第15話 古典
(アイオン視点)
ティアラは小さいときの口癖が『私王妃になるんだから』だった。
転んでも、何かに失敗しても、何かを頑張る時も、日々その口癖を口にした。
だから、そんなに王妃になりたいのだとアイオンは思ったのだ。
たぶん、ティアラは父ルーカスと結婚して、王妃になってしまうだろう。
どうにかしないと……。
僕はそう考えながら学校の授業を受けていた。
今は古代文字の授業だ。
古語を習っているのだが……。
魔方陣は古語で描いているから、僕は授業に期待した。
魔方陣を読める様になりたい。
だが、この古代文字の授業は単語しか習わないのだ。
それもすごく簡単な意味のないものだけだ。
どうせなら複雑で意味のわからない文法を教えて欲しい。
そうすれば、『癒しの魔方陣』の複写ができるようになるかもしれない。
僕は授業の後で、古語のウィリア先生に文法が勉強できる本が見たいのだと聞いてみた。
先生はびっくりした。
隣にいたティアラも驚いた顔をする。
「文法?古語はただの文字の集まりなの。昔は文章という書き方ではなかったのね」
つまり、ウィリア先生が言うに単語の解析すらできていないらしい。
古代の魔方陣を解析する研究がいまなお進んでいて、今習ってる内容が最先端なのだ。
つまり、多少の単語が読めて描ける自分は国の最先端研究の先を行ってる事になる……。
父さんは間違いなく賢者だった。
「アイオンはすごいわ!古語が得意なのね!それにアイオンは、私やオスカーに追いつくどころか、先に進んでる学科もあるもの」
古語が苦手なティアラは僕をうっとりした顔で誉めてくれた。
こんなにティアラは僕が好きと全身で表現してくれる……。
それでも僕を選ばず、王妃になりたいのだ……。
僕は王になるしかない。
僕が王になるには……。
ダンスや礼儀作法は8才まで城でやっていたのを覚えていた。
数学や経済学、政事、治世はリッカルドのもっていた本の方が学校の教本よりも、専門的で詳しかった。
魔法は癒しまで使えるから、今すぐ神官になれる程のレベルなのだ。
だから講義を受けた端から試験をクリアした。
そして、僕はあっというまにいくつか履修して、今は学力はオスカーとそんなに変わらない。
つまり、僕が王になる為にはあとはガンダルンのエマ姫の問題だけだ。
ガンダルンは遠い……。
だけど、距離の問題は僕ならどうにかできるだろう。
『魔物の森』に戻って、リッカルド父さんにガンダルン王都まで運んでもらえばいいのだ。
セレナ母さんはガンダルン人だから、スライシアの王都に飛べるなら、多分ガンダルン王都にも跳べるはずなのだ。




