【第2話】hE IS SHE
不思議な夢を見た。南国の海の中にいる夢。綺麗な珊瑚礁に色鮮やかな魚達。暖かい海が私の体を包み込み、水面から差し込む光の筋が海中を照らす。とても綺麗で幻想的な景色。
私はこの幻想的な海の中を泳ぎ始めた。直接?見るのは初めての熱帯の海洋生物たちとカラフルな珊瑚礁の森、海の底へとどこまでも続いていそうな先の見えない真っ暗な谷……それは本当に美しい景色の数々だった。その一つ一つの景色を目に焼き付ける。景色に夢中になってひたすら泳ぎ続けていると景色が明らかに変わっていることに気がついた。私が泳ぎ進めるにつれて次第に海底を覆っていた珊瑚礁たちは色を失い、白く変色したものが増えていってる。あっという間に海底は白い珊瑚礁に覆われてしまった。さっきまでたくさん居た生き物たちも、もう一匹もいない。初めに比べてひどく鮮やかさを失った海中にはただただ不気味な雰囲気が広がるだけだった。
何か、とても嫌な予感がした。この先には行ってはいけないと私の本能が囁いてくる。でも、体は止まらなかった。止められなかった。何か不思議な力に押されるように、この先の何かに引っ張られるように私の体は先へ先へと進んでいった。そして、それを見た。それ、いや、それらは明らかに海底には場違いなものだった。だけど、さもそこにあるのが当然かのように咲いていた。
「オレンジの……マリーゴールドの花畑…………?」
私はその花に一瞬で釘付けになった。この異物に対して違和感すらも吹き飛んだ。そして、その花畑に一歩足を踏み入れようとした時だった。
「待って!!」
急に聞こえてきた後ろからの聞き慣れない叫び声。私はその声にびっくりして飛び起きた。その瞬間___
ゴッ
「いったい!!」
次に聞こえてきたのは聞き慣れた叫び声。
「あれ、おひぃ、どうしたの?」
「どうしたの?キョトン……じゃないよ!!あ、でもその顔かわい……じゃなくて!うちの終礼終わって美術室来てみたらせいちゃん寝てるし、しばらく寝かせてあげようって思って寝かせてあげてたけどなかなか起きないし!死んでるのかと思って心配になって慌てて起こそうとしてたらせいちゃんが急に飛び起きたせいで後頭部に思いっきり私の顔面にヒットだよ!!あ、でもせいちゃんの髪いい匂いだった……」
「え、あぁ、うん、所々に出てくるいらない情報のせいで申し訳なさが半減しちゃったね……あ、でも頭突きしちゃったのはごめんね?」
そういえば、最近寝つき悪かったんだっけな……。なんか眠れないんだよな……。
「……ってか鼻血出てるよおひぃ!?ハイこれティッシュ!これで鼻押さえて!!」
「あ、ほんとだ。あ、でもだいじょぶだよ、せいちゃん。せいちゃんがかわいすぎて鼻血出すことなんて日常茶飯事だし!こちとら毎日せいちゃんを物陰から見ながらデイリー鼻血出してるから!!」
「鼻血出すの日課にするのやめてもらっていい?あとそんなにドヤ顔してる暇あったら早く鼻押さえて?というか、いつからにそんなことしてたの?今まで1回も気づいたことないんだけど???」
「えっへへ〜、そんなに褒められたら照れちゃうよ〜!褒めても何も出ないんだからね!」
「絶対褒めてないよ?それにもう血液なら出てるからね?」
「あっはは〜これはせいちゃんに一本取られちゃったな〜!」
「んなこと言ってる場合かぁ!!今はどうでもいいから早く鼻押さえて!」
ガラガラガラ|(扉を開ける音)
「ちーっす。お、もう2人とも来てたのか。」
「あ!ゆうくんちょうどいいとこに来た!僕のせいでおひぃが鼻血出しちゃって……結構血が出てるんだけど、保健室連れてったほうがいいよね!?」
「ん?お前が原因でおひぃが鼻血出すことなんざいつものことだろ、ほっとけほっとけ。」
「あ、ゆうくんは知ってたんだぁ……いや、今回は僕が頭突きしちゃったのが原因だからさ……」
知ってるなら是非とも止めてほしかったな……というのはとりあえず今は言わないでおこうかな。あとで問い詰めよ……
「んー、なるほど。あ、ちょうど保健室の先生に出さなきゃいけないもんあるし、ついでに連れてってくるからお前はここに残っとけよ。」
「え、いやでも悪いし、僕が連れてくよ?」
「いーんだよ、お前まだ着替えてもないんだし、もし先に美羽姉来たら伝えといてよ。」
「あ、そっか寝てたからまだ僕部活着に着替えてないじゃん……あー、じゃあ、ありがたくお願いしてもいい?」
「おう、任せとけー。ほら、おひぃ行くぞ。」
「えー、せいちゃんの着替えみーたーいー」
「それ世間一般的にセクハラって言うからな。バカなこと言ってないでさっさと行くぞ。」
「あー!バカって言った!今、バカって言ったー!!ゆうくんのハーゲ!!」
「ハg……おひぃ後で覚えとけよ……ほーら、とっとと歩け!」
「きゃー!ゆうくんの堅物ー!ヤダヤダヤダヤダー!!」
「ほら!駄々(だだ)こねてないでさっさと行くぞ怪我人!!」
「むぅ……。ゆうくんがおぶってくれるなら……行ってあげなくもない。」
「あ!?誰がおぶるか!膨れてないで自分で歩け、バカ。」
「あー!!またチクチク言葉だ!犯罪だよチクチク言葉は!」
「あーもう!ほら!おぶってやるからもう行くぞ!!」
「やったー!ゆうくんだいすきー!!」
「コイツ……と、とりあえず、こいつは俺が連れてくから早めに着替え済ませとけよ。」
「う、うん。ありがとねゆうくん。」
「おう。」
ガラガラガラ|(扉を閉める音)
「ふぅ……」
(おひぃはホントに台風みたいな勢いだなぁ……。にしても、大丈夫かなぁ……また喧嘩してないといいけど。)
そんな事を思いながらカバンから着替えを取り出す。
さっきまでここにいたおひぃこと小野ひよりと、ゆうくんこと玖我結城の2人は私の大切な幼馴染であり、たった3人だけの美術部員。
まぁ、美術部とは名ばかりの談笑クラブなんだけど。
そんな部活の部員であるおひぃはいつもふわふわしてて、ちょっと抜けてるのんびりやさん。気がついたら私の限界オタク(?)になってた。いつもTPOを考えずに私に引っ付いてくるから外にいる時におひぃと一緒じゃない時間の方が珍しいくらい。おひぃの親は世界的にも超有名なデザイナーの父親と元パリコレモデルの母親っていうハイスペックな人たち。昔はよくおひぃが駄々こねて幼馴染3人の服を父親のさとしおじさんがデザインしてくれたりした。今となってはおひぃが何も言わなくてもおじさんが試作中の服を実際に着てみてほしいと言ってそのままくれたりする。そんな父親に憧れてか熱烈なデザイナー志望で、いくつかのコンクールで賞を取っている将来有望なデザイナーの卵。
もう1人の部員のゆうくんは私たち幼馴染の中で一番しっかりものでお母さんみたいな感じ。よく私とおひぃの世話をしてくれる。と言っても、大半はいつまでもゆうくんに対して反抗期のおひぃのお世話だけど。今は美術部のゆうくんだけど、小さい頃からバスケが大好きで中学生の時にはエースとして当時無名だった私たちの中学のバスケ部を見事、都大会優勝に導き、見事大会MVP。そりゃもちろん高校受験時には数々(かずかず)の強豪高校から推薦が来てたけど、ゆうくんはその推薦を全部蹴って私たちと一緒の高校に入学した。あの時はおひぃと一緒に必死で説得してたっけかな……結局、ゆうくんの意思が固すぎてこっちが折れたんだけど。本人曰く、「お前たちと離れたらつまらない。」らしい。なんだ、かわいいかよ、って思ったのは言うまでもないよね。そんなこと言ってる私もスポーツ推薦全部蹴って単位制が売りのこの高校に入ったんだけど。
美羽先生っていうのは私たちのひと回り歳上のお姉さんで、近所に住んでたから子供の時から3人共々(ともども)よくしてもらってた。なんの偶然か、たまたま私たちが入学した先に美羽先生もたまたま派遣されてきた。そんな長い交流もあって先生っていうかお姉ちゃんっていう感じなんだけど、本人が私たちに先生呼びされるのがいいらしい。美羽先生には今もいろいろお世話になっている。
「ってやばい、こんな昔のこと思い出してる暇じゃないんだった……早く着替えなきゃ。」
とりあえず、早く済ませて筆とか準備して………………
ガラガラガラ|(扉の開く音)
「失礼しま_____あ、」
不意に開いた扉の方向を慌てて見た。扉の前にいる生徒と目が合う。今ちょうど上着を脱ごうと……
「えっ、あっ」
慌てて脱ぎかけた上着を着直す。
「し、失礼しましたぁっ!!」
ピシャンッ|(扉を閉める音)
え、見られた……よね。
「どうしよう……ゆうくん達まだ帰ってこないよね……。」
初対面の人苦手なんだけど、どうしよう……。いや、一回落ち着こう。まだわからない。たまたま迷ってしまった新入生かもしれないし新しい部員かもしれない。どっちみちあんまり邪険に扱っちゃダメだ……
「スゥーーーーー、フゥーーーーー…よし、大丈夫。」
深呼吸して落ち着かせる。とりあえず早く着替えて……それで声をかけ直そう。
「勇気出せ、私。」
頬を叩いて切り替える。
「あーもう…ほんっとにツイてない!!」
廊下からそんな叫び声が聞こえてくる。うわぁ、絶対気にしてるじゃん……。とりあえず悪い人じゃなさそう?だし、急がなきゃ。というか、美羽先生も新入部員が来るんだとしたら来ると事前に言っておいてほしい。ホントそういうところガサツなんだから……
「これでよし…フゥーーー」
着替え終わった私は扉の前で息を吐く。よし、行こう。
ガラガラガラ|(扉を開ける音)
「えーっと、もしかして美術部の新入部員だったりする……?」
最後まで読んでくださりあるがとうございます。
お久しぶりです、Ashです。やっと第2話を更新できました。
コロナに感染してしまい、今月のスケジュールが狂いに狂いまくったせいで少々慌てております。
さて、今回はどうだったでしょうか?第2話までは物語の進み方が遅いので退屈かもしれませんが、次回からは本格的に進む……予定です。読んでくださってる方がいるかわかりませんが、もし居たら僕の作る世界を楽しんでもらえたら何よりです。
最近執筆してて思うことは語彙力がないなぁってことですかね。他の方が書いた小説を見て「なるほど、この表現上手いな。」と感心するばかりです。
次回は前々から構想のあった短編を出そうと思います。Ashの趣向全開の作品ができると思いますので楽しみにしてもらえると幸いです。あと、更新頻度を上げるためにふりがなを付けずに更新することが増えると思います。後々振るつもりではあるのでサラ〜っと読んでもらえたらいいかなと思います。
それでは、ここら辺で。
また次の後書きでお会いしましょう。