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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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第126話 麗子様はデビュタントで衆目を集める。


 ——夏休みも後半


 照りつける太陽の陽差しが日を追うごとに増している気がする。


 あぢ〜


 なんつー暑さだ。溶けてしまうぞ。

 地球温暖化というのは本当らしい。


 こんな炎天下の中でも、私は塾へ通っている。偉いだろ。まあ、高級車だから涼しくて快適なんだけどね。金持ちバンザイ!


 夏期講習では相変わらず菫ちゃんを私と桔梗ちゃんでがっちりガードしている。つまりは私と桔梗ちゃんの関係に変化はないってことだ。


 いい加減、懐いてくれないかなぁ。


 だが、私の夏休みは決して塾だけでは終わらない。勉学は大切だが、それだけでは灰色の青春になってまう。花の十代、やはり恋に友情に遊びにと全力投球しなきゃ。


 よく学び、よく遊べ。命短し恋せよ乙女――とは先人のありがたい教訓じゃ。


 というわけで、本日は菊花会(クリザンテーム)の交流会、夏菊の会クリザンテームプレコースの日よ!


 会場は大鳳学園の中央校舎の最上階にある天上庭園よ。


 ここって、いつもは関係者以外入場禁止で、特別な日しか開放されないの。ゆえに開かずの庭園、通称『秘密の花園』って呼ばれているわ。


 普段は開かれることのない扉の前、私はお兄様と並んで立つ。


 この先に天上庭園へ通じる大ホールがある。扉越しにも中の活気が伝わってきて、私はちょっとたじろいだ。


 うーん、ここって、原作で清涼院麗子がコテンパンにされる場所なのよねぇ。ちょっと嫌な汗出てきた——いや、落ち着け麗子。原作は三年後よ。


 まだ、大丈夫……のはず、よね?


「さあ、行こうか」


 気後れしてたら、お兄様が優しく微笑みかけてくれた。


 今日のお兄様の出立ちは、漆黒のスーツにシルバーのシルクタイ。高校生とは思えぬ色気がムンムンよ。


 そんな大人な魅力たっぷりのお兄様、急にスッと手を差し出したけど……なに?


「お手をどうぞ、僕の可愛いお姫様」


 きゃーっ!

 っん、もうっ、麗子はトキメキが止まりませんわ!


「麗子はいつも可愛いけど、今日のドレスは大人っぽくて一段と綺麗だよ」

「そんな……むしろ、ちょっと子供っぽかったかな、と思っておりますのよ」


 今日のコーデは夏に合わせて、涼しい薄水色。露出控えめのアフタヌーンドレスを選んだの。さすがに露出の大きいイブニングドレスはねぇ。中高生の集まりやし、我まだ中学生やしな。TPOをわきまえたんや。


 これを大人っぽいと褒められてもね。

 さすがに言い過ぎですわよ、お兄様。


 見え透いたお世辞は逆効果でしてよ。プイッ!


「そんなことはないさ」


 私がちょっと拗ねてそっぽを向いたけど、お兄様は私の手を取ってにっこり。


「落ち着いた色合いが、麗子を大人びて見せているんだ」

「そ、そうでしょうか」


 くっ、これはリップサービスよ。ご機嫌取りなのよ。毎度毎度その手には乗りませんわ。麗子は騙されませんことよ。


「ああ、今日の主役は間違いなく麗子さ。みんなの視線を独り占めしてしまいそうだ」


 ま、まあ、我は類まれなる美少女やしぃ、そんなの当然よねぇ。だから、その程度の褒め言葉では、麗子の鉄の意志は挫けませんことよ。


「僕は麗子が他の男に奪われるんじゃないかって気が気じゃないよ」

「もう、お兄様ったら、私達は兄妹でしてよ」

「うん、そうだけど、麗子にはまだまだ僕だけの麗子でいて欲しいからさ」


 っん、まあっ、お兄様ったら、いけませんわ。そんな……でもでも、お兄様だったら麗子はイケない道に堕ちても……


 あゝ、やっぱりダメよ、麗子。


 それは禁断の果実なの。ひとたび口にしたら、その甘美な背徳感に引き返せなくなるわ。


 そしたら、私とお兄様はエデンの園を追放されてしまうの。失楽園よ。高校教師よ。最後は手に手を取って心中するのね。


 心の中で妄想と葛藤してたら、お兄様が私の手に口を近づけ——チュッ!


「もうしばらくは、誰にも麗子を渡さないからね」


 ——ズキューーーン!


 お兄様、ステキにステキ、ステキ、ステキステキステキスキスキスキスキスキスキ、いやん大スキ!


 もう、お兄様を見る私の目はハートマークよ。

 やっぱり、お兄様は私の運命の王子様なのね。


 しっかし、こうして見ると、お兄様はだいぶん原作のイケメンに近づいているわね。君ジャスヒーロー滝川とは大違い。


 こんな素敵なお兄様と手を繋いで入場したら、羨望の眼差しを集めちゃうわね。ほら、あの子も、あの子も、そっちの子も、凄い形相で睨んでる子があんなに。


 あゝ、みんなからの嫉妬の視線が恐いですわ。


 ——ざわっ、ざわざわ……


 それに、お兄様が登場しただけで、みなさんが騒いでおりますわ。みなさんの注目をこんなに浴びて……麗子、恥ずかしっ!


 ウッソで〜す。めっちゃ優越感で〜す。


 ほれほれ、見て見て、これ私のお兄様ぞ。

 うけけっ、羨ましかろ〜、妬ましかろ〜。


 むぅ、だけど、このお兄様を袖にした女がいるのよね?


 お兄様は誰か教えてくれなかったけど、この会場にいるはず。まったく、私のお兄様の何が不満だと言うのかしら。理解に苦しむわ。


 まあ、オッケーされても困るんだけどね。だって、お兄様は私のだもん。誰にも渡さんぞ。


「麗子は友達のところへ挨拶に行かなくて良いのかい?」

「ええ、あまり仲の良い方はここにはおりませんので」


 同級生はほとんど私に近づかないし、唯一寄って来る滝川早見コンビは論外。先輩方は可愛がってくれるけど、選民思想が強いからなぁ。


 日野(ひの)智子(ともこ)様とか御前(みさき)柚巴(ゆずは)様とか。中学に進学してみたら、あの二人、相変わらずの御台様と巴御前だったわ。少しは成長して欲しいものだ。


 だから、サロンでは会員と当たり障りなく接している。私の交友関係は菊花会(クリザンテーム)の外の方が多いのじゃ。


「久しぶりに会いたい人とかいないのかい?」

「そうですわねぇ……美咲様や舞香様にはご挨拶したいとは思うのですが……」


 二人の側にはピットブル滝川と腹黒眼鏡早見が絶対いる。君子、危うきに近寄らずじゃ。


「お兄様こそ、ご学友のところへ行かなくてもよろしいんですの?」

「そうだねぇ……あいつのところはなぁ」


 お兄様が言葉を濁しておられますが……「あいつを麗子に会わせるのは……」って、私に紹介できない素行の悪いご友人でもおられるのでしょうか。


「何か問題のあるお方なんですの?」

「うーん、問題はあると言えばある……のか?」


 どうなさったのでしょう。歯切れが悪いですわね。まさか本当に不良なのでは。お兄様、悪事に手を染めるのは止めてくださいましね。麗子、心配。


「いや、麗子にはまだちょっと刺激の強いヤツかなって、ね」


 なんですか。触れるものみな傷つける系の、ワイルドな方向で危ない方なんですか?


 でも、お兄様の友人ですから、きっと美少年よね?

 ワイルドイケメン……ちょっと興味があるわ。


「私がお邪魔なようでしたら、ここで別々に行動してもよろしいですわよ?」

「そんなに気を使わなくても大丈夫だよ」

「ですが、お兄様にもお付き合いがおありでしょうし」


 お兄様とお別れするのは麗子、寂しい。でも、お兄様のためなら、麗子は我慢の子になりますわ。


「いや、今は麗子の傍を離れたくはないかな」


 まっ、お兄様ったら、嬉しい。いつもいつも麗子の欲しいお言葉をくださいます。


「麗子を一人にしたら、早見君がまとわりつきそうだし……」


 ん? どうして早見の心配をされているのです?


「まあ、良いじゃないか。せっかく天上庭園が開放される日なんだ」

「そうですわね。私、拝見するの初めてなんです」


 じゃあ行こうかって、お兄様に手を引かれたその時……


 ——ドヨ、ドヨドヨ、ドヨドヨ……


 会場がいきなりどよめいた。


 なになに?って、思わず振り返れば、そこには見覚えのある見目麗しき四人の男女。


 あれは美咲お姉様と舞香お姉様……と早見と滝川ぁ!


 くっ、滝川御一行のご入場ってか。

 ちっ、お兄様より騒がれてやがる。


 滝川のくせに生意気な!


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