第18話 たぶらかす?
「とりあえず行ってみればいいんじゃないの?」
母さんが明るく言って、父さんはやっぱりうーんとうなった。
で、三人でまとめてガンダルン王都へ移動。
移動先はどこかの部屋だった。
僕はまた街の外壁の外に出るのだと思っていたからびっくりした。
そこはガンダルン王都にある母さんの実家で、今は息子のライアンとその妻と子どもが住んでいるらしい。
「琴梨ちゃん呼んでくる」
父さんが部屋を出ていって、可愛らしい女の子を連れてきた。
背が小さくて僕と同じくらいの年に見えた。
母さんの息子『ライアン』の嫁で、現聖女の友達だから、頼めば聖女の子どもであるエマ姫を紹介してくれるかもと紹介された。
だから、正直に経緯を説明した。
琴梨さんは話を聞いて僕を見ながら言った。
「エマはお父さん大好きっ子だから、エリスワース王子みたいな人が多分好きかな? エリスワース王子ってスライシアの血が濃ゆいから、金髪で綺麗な顔なの。もしかして、そのオスカー王子もそんな感じの人かな?」
僕はうなずいた。
その通りだ。
対して、僕は母がユリオックなので、スライシアの血は半分。
整ってはいるけどオスカーほどに華やかな顔ではなかった。
そして黒髪だ。
「あと、年齢がエマは今12才かな?だから今エマに気にいられてもなぁ……」
年齢的にも僕だと4つ離れてしまう。
この世界は16才が成人で、成人になるまで結婚できないのだ。
オスカーの場合は先にティアラと結婚して、エマ姫は後でもらうつもりだったようだ。
話を聞けば聞くほどエマ姫と会っても無理そうだ。
僕はがっくりと項垂れた。
「その子は何で王妃になりたいんだろう?スライシアの人は地位にこだわるのかな……」
琴梨さんも、うーんと一緒に考えてくれた。
「私はライアンがお嫁さんをたくさんもらうのが嫌で王子やめてもらったんだ~だから、王妃になりたいその子の気持ちがわからないなぁ」
それを聞いて僕は思った。
ティアラは僕が複数の嫁をもらってもいいんだろうか?
あんなに独占欲が強いのに?
「ティアラも嫌がるかもしれない……」
僕はティアラを説得できそうな材料を見つけて喜んだ。
でも結局、スライシアもガンダルンと同じで平民は妻が1人でも問題ないが、王族は妻が1人なのは難しい……。
母さんが楽しそうに笑って言った。
「駆け落ちしちゃえばいいんだよ!」
それを聞いた父さんが焦って叫んだ。
「いやいやいやいや!何ですぐそういうこと言うの!?」
母さんの息子であるライアン王子は琴梨さんと結婚する為に王族から籍を抜いて平民になったらしい。
そして母さんは王妃なのに父さんと駆け落ち中なのだそうだ……。
(※詳しくは同作者の『異世界で王子に一目惚れされました!』を参照。※)
僕も、ティアラが王妃になれなくても良いなら、平民になってもいいし駆け落ちでもいいと思った。
だが、ティアラは公爵家の令嬢なのだ……そして何よりも王妃になる事を望んでいる。
彼女の望みを叶えてあげたい。




