はじまりのセレナーデ02
「珍しい。人間が迷い込んでしまったんだね」
階段を降りる音と共に透き通る声を聞き、誰がくるのだろうと緊張で顔を強ばらせる。
「そう緊張しなくてもいいの。リラックスしてくれれば‥‥別にとって食おうなんて思わないのよ?」
顔を見せた彼女は10代の子供だった。オレンジ色をした髪の毛をポニーテールの少女。
「いらっしゃい、お客さん」
耳元で声を弾ませて囁いたのは少年だった。少女と瓜二つの顔立ちだった
「でも、残念だね。〝ここは〝君にとって優しくない。早く帰った方がいい‥‥」
「でも、ここはそう簡単には抜け出せない死の森の奥‥‥」
「じゃあこうしようか」
流石双子。とも言うべきなのだろうか‥‥息ピッタリだった。
「君を安全な場所に連れていく。でもそれには時間が必要になる。」
「それまで本を読んであげるわ。私のオススメの本なの‥‥」
少女は迷いなく本棚に近づくと1冊の分厚い本を取り出した。
「あなたも知ってるかも知れないけどルミタート時代のとある王女様のお話。」
表紙を捲り、最初のページを捲ると‥‥ふと、彼女は前を見た。
「ああ‥‥自己紹介‥‥まだだったわね。私はティアラ。それで彼はディオラ。見ての通り双子だよ。さて‥‥」
また、目線を本に向けるとその本に書いてある内容を読み上げた。
「年表‥‥かぁ。年表は歴史を刻む唯一の切り札だと思うの。だから年代には必ず年表が刻まれるのよね」
ニコッと微笑んだティアラは何を思って話したのか‥‥その顔には何かを思い出すようにさみしさと虚しさがあった。