神界戦争
それは遥か昔、まだ神界の民が平和に過ごしていた頃の話。
定期的に出現する魔物の大群から皆を守るために腕に自信のある者で結成された防衛軍の中でも特に優秀な二人の戦士長がいた。
鍛えぬかれた肉体で地上の魔物を一匹たりとも通さないない姿から殲滅神と呼ばれた“ダリアス”
圧倒的な魔力で空を制圧し時には山ごと魔物を消し去さり破壊神と恐れられた“エルドナ”
地上はダリアスが、空はエルドナが制圧することによって歴史上最も安全な時代がそこにはあった。
二人は同じ女性に好意を持った。彼女は一族の巫女でありまれに見る美貌の持ち主だった。しばらくはお互い倒した魔物や知識等で気を引こうとしていたのだが、ある時どちらが強いのかという議論が行われた。
どちらも自分の勝ちだという主張を譲らず、ついに負けた方が彼女から身を引くという条件で一騎討ちをすることになった。
後に天魔決戦と言われる戦闘の幕開けである。
二人の戦闘は三日間続いたがお互いに全く決定打を与えることができなかった。
このままでは無駄に時間を費やすだけだとダリアスが思い始めた頃、エルドナから一つの提案を持ちかけた。それはお互いの最高の技をぶつけ合い、次の一発で決着をつけようというものだった。
ダリアスもその提案に賛同しお互い自身の最高の技の構えに入った。エルドナは今までで一番の魔力を込めた一撃を、対するダリアスは誰にも見せたことのない魔力を込めた咆哮を。
両者の中間でぶつかったエネルギーは数秒ほど均衡を保ったあとに大爆発を起こした。
魔力の使用に長けたエルドナと違い魔力の波を防ぐすべを持たないダリアスは、鍛え上げた肉体によって消滅することは免れたもののこれ以上戦いを続けられる状態ではなかった。
お互い初めて相手を認めあい称えあった後、姫巫女のもとにエルドナは勝利の報告へ、ダリアスは別れを告げに向かった。
しかし二人が見たのは、爆発の余波で荒れ地になった神界と辛うじて堪えている民を守る結界、そして結界の維持により命を落とした姫巫女の変わり果てた姿であった。二人は嘆き悲しみながら姫巫女を弔い、巨大な墓を建ててから神界を去った。
エルドナは天界へ、ダリアスは魔界へ。
神界の民は二人に着いて行き、荒野となった神界には魔物と姫巫女の墓のみとなるところであったが、二人がせめて墓の周りには何者も近づかせないようにと3人ずつ神界の民の分体を残し守らせることにした、これが人類の始祖となった。これが二千年にわたる人界歴の始まりである。
「今こそ目覚めの刻です。神界に危機が迫っています。貴方の力で神界を救いなさい。」
《《ワールド・オブ・オリジン》》
【初ログインを認識しました。各種設定に移ります。】
機械的な声が聞こえ向井金司は我に返った。
「すげ...」
その一言しか出てこないくらい迫力のある映像だった。VRMMOをプレイするのは初だが、それ以前に金司はVRゲームすら今までやってこなかった。その事を強く後悔してもいるところであった。
【まずは名前を登録します】
「コロナ」
金司は迷いなくそう言った。ドラゴニアキングダムでの“むかきん”でも良かったのだが最後のギルド会の中でお互いゲーム上の情報を交換をせずにプレイしようという話になったのでどうせなら名前も変えようと思って考えていたのだ。
【“コロナ”認証しました。続いて各種設定に入ります。】
金司は身長や体型などを自分とそう変わらない程度に、髪の色だけ少し赤みがかった感じに変えて設定を完了した。
【設定が完了しました。それではワールド・オブ・オリジンの世界へようこそ、“コロナ”様】
目の前でいきなり強い光が発生し咄嗟に目を閉じてしまったが、目を開けた瞬間視界に広がったのは巨大な木と青空だった。






