赤ずきんと狼06
誕生日なのにとんだ災難を持ち込んでくれる。
けれどそれは今日に限った事ではない。
一年に五回ぐらいはこういうのがある。
決まってルミネを外に連れ出し、そのうちカイトは忘れてルミネをその場に置いていくのだ。
確実に嫌がらせ目的だろう。
何回も、何十回もクビにしてやろうかと思ったがルミネには出来なかった。
カイトは友人だ。
友達が一人もいないルミネにとって、こんな奴でもたった一人の友人なのだ。
「カイ、いい加減下ろして。目立ってる」
「それはドレスだからだろ」
「ドレスじゃなくても目立つわ」
ここは街中、担ぎ上げられている少女ににこやかに笑っている少年。
それに二人は美少年に美少女。
他人から見ればいちゃついているように見えるだろう。
ー....人々の視線が痛い。
この状況をどうしたものかと考えていたルミネは支えているカイトの手にさらに力が加わったことに気付いた。
「何?」
「来るぜ」
「え.. .. ?」
追われている(カイトが)のを完全に忘れていたルミネは目の前の建物付近でひそひそと話している五十代後半の女性がチラチラと二人を見ながら話を続けている。
なんとなく嫌な気分になっていると、
急に二人組の女性は顔色を変えて倒れた。
オオカミ.. .. ?
狼の血まみれな口元を見て女性の肉を引きちぎったのだとルミネは一匹の狼に恐怖を感じた。
「きゃああー!!!!!」
街の人の悲鳴に我に返ったルミネはカイトに下ろすように言うと、カイトは渋々ルミネをおろした。
逃げまとう人々を無視してルミネは狼を見た。
狼も吊られるようにルミネを見るが、興味がないのかそっぽを向いて、歩き出した。
ルミネはほっと胸を撫で下ろしていると、強引に肩を引き寄せられ、ふわりと甘い香りが鼻孔をくすぐる。