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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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122/129

第122話 麗子様は同じ釜の飯を食う。


 猪突猛進。

 有言実行。


 神宮寺桔梗ちゃんとはそんな女の子だ。


 というわけで、宣言通り桔梗ちゃんは私の隣に座ってきた。


「ごきげんよう、清涼院さん」

「ごきげんよう、神宮寺様」


 どうやら、夏期講習の間も監視を続けるようだ。未だに私が滝川と早見を両天秤にかける悪女に見えるらしい。


 私の皿にはどちらも載せてはおらんのだが。だいたい、塾で監視しても意味がないと思うんですけど?


 うーむ、なんとか桔梗ちゃんの誤解を解かねば。このままだと私の勉強に差し障りが出る。


 それにしても、桔梗ちゃんが隣に座るようになってから、以前よりも周囲からじろじろと見られるようになった。主に男子から。


 さもありなん。


 我だけでも絶世の美少女だというのに、とんでもない和風美少女の桔梗ちゃんが並んだら目立っちゃうわよね。特に思春期の男子は気になって仕方あるまい。


「おい、あれ見ろよ」

「やっぱ、かわいーよなー」

「ううっ、気になって勉強できない」


 ごめんな。集中力を乱して。

 成績落ちても恨まんでくれ。


 ふっ、美しいって罪よね。


「黒髪ロングのあの清楚感がたまんないぜ」

「ちょっとツンツンしたとこがサイコーだよね」


 ん?


「俺、告ろうかな?」

「ばーか、お前じゃ無理だって」

「そうそう、あの子、超お嬢様校の聖浄だぜ」


 我は?


「それに隣を見ろよ」

「うげっ、大鳳のボスロール!?」


 おい、我は竜を探しに行く系RPGの中ボスかい!


「どうして俺らの姫があんな危険人物と?」

「きっと、弱みを握られ脅されてるに違いない」


 私が竜王で桔梗ちゃんはローラ姫か!


「よーし、俺が姫を救い出してくる……ぐふっ、そしたら、あの子が俺の彼女に……」

「バカ、やめとけって」

「近づいたら殺されるぞ」


 ちっ、情けないヤツらめ。


 そんなことで桔梗姫を我から奪えると思っとんのか。取って食っちまうどー。メタスラ狩ってレベル上げしてから出直してこい。


 やっぱ、レベルMAXのお兄様や滝川のおじ様のような、大人の男性しか私には釣り合わないらしい。


 ……ったく、ほんとガキンチョ男子にはドイツもコイツもロクなのがおらん。


 モテたと思ったのに。

 モテたと思ったのに。


 別に悔しくなんてないんだからね。


 ドチクショー!


 こうなりゃ焼け食いよ。休み時間にコンビニへ駆け込み、お菓子をゲットだぜ。ふむふむ、コンビニの品揃えも侮りがたし。


 おお、あれはブラックトルネードとコンビニスイーツのコラボ商品ではありませんか。ブラックトルネードフラッペですって。じゅるり。


 うーん、だけど今は袋菓子を食べたい気分だから、また今度にしましょう。


 今日はコイツを……老舗不二見家が誇るベストセラー『カントリームシュー』よ。しっとりサックリした食感で、人気を博したチョコクッキーなの。


 しかも、期間限定『チーズあんシメサバ味』なのだ……チーズあんシメサバ味?


 勢いで買ったけど、これホントに大丈夫?


 不安になってきた。そういや、大量に積み上げられていたな。あれって人気商品だからじゃなくて、売れ残っていたんじゃ?


 いかん、期間限定という言葉に踊らされてしまった。

 やばいなー。これ、やっちまったんじゃなかろーか。


 いや、老舗の開発部の方々も味見はしてるのだから大丈夫……大丈夫だよね?


 さあ、さっそく食べてみましょう……


「何をやってるの、清涼院さん。もうすぐ先生が来るわよ」


 ……と思って教室に戻ったら桔梗ちゃんに捕まっちった。なんてこったい。手を引かれて隣の席に連行されちまったよ。


 あわよくば、離れた席に移ろうかと企んでたのに。


「なに、あなた、買い食い?」


 しかも、レジ袋に隠した私のカントリームシューを目敏く見つけるし。


 まあ、いい。桔梗ちゃんと仲良くなれるチャンスかもしれん。ここはお近づきの印に、お一つどーぞ。


 一個クッキーを差し出したら、桔梗ちゃんが不思議そうに首を傾げた。


「えっ、くれるの?」

「カントリームシューをお嫌いでなければ」

「ううん、好きよ……ありがとう……って、チーズあんシメサバ味ぃ!?」


 パッケージを見て桔梗ちゃんが顔を顰めた。うん、当然そんな反応になるよね。


「とても美容に良いそうですわ」


 シメサバのEPAとDHAやチーズとあんこのビタミンB群とポリフェノールがお肌のターンオーバーを促進して、アンチエイジングなどの美容効果を生んでる――ってパッケージの謳い文句にあるぞ。


「だからと言って、これはないんじゃない?」


 やっぱり、みんな敬遠するんやな。だが、クーリングオフは受け付けまへんでぇ。


 さーて、それでは桔梗ちゃんと一緒に実食♪実食♪――パクッとな。


 うっ、バターと砂糖の甘さをチーズがまろやかに包み込むまでは良いけど……その後にくるお酢と青魚の風味が全てを台無しにしとる。


 食べれんことはないが、なんたるカオス味。


「これは……ちょっと……まあ、食べられないこともない……かな?」


 桔梗ちゃんも何とも言えぬ微妙な表情。ごめん、こんなものを食べさせて。だけど、お残しは許しまへんでぇ。


「清涼院さん、もうちょっと考えて買った方が良いわよ」


 飲み物でクッキーを流し込んで「なんとか食べられた」と涙目の桔梗ちゃん。ホントごめん。


 でも、何だかんだ言いながらちゃんと食べてくれたんだ。桔梗ちゃんって、やっぱりいい子よねぇ。


「でも、意外ね」

「何がですの?」


 なんか桔梗ちゃんにジッと見つめられちゃった。イヤン。


「清涼院のお嬢様でもコンビニでお菓子とか買うんだ」

「私がコンビニでお買い物してはいけません?」

「いけなくはないけど……ただ、ちょっと驚いただけ」


 私がコンビニを使うのは、そんなに変だろうか?


「高級店のスイーツしか食べないと思ってたから」

「私は良いものなら何でも取り入れる主義ですの」

「でも、これよりも美味しいクッキーなら、いままでたくさん食べてきてるでしょ?」


 そりゃねぇ。お金さえ出せば、これ以上のものなんて幾らでも手に入る。なんなら、私が焼いたクマさんチョコクッキーの方が遥かに美味しいし。


「神宮寺様、お金に糸目をつけないというのは少々品がありませんわ。逆に限られた中で最大限の成果を出そうとすることは素晴らしいとは思われませんこと?」


 もっともらしいこと言ってるけど、まあ費用対効果が大事って話やな。


「なぜなら、その商品にはたくさんの努力が詰まっているからですわ。これを称賛せずにいられましょうか?」


 桔梗ちゃんがへぇっと感心した表情してるけど、単に前世の貧乏性が抜けてないだけだ。


「清涼院さんって、とてもしっかりしているのね」


 そう言いながらも、桔梗ちゃんはクスッと笑った。


「だけど、それでもチーズあんシメサバ味はないと思うわよ」

「ふふっ、少しばかりチャレンジ精神が旺盛すぎましたわね」


 一瞬の沈黙の後、思わず私達は吹き出してしまった。


 これはちょっと仲良くなれたのかな?


「あっ、それって、カントリームシューの期間限定品だ!」


 突然、声をかけられ振り向けば、眼鏡をかけたふんわりカールのミディアムの可愛い女の子が立っていた。


 このブレザー制服は……確か超エリート進学校の都立日々矢(ひびや)学園のよね?


 何かしら?って首を傾げたら、眼鏡っ子が私の顔を見て急に真っ青になった。いったいどうしたん?


「ボ、ボスロー……」


 あ゙っ? なんだって?


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」


 ちょっと、半泣きしながら謝んないでよ。


「かわいそうに、日々矢の女の子がボスロールにイジメられてるぞ」

「やっぱ、大鳳のボスロールには逆らっちゃダメだ」


 ほらぁ、風評被害が広がってるじゃない!


「私は別に怒っておりませんので、謝るのはお止めなさいませ」

「ほ、本当ですか?」


 お願いだから、ビクビク怯えんでくれ。

 私にも世間体ってものがあるんだから。


 あっ、そうだ……


「そうだ、これを差し上げますわ」

「えっ、いいんですか?」


 カントリームシューチーズあんシメサバ味を渡したら、眼鏡っ子の顔がパアッと明るくなった。


 横で桔梗ちゃんが、それ押し付けるつもりってジト目を向けてきたが、知らん知らん。この子が喜んでるんだから良いじゃない。


「んっ……これ!?」


 眼鏡っ子が大きな目を更に見開いた。


 やっぱ、まずかったかー。だけど、クーリングオフは受け付けんぞ。お残しも許しまへんでぇ。


「けっこう美味しい!」

「「えっ!?」」


 マジか?


 だけど実際、カリカリカリっと凄い勢いで食べてるよ。なんか食べ方がリスみたいで可愛いわね。


「とっても美味しかったです」

「よ、喜んでいただけて幸いですわ」

「ありがとうございます」


 眼鏡っ子の満面の笑顔に、私の罪悪感がハンパなし。不良物件を押し付けたなんて言えない。


 どうやら、桔梗ちゃんが食べていたせいで、男子達が興味を示したようだ。桔梗ちゃん美人だもんな。


 さらに眼鏡っ子が美味しそうにしていたのが決定打となった。この子も可愛いもんな。


 この後、売れ残っていたカントリームシューのチーズあんシメサバ味は売り切れましたとさ。


「ぐおぉぉ!」

「まずっ!?」

「なんじゃこりゃぁ!」 


 そして、あまりの不味さに男子達の屍が築かれたそうな。

 可愛い子が食べてたからって、安易に手を出すからじゃ。


 まったく救えねぇぜ、男子ども。

 いい夢、見させてもらったか?


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