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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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第121話 麗子様は一向にかまわんッッ!


 水面ちゃんの天岩戸事件も無事解決。

 ふー、一時はどうなるかと思ったよ。


 だけど、後に残すは楽しいイベントばかり。全ての借金を返済したような晴れ晴れとした気分だ。


 どうやら、我の夏休みは順調な滑り出しのようやな。


 ほら、空を見て。天高く輝く太陽も、抜けるような青空も、そびえる白い入道雲も。どれもこれも、まるで私を祝福しているように晴れ渡っているじゃない。


 あゝ、なんて素晴らしいのかしら。

 こんなにも世界は美しい……めっちゃ暑いけど。


 まあ、不条理な目にいっぱいあってきたわ。それでも、まだまだ世の中捨てたもんじゃないって思えるの。


 ピッパだって、悪人だらけの劣悪な環境にいたのよ。それでも、年にたった一度の休日に純真無垢な彼女は世界の美しさを賛美し、歌を口ずさんでいたじゃない。


 天下泰平、天下泰平。


 神は天にいまし、すべて世は事もなし。……いま夏だけど。


 まあ、五歳の時は希望や夢でいっぱいやったのに、大鳳に入学してから魔王や堕天使のせいで不条理な目に遭ってきたけど。


 しかし、赤毛のアンだって道が細くなった分、周りの美しいもの、人の情けに触れることが多くなったと言っていたじゃないか。


 我もピッパやアンのように逆境の中にあっても、夏に咲く向日葵(ひまわり)さんに笑われないよう『良かった』を探そうじゃないか。


 きっと、今年の夏休みは良いことがあるに違いない。もしかしたら、これから夏期講習で新しい出会いが待ってるかも。彼氏できちゃったりして。むふっ。


 ……って思ってたんだけど。


「清涼院さん、聞いたわよ」


 塾の夏期講習で桔梗ちゃんに捕まった。


「あなた本当に節操がない人だったのね」


 完全に油断してた。まさか桔梗ちゃんも夏期講習を受けてたなんて。


「神宮寺様、いったい何のお話ですの?」

「興味がないなんて言っておきながら、また早見様のお宅にお邪魔したそうじゃない」


 くっ、全部筒抜けかい。我の個人情報はどうなっておるんじゃ。


「それは早見のおば様から料理教室に誘われただけですわ」

「家族ぐるみってわけね」


 相変わらず桔梗ちゃんは思い込みが激しすぎないか?

 専断偏頗(せんだんへんぱ)とは彼女のためにある言葉ではなかろうか?


「やっぱり、清涼院さんは滝川様ではなく早見様狙いなのね」

「いえ、私は早見様とどうこうなろうなどと微塵も考えてはおりませんわ」


 誰があんなドン・ファンとなんて。一途に私のことだけを見てくれる人じゃなきゃ嫌やねん。


「何ですって! 清涼院さんは滝川様狙いなの!」

「私に滝川様への恋慕の情など爪の先ほどもございませんわ」


 冗談はよしこさん。


 あんなヤツ誰が狙うもんか。私に「大っ嫌い宣言」したヤツやぞ。めっちゃ残念なイケメンなんや。ホント滝川にはガッカリさせられてばかりだよ。


「じゃあ、やっぱり早見様狙いなんじゃない」

「早見様も滝川様もありませんわ!」


 なんでその二択しかないねん!


「清涼院さんには他に選択肢はないじゃない」


 ビアンカかフローラのどっちか強制で花嫁にせにゃならんRPGの主人公か。あたしゃ。


 デボラ?

 知らん。


 あたしゃ、ビアンカ派じゃ。何度プレイしようとも、ビアンカしか勝たん。


 だが、人生はゲームとは違う。色んな出会いがあり、選択肢を狭める必要などないのだ。


「世の中には、他にも素敵な男性は山ほどおりますわよ」

「でも、清涼院家の娘とすれば、滝川家か早見家との縁を結ぶよう言われているでしょ?」


 まあ、幼少期、そんな動きもあったな。

 原作じゃあ、滝川の婚約者だったしな。


 ホント、世界は我を悪役お嬢様にしようとする悪意に満ち満ちておるわ。


「確かに、滝川家や早見家と縁を結ぶのは魅力的ではありますわ。ですが、我が清涼院家は日本有数のグループ企業を抱える名家。両家との繋がりが絶対に必要というわけでもありませんの」


 と言うか、曲がり角の先に魔王や堕天使が待ち受けていようと、必ずや婚約は阻止して見せるぞ。お母様から結婚相手は自由にしてよいと言質(げんち)も取ったしな。


「それに、滝川様は私の好みではありませんの」

「信じられないわ」


 なんでみんな滝川なんかにキャーキャー騒ぐんかね。アヤツは見掛け倒しぞ?


 中身は残念なスイーツバカのお子ちゃまだかんな。桔梗ちゃん、滝川に幻想を抱きすぎじゃ。もそっと現実を見た方が良いぞ?


「だったら、私が滝川様に告白しても良いのね?」

「どうぞ、ご随意に」


 わたしは一向にかまわんッッ!


 うーん……だけど、やっぱ桔梗ちゃんは滝川に懸想しておったのか。なんとも趣味が悪い。桔梗ちゃんほどの美少女なら、よりどりみどりでしょうに。


「ですが、あまりお勧めは致しませんわよ?」


 なんせ、滝川は超優良物件に見える超不良物件やからな。


「やっぱり、滝川様を狙っているのね!」

「いえ、そうではなく、望みは薄いかと思いまして」

「……もしかして、久条美咲様のことを言っているの?」


 それもある。


 滝川は美咲お姉様以外の女の子には、これっぽっちも興味がない。桔梗ちゃんほどの美少女でも滝川の心は揺らぐまい。


「滝川様のお気持ちは知っているわ。だけど、久条美咲様は婚約が決まっていると聞いているわよ?」


 美咲お姉様の婚約内定の件はまだ極秘のはずだけど……さすが、滝川のストーカー。凄い情報網だ。


「そうですが、人の気持ちとはままならないもの。滝川様はまだ美咲様に想いを残されておられます。そのような時に告白などされても不興を買うだけですわ」

「一理あるわね」


 まあ、本当の理由は他にあるんだけどね。


 滝川は美咲お姉様以外の女子などアウトオブ眼中で、むしろ言い寄る女の子は全て毛虫以下に見える失礼なヤツなのだ。


 だけど、その滝川にも心を開いた子が一人だけいる。

 そう、京都の修学旅行で出会った瀬尾茉莉ちゃんだ。


 あの滝川が女の子を気遣い、あまつさえ思いやりを示した。これは異例中の異例のことなのだ。さすが君ジャスヒロイン。


 これはもう、茉莉ちゃんと滝川がラブラブになってハッピーエンドを迎えるのは揺るぎあるまい。原作の矯正力侮りがたし。


 気をつけないと、私も悪役お嬢様として破滅するやもしれん。まだまだ気が抜けんな。


 さーて、悪役お嬢様の路線脱却のためにも勉強、勉強。私は運命に逆らって、必ずや好き勝手に生きてやるんだから。


「……神宮寺様?」

「なに、清涼院さん?」


 あのぉ、なんで私の隣に座るの?


「席はたくさん空いておりますわよ?」

「なに? 私が隣に座ったら不都合でもあるわけ?」

「いえ、そういうわけでは……」


 ちょっと、ジーッて睨んでくるし!


「そんなに見られると気が散ってしまうのですが?」

「私はまだ、あなたに気を許したわけじゃないんだからね」


 えっ、まだ監視続行なんですか?


「本当に私は滝川様とはなんでもありませんわよ?」

「あなた、油断ならないのよ」


 にっこり笑う桔梗ちゃん――


「これからもよろしくね、清涼院さん」


 とってもラブリーなんですが……それって、夏期講習の間も私の監視を続けるってことですよね。


 ひーん、もう許してぇ。


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