第11話 デート
アイオンが明日は学校が休みだから、街に行こうと私を誘ってくれたのだ!
初デート!
幼少の頃は城の中庭や、城の部屋ばっかりで、大概がオスカーと三人だったのよ。
明日はオスカーが居ないわ!
私はごきげんで洋服を選んだ。
私はアイオンの目の色に合わせて、水色のワンピースを着る事にした。
なのに……。
「あーっ!! なんでオスカーが居るのよ!」
さっそく入ったお店の隣のテーブルにオスカーとマリアちゃんが居たのだ。
私の剣幕にマリアちゃんがびっくりしてる。
「いやいや。なんでだろうね。」
オスカーはへらっと笑って体を後にひいた。
「まぁいいか……。ごめんねマリアちゃんは気にしないで。」
私は大人しく案内された席についた。
「マリアさん可愛い子だよね」
アイオンが言ったら。
「減るからこっち見ないで」
オスカーがひらひら手を振る。
私はくすくす笑った。
「オスカーってあんな性格だった? 私何であんなに嫌いだったんだろう?」
「ティアラひどい! 俺たちまだ婚約者なのに!」
オスカーはおどけて言った。
「オスカーは私の弟ポジなの。ぜっったい結婚したくないもの」
私とオスカーは2人で笑った。
アイオンとマリアちゃんは、すごくびっくりした顔をしてた。
そして、マリアちゃんとオスカーが頼んでいたものが運ばれて来たのだ。
「あ~っ! パンケーキ! 私も頼むわ!」
最近流行りなのだ!
アイオンは私が気になってたお店に連れてきてくれたらしい。
私は嬉しくなってオスカーは忘れる事にした。
せっかくオスカーがいない(となりにいるけど)2人だけのデートなのだ。
「ティアラはオスカーがマリアさんと一緒に居てもいいの?」
アイオンが困った顔で聞いた。
私は意味がわからない……。
確かに断罪イベントまでの私なら、この状況における正しい台詞は……『婚約者がいる男の人と、2人で出かけるなんて非常識なのよ!これだから平民は嫌なのよ!恥知らず!』とマリアちゃんに言いながら、オスカーに平手打ち食らわすくらいの事はするわよね。
そして、必ずぐちぐちと文句言ってたわよね……。
あれ?
私、もしかして完全なる悪役令嬢じゃない?
私は気がついてしまった。
アイオンが居る幸せで完全に今までの自分が飛んでるらしいことに……。
「えーっと。マリアちゃん」
私が呼ぶと、マリアちゃんは身構えた。
これは怒涛の文句が来ると思われてる……。
「今までごめんなさい。」
私が立ち上がって頭を下げた。
「「「えっ?!」」」
マリアちゃんはもちろん、オスカーもアイオンもびっくりだ。
びっくりしてるまりあちゃんの手を取ると私はいった。
「私、オスカーとは婚約解消できるように頑張るから……何か困った事があったら相談してね?」
「わかったから、大人しく座って~」
オスカーが嬉しいような困ったような複雑な顔で言う。
テーブルが六個くらいしかない狭い店内で、私は目立ってしまったことに恥ずかしくなって椅子に座った。
「オスカーも今までごめんなさい。」
私はシュンと下を向いた。
「アイオン生きてて良かったな。」
オスカーは私の頭を手のひらでぽんぽんとした。
オスカーの優しい気持ちが伝わってきて、私は不覚にも泣いてしまった。
『断罪イベント』ではあんなに罵りあったのに……許してくれるらしい。
ただひたすらに『婚約者』であることを主張するティアラと、『婚約を破棄しろ』と言い続けたオスカー。
そして、ティアラは躍起になってオスカーとマリアちゃんの邪魔をする悪役令嬢だったのだ。
アイオンがハンカチで目を押さえてくれた。
そしてなぜかオスカーは滑ったらしく軽くよろけた。
びっくりして私の涙は止まった。
オスカーを笑っていたら、ちょうどパンケーキがきた。




