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6.ラッキーチャンス?!

(ねみぃ~……)


 眠気の抜けきらない頭で、学校への道を歩く。

 あのおチビちゃんが、これからどんな手を使って俺のキスを狙いに来るのか。

 考え始めるともう、夕べは眠れたもんじゃなかった。

 断っておくが、俺は決してMっ気など無い。

 どちらかと言えば、Sだと思う。

 いや、何の話だ。

 俺はいたって、ノーマルだ。

 それでも、おチビちゃんの事を考えると、何故だかワクワクが抑えきれなかったのだ。


(中坊でもあるまいし、何やってんだ、俺)


「おはよー、漣くん」

「おはよ」


 通りすがりに声を掛けてくれる女子には、眠気に耐えながらも、それなりに笑顔で挨拶を返していたのだが。


「つかまえたわよ、高宮 漣!」


 さすがに、おチビちゃんが背後まで迫っていることには気づかず、声を掛けられて初めて気づいた。


「よぅ。おはよ、おチビちゃ」

「ちょっと!何度も言わせないでよ、高宮 漣!私の名前は」

「なぁ、何で俺のことフルネームで呼ぶんだ?」


 おチビちゃんの言葉をザックリ切って、俺は前からずっと気になっていたことを聞いてみた。

 出会った当初から、彼女は俺をフルネーム呼び捨てで呼んでいる。こんな奴は、男女合わせたって、おチビちゃんくらいなものだ。


「そっ、それは……」


 とたんに、おチビちゃんは顔を赤くして口ごもり、口を尖らせてそっぽを向く。


 そんなの当たり前でしょ。それがあなたの名前だからよ。


 とかなんとか、あっさりした答えを想像していた俺には、意外な反応。

 思わず立ち止まり、俺はおチビちゃんの目の前で腰を屈めて目線を合わせ、顔を覗き込んだ。


「それは?」


 怒ったような、照れたような、恥ずかしがっているような、そんな顔。

 まったく、忙しい顔だ。でも、なんだか面白い。


「なぁ、なんで?」


 もっとよく見たくて、更に顔を近づけてみる。

 すると、真っ赤な顔をプイッと背けて、おチビちゃんは言った。


「響きが素敵だからよっ!」


 そして、俺を置いてスタスタと歩き出す。


「なぁ、おチビちゃん」

「なによ」


 特に急ぐこともなくおチビちゃんに追い付いた俺は、隣を歩きながら言った。


「すげーチャンスだったと思うぞ?さっき」

「は?」

「充分、狙えたぜ?」


 言いながら、指先で俺自身の口を指し示す。

 と。


「私としたことが……」


 小さく呟いておチビちゃんはその場に立ち止まり、まるで漫画のように、手にしていた鞄を取り落とす。


「なんてこと……せっかくのチャンスを……」


 呆然とした顔でブツブツと呟くおチビちゃんを、登校途中の生徒が遠巻きに眺めながら通りすぎて行く。


「なんだ、もう降参か?」


 声を掛けるが、一向に反応がなく。


「おい、チビすけっ!こんなことで諦めるお前じゃないだろっ」

「……っ!」


 やっと我に返ったおチビちゃんの鞄を持ち、俺は走り出した。


「早くしないと遅刻するぞっ!」

「ちっ……ちょっと待ちなさいよ、高宮 漣!あなたさっき、私を『チビすけ』呼ばわりしたわねっ?!」

「気のせいだろ。いいからさっさと走れっ!」

「失礼ねっ!これでもっ、全力でっ、走ってるわよっ!」


 校門が閉まる直前にギリギリで何とか滑り込み、俺はおチビちゃんに鞄を返した。


「じゃあな」

 俺のクラスは、昇降口を背にして右手方向。おチビちゃんのクラスは、左手方向。


「高宮 漣!」


 教室に向かいかけた俺を、おチビちゃんが呼び止める。


「ん?」


 振り返ると、まだ息を切らせながらも、おチビちゃんは満面の笑みで俺に手を振っていた。


「鞄、ありがとう!」


 軽く手を上げて、再び教室へと向かいながら俺は思った。


(何してんだ、俺。これじゃまるで……)


 俺があいつと付き合いたいみたいじゃないか。

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