純然たる驕傲編 第十一話
著者:雪路よだか 様(ココナラ
企画・原案:mirai(mirama)
夜の森は寒かった。火を起こせるものを探すも、暗くて何も見えない。
どうして僕はこんなところにいるのだ。
あの二人が来てから、すべてが狂った。あいつらは悪魔だ。民たちも愚かだ。はじめに自分たちを救ったのが誰かも忘れて。
――そうだ、あの朱い石……。
コウは導かれるように、あの日朱い石を見つけた場所へと歩を進めた。暗くても迷わない。忘れるはずがない。あの日がすべての転機だったのだ。
あの日自分を導いてくれた蝶は見えないが、暗いだけで、きっと自分の周りを飛び回っているに違いない。コウはそう信じて疑わなかった。
大きな木に辿り着いた。あの日、朱い石を見つけた大木。その根本で、何かがきらりと光った。
コウは慌ててそれを拾い上げる。しかし、すぐに落胆した。
「ただの石じゃないか……」
ただの石ころが、月明かりを反射して光っただけだった。手が汚れるのも構わず根本を掘るコウだが、それでも何も見つからない。
コウはポケットから朱い石を取り出し、強く握りしめた。
「足りない……こいつだけじゃ足りないんだ。おい、朱い蝶! いるんだろ。出てこいよ! 僕はまたここに来たぞ! もっと強い力を。もっと強い力を与えてくれ!」
コウは叫ぶも、何一つ応えるものはなかった。
コウはその場に頽れた。
――こんなはずじゃなかった。
あの日のコウは、確かに力が欲しいと願った。ただその力とは、他者を支配したい、という邪な気持ちで願った力ではなかったはずだ。
認められたかった。一人前になって、両親や、集落の人々に、自分だってやれるんだと思い知らせたかった。
その願いは、とっくの昔に成就した。それからは民たちの役に立ちたくて……。
純粋だったはずの気持ちは、いつからこうも醜く姿を変えてしまったのだろう。
父さん、母さん、リン、リコ……。
どうしようもない罪悪感が押し寄せては消えていく。
――僕はもう、人でなくなったのかもしれない。
「……これで良かったんだろうか」
ジュウが呟く。レイが答えた。
「……コウのことか」
「ああ。彼は救ってあげたかった。……同じ石の所持者なのに、どうしてこうもうまくいかないんだ」
ジュウの手には、朱い石が握られている。コウと同じ朱い石だ。ただしそれは半分に割れていて、もう片方はレイが持っていた。
「おそらく、願うものが違ったんだ。俺たちは二人で強くなろうとした。だけど……彼は」
「分かってる。それでも……救いたかったよ」
ジュウの手のひらにある朱い石が、月の光を受けて鈍く光った。




