第4話 断罪イベント
「でも!その子の家柄は王妃にはふさわしくないわ!私は貴方の婚約者なのよ!」
私は思わず叫んだ。
ここはスライシアで唯一の神官になる為の学校だ。
スライシアにおける神官の職は誰もが憧れる花形職業だ。
まず、神官になれる才能が無ければ入れない。
あとは学校の学費が高額な為、ほとんどが貴族の子どもしかいない。
単位制でとりたい学科だけを選択して、単位で卒業できる学校だ。
延々と学校に居続け研究職を選ぶ生徒も居れば、城での事務仕事の単位だけをとって城で文官の役人になるものもいる。
私は王妃になるために、オスカーは国王になるためにこの学校に通っている。
なのにオスカーが仲良くなったその女の子は、才能があると認められた奨学生で唯一の平民なのだ。
彼女の名前はマリア。
茶色い髪はふんわり肩をおおい。ブラウンの大きな目は愛らしく、守ってあげたくなる雰囲気の愛らしい女の子だ。
少しツリ目がちでキツそうに見えるティアラとは対極の外見にオスカーが癒しを求めたとしてもしょうがない。
しょうがないが、婚約者は私なのだ。
マリアはオスカーが王子であっても気安く話しかけ、オスカーにまとわりついていた。
私は彼女に何度か身分が違うと注意したがオスカーも彼女も理解しないのだ。
オスカーはその女の子の肩に置いていた右手を離して、私をゆび指した。
「ティアラは王妃になりたいだけで、俺を見ない。アイオンの幻ばかりを俺に追い求める! うんざりなんだよ! だったら、さっさと婚約を解消すれば良かったんだ!」
みんなが居る前でオスカーは叫んだ。
そして、数歩こちらに歩みより私の肩をつかんだ。
その瞬間オスカーは何かに押されたかの様に、後によろけた。
??私、オスカーの事押してないわ。
周りから見ると私がオスカーを押した様に見えただろう。
「ティアラは僕の王妃だ」
そこに学校の制服を着た見知らぬ生徒がいた。
誰もが突然現れた少年に驚いた。
確かに神官服を模したこの学校の制服を着ているのだが……一度も見たことがない。
ブルーががった黒髪に、スカイブルーの瞳……さらに右目の下に2つ並んだほくろ。
アイオンの特徴そのままだ。
そして、私はこの台詞を聞いた事があった。
私はこの瞬間に思い出したのだ。
この台詞とこのシーン私知ってるわ!
乙女ゲームの『ラブキングダム』だわ!
突然私は思い出した。
主人公のマリアは、オスカールートに入ると悪役令嬢のティアラにしつこく邪魔されるのだ。
邪魔されればされる程に2人の愛は盛りあがる。
そして分岐になる悪役令嬢の断罪イベントが起こるのだ。
ハッピーエンドならば、オスカーはティアラと婚約を解消して、マリアは王妃になり、幸せなシーンでゲームは終了する。
だか、バッドエンドになると……。
行方不明だった兄王子が帰ってきて……自分が王になる為に、邪魔な二人に罪を被せて処刑してしまうのよ!
これ『処刑エンド』だわ!!
『処刑エンド』は、アイオンがティアラに薔薇の花を差し出して微笑み、そして言うのだ。
「ティアラは僕の王妃だ」
その台詞で、ゲームはエンドロールに切り替わる。
待って!
アイオンはそんなことしない!
……しないはずだ……。
私はぞっとした。