだと言われても私は驚きませんわよ」

「清涼院さん、それはいくらなんでも飛躍しすぎじゃない?」


 甘い! 甘いぞ腹黒眼鏡!


 あの二人は自分達の目的のためなら、我々の予想を左斜め遥か上空へとすっ飛ばすぞ。


「そうだぞ清涼院、あの人でもさすがにそんな無茶なマネは……」

「ホントにしないと思われます?」

「しない……よな?」


 急に不安になって早見に同意を求めんな。早見も曖昧に頷いているが、コイツは無責任な部外者だ。しかも、腹黒な早見は自分に被害が出ないなら適当な対応しかしないぞ。滝川よ、友達はよく選べ。


「滝川様、この間のla grace(ラ・グレイス)で、いったい何を学ばれましたの?」

「何って……」

「もしかして、滝川様はあれが偶然の邂逅だったとでも思っておられたのですか?」

「え?」


 マジかよ。コイツぜんぜん分かってなかったんかい。


「はぁ、滝川様は将来滝川グループを背負って立たれる身。そんなことでどうなさるのです」

「だったら、おまえには何が分かったって言うんだ」

「あれは滝川様のご両親と私のお母様が仕組んだ狂言ですわ」

「えっ、清涼院さんはたまたま店で会ったって言っていなかった?」


 そう言えば早見には偶然の会食だって説明してたっけ。ああもう、めんどくせー。


()()と申し上げましたわ」

「ああ、なるほど。つまり、和也も清涼院さんもご両親に(たばか)られたってわけなんだね」

「はい、あれは偶然を装った、私と滝川様のお見合いだったのですわ」


 さすが腹黒、理解が早くて助かる。滝川は何を今さら青くなってんねん。


「危うく私と滝川様は婚約を決められそうになりましたが、お兄様と私とで上手くかわしたのです。ですが、それを学習してお母様と滝川様のお母上がお兄様のいないところに私を引っ張り出したのですわ」


 お母様達はお兄様がいたら阻止されると学んで、美容院に私を連れ出し強引に話を持ってきた。今にして思えば、七夕祭りで織姫役を押し付けるだけにしては手が込んでいるように感じる。


「それじゃあ、今回の七夕祭りは俺の婚約者を決めるための配役だと言うのか?」


 滝川も事の重大さをやっと理解したらしい。気づくのおせぇぞ。


「だから、織姫役を早見様に代わっていただき、お母様達の陰謀を回避するのですわ」


 完璧な理論武装。けっして私がジル×セルを見たいからではない。もちろん、過程としてそんなシーンも見られて萌えたぎるだろう。きっと、会場にはたくさんの腐女子が生まれるに違いない。だが、それはあくまで結果論である。決して狙ってなどいない。


「だが、それでも早見に織姫を任せるのは……」

「いったい何が問題だとおっしゃいますの?」


 このまま私と婚約するより良いだろうが。


「おまえは俺と瑞樹に婚約しろと言うのか!?」

「なんでそうなりますの!?」

「だって、織姫役を俺の婚約者にする計画だと言ったじゃないか」

「いえ、それは私が織姫を演じた場合の話でして、別に早見様が織姫になっても滝川様と婚約するわけでは……」


 いや、それはそれでありありね!


 ジルベール滝川とセルジュ早見がみなから祝福されて結ばれる、そんなイフエンドがあってもいいじゃない。会場が興奮の坩堝(るつぼ)になること疑いなしよ。


「……やっぱりそのまま婚約されませんか?」

「「絶対イヤだ!」」


 まったく、二人してそんなに強く拒否なさらなくとも。需要は必ずありますのに。


「お二人の挙式は盛大にお祝い致しますわよ」

「やっぱり清涼院は俺をからかって遊んでいるだけだろ!」

「酷いよ清涼院さん、男心をもてあそんで」

「そんな、まさかまさか。お母様達が私と滝川様の婚約を目論んでいるのは事実ですわ」


 まあ、この場で婚約を強行するというのは私の想像でしかないけど。


「私はホントに危惧しておりますのに」

「はんっ、どうだか――ん?」


 あら? なにやら騒がしくなりましたが……。


「なんだろう?」

「あれは……」


 騒ぎの大元へ視線を向ければ、そこには見目麗しき織姫が入場してきたところだった。


 黒く美しい髪は腰まで伸び、長いまつ毛は長く、瞳は憂いを秘め、ピンクの着物に羽衣を纏う姿はまさしく天女。私のようなバッタモンとはえらい違いだ。


 隣に立つのはやはり彦星スタイルの美形。中学生くらいで滝川よりもずっと大人びて、凛々しくよく似合っている。


 絵に描いたような美男子美少女カップル。


 だけど、その二人は――


「お兄様!?」

「美咲!?」


 その織姫と彦星は美咲お姉様と私のお兄様だった。


 お母様達、本気で私と滝川、お兄様と美咲お姉様の婚約を決めにきやがったよ!


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