骨とスキルと成金と
WOOは戦闘や鍛冶以外にも様々な事ができる。
料理や釣りのようにシステムアシストとして“ゲームとしてのスキル”がある行動はもちろんだが、“高度に発達した住民AIとの会話”のように、スキルや選択肢などのシステムアシストが無いものもある。
ユキメがした弟子入りも頼めば一定確率で成功などではなく、そのNPCに気に入られるかどうかが最も重要な“リアルコミュスキル”が必要な行動だ。
もともとコロナも[やりたいことが全て出来る]という所に惹かれた部分があったので、トップ集団に入ろうなどとはあまり思っておらず、今後存在することはないであろう旧作トップギルド〈みんななかよく〉打倒のために頑張っているレイルのような狩場通いなどもしていない。
なのでコロナは今日も1人草原で実験を繰り返しているのであった。
「480…」
草原に出現する“ハードラビット”を狩り続けて約1日、もしかしたらペットに出来るんじゃないか。という思いつきだけで保っていたモチベーションもそろそろなくなりそうだった。
初めは餌付けしようとしたり、自分が死ぬ直前まで無抵抗で話しかけてみたり、無理矢理抱き締めてみたりと様々なことをしていたのだが、300匹を倒したところで出現した剥ぎ取りスキルにより手に入る素材が増えた所からは新しい素材“ハードラビットの骨”を集めるのが目的になっていた。
ユキメが練習に使う分も含めて武器や防具に使えそうなくらいの数が集まりそろそろ帰ろうかと思っていたところ、向こうから2人の男が必死の形相で走ってきた。
「すまん、逃げろぉぉ! 」
トレインしていることを謝りながらもこちらに走ってくる2人の後ろにはこの草原の奥に出現する大型モンスター“メタルベア”が。
数秒考えたあと戦闘体勢をとるコロナ。
「俺に任せて逃げろ」
「やめとけ! こいつはパーティー用だぞ、あんた朝からそこにいるだろ。一日ウサギ相手にレベル上げてるようなやつじゃ無理だ! 」
「見られてたの……」
かっこよく決めたつもりがそんな返しをされるコロナ。落ち込みかけたがまだ見ぬ新素材の魅力の方が強く、メタルベアに向かって走り出す。
いくらパーティー用と言っても最初のフィールドの敵、数人のパーティーで何回か倒したこともある相手だ。コロナは十分な勝算を持って挑むのであった。
数分後、大きな悲鳴と共に倒れるメタルベア。すでに2人組は立ち去っており、近くには誰もいなかった。
「ん、新しいのが2つ? 」
通常ドロップする“メタルベアの爪”“メタルベアの牙”の他に“メタルレザー”と“メタルベアの核”というのがドロップしたのだ。
「レザーは剥ぎ取りスキルの追加アイテムだと思うんだが、核ってなんだ? 」
そろそろアイテム重量も重くなってきたので一旦王国に戻る。ウサギの骨で防具の強化をしてもらいながら思い出したように聞いてみた。
「親父、核って素材は何に使えるんだ? さっき手に入れたんだけど」
「核って言やぁ、素材の中では最高なものよ、俺も一度くらいは弄って…
なんだとっ! 手に入れた? どこで?? 」
どうにか興奮した親父を落ち着かせると核を親父に渡す。
「メタルベアの核か、確認されてる核の中では安い方だな。だが安いっていったってお前の剣が500本あっても足りんくらいだがな」
話を聞くと核を持つモンスターがドラゴンやデーモンなど伝説級の存在のものばかり。
メタルベアは核を持つモンスターの中では最弱だが、メタルベアより強くても核を持ってないモンスターもいるらしく、こちらの学者でも研究中らしい。
剥ぎ取りスキル自体は猟師などがよく保持しているらしく、この世界ではそこまで珍しくなく、剥ぎ取りスキルを持っていることは核とは関係性が薄いらしい。スキル持ちが8人で1ヶ月メタルベアを狩り続けたが出なかった記録が残っているということだ。
「じゃあそれで現状最強の剣を作ってくれ。武器にしてもそこまで価値は落ちないんだろ? 」
どんなに使い込んでも鍛冶屋で修理をすれば新品として扱われるのだからゲームの世界は便利だ。
現状プレイヤーには剥ぎ取りスキルが見つかっておらず(もしくは隠している)骨装備はそれなりの高値で売ることが出来、しかも骨単体は一般の素材として重宝するもので、北からの貿易がストップしてる今は大量に買い手が見つかり、親父にも協力してもらえば大量に売れることがわかった。
その日はユキメを駆り出してまたウサギ狩りに出かけプレイヤーの中では飛び抜けて金持ちになっておくことも忘れないコロナであった。
終盤ユキメもスキルを入手して所持金は加速度的に増えていくのであった。