純然たる驕傲編 第九話
著者:雪路よだか 様(ココナラ
企画・原案:mirai(mirama)
「出ていけ!」
この台詞ももう何度聞いたことだろうか。分かりました、と頷いて、ジュウとレイはコウの部屋を出た。
度重なる説得にも、コウは応じるどころか、まともに話を聞こうともしない。
昔は優れた長だったと聞くが、今ではその面影もなかった。
コウは少しずつ集落から浮いていった。それだけならば、まだ良かった。ジュウとレイは一切の迫害を禁じていたので、浮いているコウでも攻撃されることはなかった。互いに干渉しなかったのだ。
しかし、そうも言っていられなくなった。勝手な行動が目立つようになったのである。
「コウさん。他の集落の人が話をしに来たのに、突っぱねたと聞きました。勘弁してくれませんか。うちの集落は、とりあえず話を聞いて、それからみんなで話し合って決めることになってます。勝手に決められては困ります」
「勝手だって? ふざけるな! ここは僕の集落だ。僕が決めて、何が悪い」
「もうあなただけのものではありません」
民たちの意思を背負っている以上、ジュウもレイも引き下がれなかった。ジュウが声を荒げる。しかしそれは、コウの反感を買うだけだった。
「僕のものだ! 誰がここまで集落を育てたと思ってる! 後から来て、好き勝手にしているのはお前たちだ。お前たちは泥棒だ!」
コウは叫んだ。ジュウとレイは顔を顰めるほかなかった。
「コウ様を追放しよう」
十日に一回ほど行われる民たちの会議にて、屈強な男がそう言った。
全員が驚いたように息を呑み、ふとあたりを見渡す。
「そんなことを言うものじゃない。コウ様に聞かれたら……」
「俺たちは、いつまでコウ様に怯えなければならない」
男の声は力強く、覚悟を感じさせるものだった。
「これまで集落は個人的な力のみを絶対としていた。だから一人で凄まじい能力を持つコウ様が崇められたのは必然だ。だが今の我々は違うはずだ。我々にはジュウ様とレイ様がいる。協力するということも知っている」
民たちはコウに聞かれることを恐れ、何も言わなかった。しかしそれは、肯定と同義だった。
「ジュウ様、レイ様。コウ様は集落の秩序を乱す存在です。この集落にはふさわしくない。そうは思いませんか」
「待ってくれ。君の言い分も分かるが、俺たちは協力すると決めたじゃないか。彼だって……」
「協力できるというんですか。本当に?」
男の強い視線に、言いかけたジュウも黙るしかなかった。
「……ともかく、今日の会議はここまでにしよう」
レイが空気をとりなすように言ったが、民たちの心の中に疑念と暗雲が垂れ込めているのは、疑いようがなかった。