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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第1章 幼少のみぎり
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第2話 麗子様は家族に悩まされる。


 ――そんな風に思っていた時期が私にもありました、よと。


 何が人生超イージーモードよ!

 何が好き勝手に生きてやるよ!


 お嬢様ってこんなハードだったの!?


 五歳児から一年のお嬢様生活で私は完全に理解したわ。超お金持ちの、しかも、やんごとなき家柄のお嬢様って実はそうとうメンドー臭い。


 昨日は華道、今日は茶道、明日は社交ダンスで明後日はピアノ……休みのない日替わりの習い事。下手をしたら一日に二つ以上の掛け持ちまであるし、五歳児のスケジュールじゃないわよ。


 この一年の殺人スケジュールをよく乗り越えたものだと、自分で自分を褒めてあげたい。


 しかも、家にいる時でさえもマナーマナー。まったく気の休まる時間がないわ。


 これって前世の庶民だった方が好き勝手に生きてたんじゃない?


 さらなる追い討ちがあって、来年には私立大鳳学園(おおとりがくえん)の受験が控えているからって、今年からお受験の勉強までプラスされたのよ。


 誰よ! ラクショーなんて言ってたヤツは!……はい、私です、ごめんなさい。くすん……


 だけど大鳳学園かぁ。なぁんか、その名前に聞き覚えがあるんですけどぉ……どこだったかなぁ?


 どうにも思い出せないわ。まあ、思い出せないなら大したことでもないのかな?


 それから贅沢三昧な生活もムリ!

 生来の庶民の感覚が抜けないの。


 高級なおフランス料理も良いけど、肩ひじ張らずにたくあんポリポリやりながら、ご飯とみそ汁が食べたい。


 あー、ポテチが食べたい、ピザが食べたい、他にも色々ジャンクフードが食べたい!


 デリバリーなんて頼んだら一発でバレるわよね?

 コンビニやスーパーなんて行けるわけもないし。


 服やアクセなんかは超高級品ばっかだけど、これってお母様が用意するから別に贅沢三昧じゃないわよね?


 うーん、贅沢するってのもけっこう難しいのね。


 それに問題が他にも……


「麗子、清涼院家は下々の者達を従えていかねばならん」

「麗子ちゃん、清涼院家に恥じない淑女になるのよ」

「麗子、平民どもをつけ上がらせないよう立派な立ち振る舞いを心がけなさい」

「麗子ちゃん、庶民はすぐに怠けるような人達ばかりなのよ」


 etc……


 お父様もお母様も選民思想バリバリじゃない!

 今どき下々とか平民とか言わないわよフツー。


 由緒正しき清涼院本家のお父様はもちろん、お母様もかなり選民意識つよつよ。


 なんせお母様は数々の平安時代から続く摂家の一つ高司(たかつかさ)家本家の娘。高司家は藤原家の流れを汲む摂家のお家柄。歴史上の人物や何人も大臣を輩出してきた名家中の名家。


 ああー、これって私がお付き合いする人達も血筋、家柄が重要視されてしまうんじゃない?


 好き勝手に生きてやるって息巻いてるけど、恋愛や友達は自分の勝手ってわけにはいかなそうね。


 私だっていっぱい友達を作って、楽しい恋バナして、素敵な彼氏が欲しい!


 だけど、このままじゃ友達はみんなやんごとない「おほほ」なんて笑いながら腹の探り合いする連中になっちゃいそう。


 それに、恋愛なんてすっ飛ばして良いとこの坊ちゃんと政略結婚させられてしまうんじゃない?


 あーあ、お金持ちのお嬢様って意外とロクでもないものなのね。


「くすくす、おかしな顔をしてるね」


 そんなふうに悩んでいたら、柔らかい笑顔の美少年から笑われてしまった。


 ――清涼院雅人。


 この方は私の五つ上の実のお兄様。かっこよくて、優しくて、とっても素敵なお兄様なの。


「どうしたんだい麗子、そんな百面相して」

「私の人生って意外とママならないのだと思いましたの」


 あら、お兄様がキョトンとされてますわ。

 イケメンはどんな顔をしても似合うわね。


 だけど、私ってそんなおかしな事を言ったかしら?


「ままならないって、難しいことを言うんだね。それに人生を儚むにはまだ早いと思うけど?」

「ですがお兄様、私はもっと自由が欲しいのですわ」

「いや、本当に麗子は六歳なの!?」


 いやいや、今どきの幼児はなかなかオマセさんなんですのよ、お兄様。まあ、私は中身三十オーバーですけどね。


「それで、麗子はいったい何の自由が欲しいんだい?」

「私は自由に友達や恋人を選べないのでしょうか?」


 何ですかお兄様?

 そのえって顔は?


「友達はともかく、六歳児に恋愛はまだ早いんじゃない?」

「私も女の子ですから素敵な出会いをして素敵な旦那様と添い遂げたいのですわ」


 なんでしょう……お兄様がすっごく微妙な顔をされてますが。


「お兄様は家柄や血筋だけで、ご友人や結婚相手を選ばれてもよろしいんですの?」

「そうだね……僕は嫌かな」


 あら、急にお兄様の表情が真剣になりました。が、すぐにいつもの感情を隠すような微笑みに戻っちゃった。どうしたんでしょう?


「まあ、父さんと母さんも恋愛結婚みたいだから、麗子にもチャンスはあるんじゃないかな?」


 ウソッ!?


 お母様は美人だ。はっきり言って超絶グラマラスな美女なのだ。そのお母様と悪人顔のぽんぽこタヌキ親父のお父様がどうやって知り合って結婚したのか――そんなの政略一択でしょって断定してたのに。


 意外なんてもんじゃないわ。


「意外だった?」


 ドキッ!

 顔に出てたかしら?


「意外と言いますか……お父様とお母様は、その……何と言いますか……」

「まあ、あの二人は血統主義の選民意識が強いからね。麗子がそう思っていても仕方ないか」

「はい、とても家柄を重視されておいでです」

「そうなんだけど、父さんも母さんもけっこう仲が良いだろ?」


 確かに、お父様とお母様は金持ちの家にありがちな険悪夫婦とは程遠い。そう言われるとイチャラブっぽい雰囲気にも見えなくはない……のか?


 でも、そーかー。まだ恋愛結婚の望みは閉ざされていないんだ。


「だけど、二人とも釣り合う家柄だったから何の問題も無かっただけかもね。麗子が一般男性と恋愛をするのを許してくれるかは疑問かな」

「うっ!」


 もう!


 希望を持たせておいて蹴落とすなんて……お兄様、けっこういけずです。


 お兄様にまたくすくす笑われてしまいました。

 やだッ、また百面相で変な顔してたのかしら?


「まあ、まだ麗子には早い話だよ」


 お兄様は微笑むと、私の頭を優しくポンポンしてくれました。


 その笑みはいつもの作り笑いと違って、少しだけ柔らかいように思えたのは私の勘違いかしら?

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