第5話 虫にも意思はあるのだから
「あー、そのすみません。でももう大丈夫なんで」
「ちょっとユウト、この手の連中に対して下手に出ちゃ駄目よ。こういう連中は調子にのるだけ」
「そうなのか? 悪いなヒルダ。あんまりこういう人たちと会話したことなくて、勝手が分からないんだ」
「あんたの地元って、不良はいるのに結構治安良かったのね」
呆れたヒルダがユウトに注意をしていると、ネズの両親である彼らは暴言を吐く。
「どうして、捨てたも同然の子供のために、ここまで面倒な事に巻き込まれなくちゃいけないのよ。やっと厄介払いできたと思っていたのに。ネズ、なんとか言ったらどうなの? ごめんなさいわ!? あんたなんて私達の世界にとって要らない子だったからこんな異世界に捨てられたのよ」
「何も言わずにだんまりか、泣き虫だな。いや、虫ですらこんな仕打ちはしない! 生みの親を困らせるなんてお前はウジ虫以下だ」
彼等の言葉をきいたユウトは邪神に向けたときと同じような顔で、彼らに聖剣を向けた。
「人を物みたいに捨てる事が、あんたらの中では当たり前なんだな。なら捨てられたって文句言えないはずだよな」
邪神と戦い、聖剣で葬りさったユウトの眼圧に、彼らは気おされる。
「な、なによ、人を殺すっていうの?」
「人殺しになるつもりか!?」
ユウトの行動を見たヒルダが、彼の肩を叩きながら二人の大人に告げる。
「ここは異世界よ、あんたたちがいた世界じゃない。誰も、救世主である私たちをさばけやしないわ」
ヒルダは、今までの常識は通用しないと、そう警告して口を閉ざさせた。
だが、それでは気が済まなかったのがノミトだ。
「虫にも意思はあるんです。反抗するための意思が」
ノミトは彼らの頬をはって、雷の魔法で気絶させた。
ユウトやヒルダはやれやれと肩をすくめながらも、咎める言葉もなく、倒れた二人を両肩にかついだ。
そうして彼らはその場を脱出していく。
リカコはもの言いたげな視線をノミトに贈っていたが何も言わずに、ただ黙り込んでいるのみだった。
隠密行動ができた行きと違って、帰りは施設の者達を倒す必要があったが、ユウト達の敵ではなかった。
最後に施設を出た後に、ネズがノミトに小さく「ありがとう」とお礼を言った。




